背中を押されたら嬉しくなる。
ならば、もう、一歩だけ、でもと、
がんばってみたくなる。

負けてばっかりの弱い高校の野球チーム、アウルス、
地区大会で1勝しかできなかった生徒たちは、
監督の約束に心動かされていた。
1964年生まれ、ジム・モリス。
35才でメジャー・リーガーとなるピッチャーはまだ、
高校の教員で、野球部の監督だった。
だが、彼は生徒にヤル気を出させるために、
優勝すればプロテストに挑戦すると彼らに約束をした。

がんばれ、がんばれ。
一度は諦めた野球を捨てきれず
ジムは20年も一人練習を続けてきた。
だからこそ、急速は衰えず150Kmはゆうに超す。
生徒たちはそんな監督の球で練習し上達し、
やる気と一緒に、努力も学んでいたのだ。
監督の約束は生徒たちへのエール。
彼らは見事に優勝する、1999年の春のこと。

「さあ、監督、次はあなたの番だ！」

生徒たちに背中を押されて、プロテストを受ける。
若い選手たちに混じって、体力は負けるが、
球速では誰にも負けない肩を披露。
練習を続けた肩は年齢を超越して真価を見せる。
マイナー・リーグからの第1歩、
ピラミッド構造のアメリカ野球、メジャーは遠い。
だが彼は、二年足らずの間にそこまで登りつめていた。

デニス・クエイドが演じるジム・モリス。
一球一球が熱演である、スゴイと唸ってしまった。
1953年生まれ、若い俳優の映画に負けず、
ますます俳優としての存在感を増している。
さすがの、ディズニー映画、
子供たちの演技が可愛らしい。

背中を押してくれたのは、
生徒だけじゃない。
ユニフォーム姿の父が好きな息子と、
野球少年だった息子を知る父親と、
最初は反対しながらも、
収入のない生活をがんばり続けた奥さん。

故郷にて凱旋するジム・モリス。
がんばれ、がんばれ。
応援する街の人々、生徒たち、家族。
剛速球で完璧なリリーフ、チームに勝利をもたらす。
才能は必要かも知れない。
でも努力なしに彼の肩はあり得ない。
周囲の応援なしに、彼のデビューはあり得ない。

35才のメジャーリーガー、
誰もなしえなかった夢の物語かも知れない。
だが、ジム・モリスはずっと野球を愛し続け、
そして努力を続けてきた。
だからこその応援。
だから踏み出した最後のもう一歩が、
奇跡となったのだ、きっと。