イエスの「愛しておられた弟子」がだれなのか?その3
続きです。説1の使徒ヨハネ。これがいまのところ一般的に「愛しておられた弟子」であると言うことになっているようです。ではなぜ、はっきりとヨハネの名前をださずに「愛しておられた弟子」などという曖昧な呼び方で記載されているのか。これも諸説ありまして、ヨハネは口述したのみで実際には弟子が書いたため、謙遜してヨハネは自らの名を使わなかったと言う説、また、「(イエスが)愛しておられた弟子」はヨハネであることが明白であったため、名前をあえて出さなかったと言う説、あるいは、この福音書に書かれた内容が主流派の教義と違う点があったり、ペトロに対するヨハネの優位性に言及していたため、主流の大ペトロ教会へ配慮して、明言を避けたという説、などなど。ともあれ、ヨハネによる福音書から「愛しておられた弟子」の登場する場面を列挙いたしますね。ラザロ関係は省いています。(英訳はNew International Version、邦訳は新共同訳です)*イエスが裏切り者を予言する場面で(Jesus Predicts His Betrayal)*13章 23節 イエスのすぐ隣には、弟子たちの一人で、イエスの愛しておられた者が食事の席に着いていた。 One of them, the disciple whom Jesus loved, was reclining next to him.13章 24節 シモン・ペトロはこの弟子に、だれについて言っておられるのかと尋ねるように合図した。Simon Peter motioned to this disciple and said, "Ask him which one he means."13章 25節 その弟子が、イエスの胸もとに寄りかかったまま、「主よ、それはだれのことですか」と言うと、 Leaning back against Jesus, he asked him, "Lord, who is it?"13章 26節 イエスは、「わたしがパン切れを浸して与えるのがその人だ」と答えられた。それから、パン切れを浸して取り、イスカリオテのシモンの子ユダにお与えになった。26Jesus answered, "It is the one to whom I will give this piece of bread when I have dipped it in the dish." Then, dipping the piece of bread, he gave it to Judas Iscariot, son of Simon.*イエスが逮捕され、大祭司の元へ連行された場面で*(私注:下の18章15節では「もう一人の弟子」という呼び名ですが、この書ではシモン・ペトロと対になって扱われていることが多い人物なので、「愛された弟子」と同一人物とみなしています)18章 15節シモン・ペトロともう一人の弟子は、イエスに従った。この弟子は大祭司の知り合いだったので、イエスと一緒に大祭司の屋敷の中庭に入ったが、Simon Peter and another disciple were following Jesus. Because this disciple was known to the high priest, he went with Jesus into the high priest's courtyard,(ヨハネの実家が財力と地位のあるガラリア湖の大網元だったため、大祭司と面識があったと言う説があります)*イエスが磔にされた場面で*19章 25節 イエスの十字架のそばには、その母と母の姉妹、クロパの妻マリアとマグダラのマリアとが立っていた。 Near the cross of Jesus stood his mother, his mother's sister, Mary the wife of Clopas, and Mary Magdalene.19章 26節 イエスは、母とそのそばにいる愛する弟子とを見て、母に、「婦人よ、御覧なさい。あなたの子です」と言われた。 When Jesus saw his mother there, and the disciple whom he loved standing nearby, he said to his mother, "Dear woman, here is your son," 19章 27節 それから弟子に言われた。「見なさい。あなたの母です。」そのときから、この弟子はイエスの母を自分の家に引き取った。 and to the disciple, "Here is your mother." From that time on, this disciple took her into his home.*マグダラのマリアがイエスの墓を訪れ、遺体がないことを発見したことを伝える場面で*20章 2節 そこで、シモン・ペトロのところへ、また、イエスが愛しておられたもう一人の弟子のところへ走って行って彼らに告げた。「主が墓から取り去られました。どこに置かれているのか、わたしたちには分かりません。」So she came running to Simon Peter and the other disciple, the one Jesus loved, and said, "They have taken the Lord out of the tomb, and we don't know where they have put him!"20章 3節 そこで、ペトロとそのもう一人の弟子は、外に出て墓へ行った。 So Peter and the other disciple started for the tomb.20章 4節 二人は一緒に走ったが、もう一人の弟子の方が、ペトロより速く走って、先に墓に着いた。 Both were running, but the other disciple outran Peter and reached the tomb first.20章 5節 身をかがめて中をのぞくと、亜麻布が置いてあった。しかし、彼は中には入らなかった。 He bent over and looked in at the strips of linen lying there but did not go in.*イエスがティベリアス湖畔で弟子に姿を現した場面で*21章 7節 イエスの愛しておられたあの弟子がペトロに、「主だ」と言った。シモン・ペトロは「主だ」と聞くと、裸同然だったので、上着をまとって湖に飛び込んだ。 Then the disciple whom Jesus loved said to Peter, "It is the Lord!" As soon as Simon Peter heard him say, "It is the Lord," he wrapped his outer garment around him (for he had taken it off) and jumped into the water.*ティベリアス湖畔での食事が終わってからの場面で*21章 20節 ペトロが振り向くと、イエスの愛しておられた弟子がついて来るのが見えた。この弟子は、あの夕食のとき、イエスの胸もとに寄りかかったまま、「主よ、裏切るのはだれですか」と言った人である。 Peter turned and saw that the disciple whom Jesus loved was following them. (This was the one who had leaned back against Jesus at the supper and had said, "Lord, who is going to betray you?")21章 21節 ペトロは彼を見て、「主よ、この人はどうなるのでしょうか」と言った。 When Peter saw him, he asked, "Lord, what about him?"21章 22節 イエスは言われた。「わたしの来るときまで彼が生きていることを、わたしが望んだとしても、あなたに何の関係があるか。あなたは、わたしに従いなさい。」Jesus answered, "If I want him to remain alive until I return, what is that to you? You must follow me." 21章 23節 それで、この弟子は死なないといううわさが兄弟たちの間に広まった。しかし、イエスは、彼は死なないと言われたのではない。ただ、「わたしの来るときまで彼が生きていることを、わたしが望んだとしても、あなたに何の関係があるか」と言われたのである。Because of this, the rumor spread among the brothers that this disciple would not die. But Jesus did not say that he would not die; he only said, "If I want him to remain alive until I return, what is that to you?" 21章 24節 これらのことについて証しをし、それを書いたのは、この弟子である。わたしたちは、彼の証しが真実であることを知っている。Jesus did many other things as well. If every one of them were written down, I suppose that even the whole world would not have room for the books that would be written.(「この弟子は死なない」と言ううわさから、イエスが生き返らせたラザロが「イエスの愛しておられた弟子」ではないかという説も生まれたようです。ちなみにヨハネは長生きしたらしいです。)****いかがでしたか?以上で該当箇所はすべて(のはず)です。イエスの胸にもたれかかりながら食事をとったり、大祭司の家に出入りできたり、イエスの母を引き取ったり、墓を見るためにペトロより速く走れたり、ペトロがほぼ全裸でいる所に同席できた「イエスの愛しておられた弟子」は誰でしょうね?最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。(終わり)