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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
客入りは7~8割くらい。
[DVDソフト] キャピタリズム マネーは踊る 映画の話 2008年9月15日、リーマン・ブラザーズの経営破綻は大規模な金融危機を引き起こし、世界経済は100年に一度と言われる同時大不況に陥った。アメリカでは住宅市場の大暴落と企業や銀行の倒産で、自宅や職を失う人々が続出。本作を撮影中だったムーア監督は、$マークのついた大袋を手にウォール街へと突入して行く。 映画の感想 ドキュメント映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」で知られるマイケル・ムーア監督の最新作だ。今回は題名の通りに“キャピタリズム”(資本主義)にムーア監督流のメスを入れる。本作は基本的に新旧の既存映像をつなぎ合わせた物に、ムーア監督が独自に集めた取材映像と共に、ムーア監督が資本主義に対して“NO”と言うパフォーマンスを軽妙に、かつ真摯に取り組んだ映像をコラージュしながら、観客に現在のアメリカが経済不況に陥った状況を判りやすく説明しながら検証するムーア監督らしい作品だ。 以下ネタばれ注意 映画は自宅を差し押さえにあった家族が撮ったホームビデオ映像で幕を開ける。正に差し押さえ執行をする瞬間を家の内部から写した映像には恐怖すら感じる。何台ものパトカーで載りつけた保安官達は強制執行の為に、鍵の掛かった玄関の扉を特殊な器具を使い壊し家に侵入してくる。長年住んだ家を奪われる家族たちの空虚な心情が画面から伝わってくる。 しかし今回の作品は既存の映像に頼りすぎている。ムーア監督もここまで有名人になり完全に面がわれてしまい、昔の様な突撃取材は不可能になってしまい、何処に飛び込もうとも門前払いとなってしまう。そこで監督は苦肉の策として既存の映像をつなぎ合わせた形になってしまったのだろう。したがって、ドキュメント作品として良く出来ているが、乗りに乗っていた頃のムーア監督作品と比べてしまうと大人しい印象が残ってしまう。 ムーア監督の外見はひげが無くなり、めっきり老けこんだ印象であるが彼独特のパフォーマンスは健在だ。ウォール街に乗り込み不正に金を儲けた保険会社や銀行に突撃して、悪さをした社長や役員を“市民逮捕”しようとしたり、装甲車で会社に乗りつけ「不正に儲けた金を返せ」と$マーク付きの大袋を差し出し迫ったり、不正を働いた会社のビルを“犯罪現場”を示す警察の黄色いテープでグルグル巻きにしたり、ムーア監督の過激なパフォーマンスは健在で楽しい。 映画はムーア監督作品最多出演者のブッシュ前大統領を散々コケにして、レーガン元大統領はあやつり人形の大根役者ぶりをあぶり出し、映画の閉めには無能大統領達と対比するようにルーズベルト大統領の理想高い演説まで取り入れて、資本主義論を纏めてしまうのは、ちょっと安易だったかもしれないが、現在進行形である世界的同時不況の口火を切った、アメリカ資本主義経済の歪んだ構図を知る上ではもってこいの作品であろう。 映画「キャピタリズム マネーは踊る」関連商品 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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