六波羅蜜のはなし (仏教コミックス―ほとけの道を歩む)
著:ひろさちや 漫画:森村たつお
メモ助の書評
六波羅蜜とは、菩薩が修得せなばならない、6つの実践徳目です。
菩薩が、といいますと、私たち一般人には関係のない事柄のように思いますが、
これらを実践することで、私たちは真の幸福を手に入れるとされています。
六波羅蜜に関しては、過去の記事に掲載しましたので、そちらを参照してください。
(過去記事:六波羅蜜寺の開運推命おみくじ)
さて、本書は六波羅蜜をテーマに7章仕立ての漫画となっております。
1章:此岸と彼岸
2章:布施
3章:自戒
4章:忍辱
5章:精進
6章:禅定
7章:智恵
マンガですので、物語のようにすいすい読め、
なおかつ六波羅蜜の内容も少し知識として修得できる大変面白い書籍です。
この書籍の素晴らしいところは、仏教の教えの一つである「六波羅蜜」は、
菩薩や出家僧のように俗世を離れた人間だけでなく、
日常生活を営む在家の人々にも非常に有意義なものであることを伝えられている点です。
物語の主人公である「勝五郎」は、真面目に働くこともなく、
「嫁の「お定」と喧嘩ばかりしている"ろくでなし"。
ある日、いつも以上の喧嘩をお定としたとき、
勝五郎はお定に「銭ができるまで死んでも帰ってくるな」と言われてしまいます。
勝五郎とお定
その言葉に腹を立てた勝五郎は、「銭をつくればいいんだろう!」と家を飛び出しますが、
結局博打で金を全てすってしまい、一文無しに。
「もうお定の言うとおり、こんなばか者の俺は死んでしまおう」と松の木で首をくくることにします。
縄に首をかける際、勝五郎が「どうせなら極楽浄土ってところへお願いしますよ」と呟くと、
「無理じゃ!」と寺の和尚が声をかけてきました。
仏教の世界では、みずから命を絶つことを許されているのは悟りを開いたものだけ。
悟りを開いていない凡夫が自ら命を絶てば、必ずや地獄に落ちる。
そう語りかける和尚ですが、勝五郎は聞く耳を持ちません。
なら死ね!と和尚は勝五郎の首を縄をかけ、殺そうとしてしまいます。
それが苦しいのなんの。勝五郎は苦しい、苦しいと呻きます。
そんな中、和尚は勝五郎に地獄について話します。
地獄は8つに分かれている。
お前の行きそうなところは血の池地獄か、針の山か。
それとも、鬼が出てきてお前の首をはねるかな。
お前はすでに死んでいるから、いくらそれが苦しくても死ぬという逃げ場がない。
いくどもいくども、首をはねられる。
痛いぞ、苦しいぞ。それが永劫に続くんだぞ。
それでも死にたいか。
勝五郎はそれを聞き、地獄なんかに行きたくない、死にたくない、助けてくれ、と
初めて和尚に助けを請い、結局和尚によって一命を取り留めます。
悟りを開かねば地獄におちるなら、どうやって悟りを開いたらいいのか教えてくれ。
助けられた勝五郎は、和尚に尋ねます。
ここから和尚は、此岸や彼岸の話、六波羅蜜の話を、勝五郎に説いていくことになるのです。
これが話の始まりです。普通に無理なく、読めます。
六波羅蜜は、実践徳目です。つまり、知っているだけでは何もなりません。
日常生活で実践し、はじめて意味を持つ徳目です。
勝五郎は和尚の話を聞き、お定との夫婦生活の中で実践するようになるのでしょうか?
それを実践することは、お定との夫婦生活に何をもたらすのでしょうか?
私たちなら、六波羅蜜をどのように生活の中に取り入れるでしょうか?
六波羅蜜のはなし (仏教コミックス―ほとけの道を歩む)