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カテゴリ:進化
武漢肺炎オミクロン型が世界中に拡大している。 しかし初めて南アフリカでその存在が確認されてから、まだ日が浅い(写真=ワクチン接種する南アの子どもと発表をする南アのラマポーザ大統領)。それなのに、すでに先進国のほとんどに感染者が出ていることから、これまでのデルタ型などより感染力が強いことは明らかだ。 ◎感染者は軽症か無症状者 ウイルスがヒトの細胞に侵入する時の足がかりとなる「スパイク」という突起の蛋白質に30以上の変異があるのが分かっており(図)、オミクロン株ウイルスが感染力を強めたことは遺伝子レベルからも推定できる。 実際、その強力な感染力のゆえか、ワクチン2回接種者にも広く感染しており、これまでのワクチンが感染を抑えることは困難なようだ。 日本でもブレークスルー感染は、広く起きる可能性があるから、僕を含めてワクチン2回接種者も注意が必要だ。 その一方で、もう1つ、デルタ型などと異なる点がある。それは、報道された限りでは、重症者や死者があまりいないようなのだ。感染者のほとんどは、無症状か軽症だ。死者が出たという報道を、これまで見たことがない。一部には、毒性はあまり強くないのではないか、という医師の見方が出ている。 ◎変異で毒性を弱めた可能性 つまりオミクロン株ウイルスは、南部アフリカのどこかで在来の武漢肺炎ウイルスが変異し、感染力は強めたけれども毒性を弱めたのではないか、と推定できる。 これは、ウイルスにとって極めて好ましい変異だ。感染力が強くなれば、当該ウイルスは、広く、素早く自らの遺伝子を残していける。一方で毒性が弱まれば、感染した宿主ヒト個体を死なせず、さらにそこから自らの遺伝子を広めていける。ウイルスにとって不都合なのは、宿主を死なせてしまうことだ。その個体が死んでしまえば、ウイルスは自らの遺伝子を広められない。 ◎自然選択が働いたか ただ間違えないでいただきたいのは、その変異をウイルスが意図的にしたわけではないことだ。 RNAウイルスは、DNAウイルスと異なり、コピーミスを頻繁に起こすほど遺伝子が不安定で、修復する能力もない。つまりヒトの体内で、それこそ数億、数兆回ものコピーミスを起こし、コピーミスで変異、すなわち進化した大半のウイルスは死ぬが、中にはウイルスにとって好都合な変異をした個体が選択されることがある。 この場合、ウイルスにとって好都合な変異とは、感染力が強く(したがって次世代を広く、大量に残せる)、毒性が弱い(感染個体を殺さないので、次世代を残せる)、という進化だ。 まだ分からないが、オミクロン株ウイルスの毒性の弱いことが確認されれば、自然界でそのような自然選択が武漢肺炎ウイルスに起こったということだ。 それは、まさに宿主のヒトと平和共存する道である。 ◎ウイルス進化の過程で必ず起こること 我々ヒトの体内には、数百万年の進化の過程で、平和共存に至ったウイルスの遺伝子がたくさん見つかっている。 感染しても、宿主、すなわち我々が無症状か軽症程度なら、これまで何度も流行した普通のコロナウイルスによる風邪と変わりがないことになる。 さしもの武漢肺炎ウイルスも、流行語3年目にして、これまでの多くのウイルス性感染症のように並みの感染症になるのか。だとすれば、オミクロン株の流行は、悲報ではなく、朗報ということになる。 そうであって欲しいと願うが、それはウイルスの進化の過程で必ず起こることでもあるのだ。
昨年の今日の日記:「弾圧下で自由が窒息した香港でエクソダス広がる:スターリニスト中国支配の香港の暗い現状と将来」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202012050000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.12.05 05:28:26
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