イェルナッツ家の男の不運は、
4世のスタンリー少年の代まで続いていた。

上から落ちてきたスニーカー。
あんまりイイモノだったので履いてみた。
それで盗難事件の犯人にされる。
一流の野球選手が孤児院に寄付した価値ある逸品。
そう、盗まれたものだったから
スタンリー少年は、少年鑑別所に送られた。

不運につぐ、不運。
スタンリーの家には、3世と2世もいる。
父親は靴の悪臭を消す研究に勤しんでいるが、
上手く言ってないからビンボーである。
それでも、家族、仲がいい。

グリーン・レイクとは名ばかりの砂漠、
そこの鑑別所の方針は、穴を掘ること。
「一日中、熱い日光の下で穴を掘ればイイ子になる」
強引な理屈で、朝食の後、スコップを渡される。
ボコボコ、砂地に空く、穴、穴、穴。
少年達はヘトヘトだ。
それでも、だ、
スタンリー・イェルナッツ4世、
へこたれない、というかマイペース。
ゼロと呼ばれる小さな少年に、
文字を教えてほしいとせがまれる。
二人はいつかし、友情を育んでいた。

スタンリーとゼロの友情。
それが、イェルナッツ家の男を不運のから、
解き放つことになるとは知る由もなく。

過去と現在を何度も行き交う。
スタンリーのひ・ひ・おじいちゃん、
エリヤ・イェルナッツの恋物語から、
女強盗、キッシング・ケイトに襲われて、
財産をなくしてしまった1世、
そして、キッシング・ケイトの悲恋まで。
鑑別所の少年と大人のドタバタをはさみながら、
細切れのエピソードは、
見事に、スタンリーに行きつく。
あまりの見事さに、
拍手を送りたくなるほどに。

子供は、親から生まれる、
親もまた、その親から生まれてきたのだ。
受け継がれていく、人の歴史。
親は子に、昔ばなしを聞かせ、
その昔ばなしを子供は大人になって体験する。
大人になった子供は、大人の歴史を知る。

スタンリー少年は
大人になろうとしたいた。

児童文学を原作にしたディズニー映画。
だが、少年は主人公であって、主人公ではない。
イェルナッツに関わる過去の物語では、
大人達が恋をし、運命と戦い、死んでゆく。
残されたのはタマネギのペーストのジャムと、
イェルナッツ1世の財産。
イェルナッツの男にかけられた
マダム・ゼローニの呪い。

呪いにうち勝つスタンリーと対照的に、
少年鑑別所の所長は、過去の呪縛に身を滅ぼす。
シガニー・ウィーバーが怪演する所長は、
過去の物語の登場人物の娘だった。

知らず知らずのうちに、
人の歴史は現在を呪縛する。
それでも、現在は過去に助けられ、
呪縛を打ち消すチャンスを得るのだ。

イェルナッツ家の男の不運は消えた。

父親が研究していた靴の消臭剤も完成した。
それで、財を得るイェルナッツ家。
マイペースで暖かい家族は、
周囲への心遣いを忘れないのが嬉しい。



スタンリー少年役のシア・ラブーフくんは、
「コンスタンティン」のタクシードライバー（後の天使）でした！！