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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2010
客入りは7割くらい、客層はお子さんから年配の方まで幅広い、試写会の主催は日本テレビさんだ。
【25%OFF】[DVD] 書道ガールズ!! わたしたちの甲子園 映画の話 紙の生産高日本一を誇る愛媛県四国中央市では、不況が原因で町の商店街は閑散としていた。四国中央高校の書道部部長・里子(成海璃子)は、ある日音楽に合わせ大きな半紙に文字を書く臨時顧問・池澤(金子ノブアキ)の姿を目にする。その様子に衝撃を受けた里子たちは、町を活気付けようと「書道パフォーマンス甲子園」を開催することを思いつく。 映画の感想 予定調和的であざとい演出の連続に興醒めな作品でした。私は本作のベースとなった『書道パフォーマンス甲子園』なる書道大会は知らない、と言うことで何の思い入れの無い状態で映画を鑑賞した訳であるが、どうも本作は「観客は『書道パフォーマンス甲子園』を知っている」という前提で作られているように感じる。なので一見から見ると書道大会の細かい取り決めは割とルーズに描かれていて、物事が何の支障も無くポンポンと進んでしまうので付いてゆけない。 以下ネタばれ注意 まず、映画と言うものは監督のセンスや演出のサジ加減で映画の良し悪しが左右される訳であるが、本作の猪俣隆一監督はどのシーンの演出もサジ加減が大盛りで、映画を見ていて正直ゲンナリしてしまう。例えば、映画前半は何かにつけて「大量の墨をぶちまけて誰かが墨まみれになる」という展開で笑いを取ろうとする。そんな漫画みたいなギャグは1~2度は通用するが3~4度と繰り返されれば笑いを通り越してテンションが急激に下がってしまう。そんなルーズな書道部の部室にはデカデカと「墨を大切に」と書かれているのはギャグなのか、皮肉なのか、シャレなのか、呆れたセンスには閉口してしまう。 映画は書道部の顧問となった教師が突然始めた書道パフォーマンスに感化された生徒が、街の活性化の為に書道パフォーマンスを始めるわけだが、映画で言う第一章の締めとも取れる、一人の書道部生徒の家業である文具店閉店セールを大々的に宣伝する事を目的に、初めて書道部生徒たちが人前で書道パフォーマンスを行うのだが、そこでも大オチに例の「大量の墨をぶちまけて誰かが墨をかぶる」をやってしまう、それも今回は墨をかぶるのはパフォーマンスを見に来たお客さんである。そんな墨をかぶったお客はブツブツと文句を言いながら去ってしまう・・・。「こんな演出オカシイ!」普通だったら自分の着ていた洋服が墨だらけになったのだから「クリーニング代をよこせ!」なり「弁償しろ!」など客から抗議があってもおかしくないシーンをサラりと流してしまう監督のセンスにまったく笑えないし付いてゆけない。 大体、本作のキャラクターは主要キャストだけに血がかよい、他のキャストは書き割りの様な存在で、先の墨をかぶった客しかり、たった8名しか居ない書道部に在籍する3名の男子生徒の薄っぺらな存在は何なんだ?彼らの内面も丁寧に描けば映画として深みや面白味が出るのに、監督は3名の男子生徒は主人公たちの背景としか思っていないようだ。なんとも歯がゆい演出に映画を見ていてイライラしてしまう。 映画は書道パフォーマンスに熱意を示す女子生徒の葛藤や友情を描きながら、サイドストーリーとして、寂れてゆく商店街やロケ地となった“紙の町”四国中央市の再生が描かれる訳だが、その“紙の町”の象徴として、織本順吉演じる紙すき職人の老人の話が挿入され、老人の悲しい末路が描かれる。この話ももっと掘り下げるべきであるが監督は表面的に描き、物語のアクセント程度な扱いも不満である。後々クライマックス前に主人公と父親の書道に対する確執を解消する大事な小道具として老人の作った紙が使われるが、これもただの小道具的な演出が駄目である。 職場を失った老人がどの様にして紙をすき、主人公達の為に思いを込めた作った紙がどんな仕上がりかも描かれていない。それも主人公の行動に反対の態度を示してきた父親が老人に頭を下げて作ってもらった特製の紙である。映画はそんな父親が書道大会に出場する娘の後を追って届けてくれた紙に対して主人公が「ありがとう」と言うだけで、他の部員は父親に対して頭一つ下げない態度は何なんだ!これは劇中に何度か示される書道精神に反する行為であり、人間性も疑われる。こんなシーンを撮影して疑問を感じない作り手の無神経さには呆れるばかりであるし、こんな無礼な書道部員を応援する気にもならない。 映画はクライマックスに「書道パフォーマンス甲子園」の模様が描かれるが、これも展開が雑である。主人公達の学校以外は実在の学生たちのパフォーマンスだったらしいのでしょうがないが、主人公達のパフォーマンスに賛同して行動を起こした他学校の前フリも欲しい所だ。まぁ、主人公たちの書道パフォーマンスはサプライズの為に練習風景も無い状態で観客は本番を見せられる訳であるが、突然生徒たちが紙の上に色の付いた墨で紙に絵を書き始めた時には「???」であり、「書道パフォーマンスとはそう言う物なのか・・・」と、観客に対して書道大会ルールを無理矢理に納得させるしかない演出もどうかしているし、大体、審査員も描かれていないのもおかしい。 もう本当に頭からお尻までダメダメ演出の連続には、脱力と共に怒りさえ込上げてくる。まぁ、本作は書道パフォーマンスのファンの方や日本テレビの自己満足的な作品なのだろう。本作は同じ日陰の存在だったジャンルに光を当てた「Shall we ダンス?」の周防正行監督や、「ウォーターボーイズ」「スウィング・ガールズ」の矢口史靖監督のセンスには遠く及ばない亜流作品である。 サウンドトラックについて 本作の音楽を手がけたのは「レッドクリフ」シリーズでいい仕事をした岩代太郎だ。本作は彼にとって力が入った作品では無かったようで、所々にトーマス・ニューマンやデイヴィッド・フォスターのスコアを流用したようなフレーズが使われていて気になった。 映画「書道ガールズ!!」関連商品 書道ガールズ!!わたしたちの甲子園 オリジナル・サウンドトラック ズームイン!!から生まれた感動リアルストーリー 書道ガールズ甲子園 汗と涙の舞台裏 猪俣隆一監督作品 【20%OFF!】マリと子犬の物語 スタンダード・エディション(DVD) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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