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 思春期の君たちへ 

 思春期の君たちへ 

生きる力



『千と千尋の神隠し』

この映画の中に出てくる「坊」は、

湯婆婆に溺愛されている巨大な赤ん坊。

湯婆婆の偏執的な愛情の元で育ちますが、

外に出ることを異常に恐れているのです。

でも、千尋と出会い、初めて湯婆婆と離れ、

外界の空気を吸い、一回り成長します。


始めは「おんもには悪いバイキンしかいないんだぞ!」

「おんもに行くと病気になるからここにいるんだ!」

と言っていた坊は、わがままで怖がりで泣き虫・・・

これはおそらく、不思議な世界に迷い込む前の千尋だったのだと思いました。


かこわれ、守られ、遠ざけられて、

生きることがうすぼんやりにしか感じられない日常を生きる

現代の子どもたちの象徴、千尋。

でもいざ、抜き差しならない危機に直面した時、

本人も気づかなかった適応能力や忍耐力、

判断力や行動力を発揮する力を、自分が持っていることに気づきます。


現代人の「生きる力」を大幅に衰弱化させてしまったのは、

実は、親の過保護、過干渉、先回りの影響が大きいのかもしれません。

社会性が極めて低く、周囲が自分の思い通りにならなければ

キレてしまう現代の子どもたち・・・


銭婆(ぜにーば)の魔法で坊は「坊ネズミ」にされます。

すると、湯婆婆の母性から解放され、

「生きる力」を身につけていくのです。

魔法が解かれても「坊ネズミ」のままでいようとするくだりで、

自らの意志で生きていこうとする姿勢が身に付いてきたことを感じます。


現代の子ども達も、このようにして個人の「生きる力」が

奪われているのかもしれません。


母親に守られ、力を失った子どもは、

他人に頼らなければ困難を乗り越えられなくなってしまいます。

でも、生きていくことは、そもそも大変なことで、

自分の問題解決は、自分でやるしかないのですね。

本来子どもの中にはちゃんと「生きる力」が秘められているのだと

親は気づく必要があるのです。


自分の責任は自分でとり、自分の問題は自分で解決していくこと、

社会の厳しさを知り、それをいかに乗り越えていくかは、

親が守っているだけでは、培われることはないのです。




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