宝探しの信憑性は、歴史の中にある。
どんな財宝も、起源なくして生まれやしない。

1832年ワシントン。
馬車を操るトーマス・ゲイツ少年に、
瀕死であったチャールズ・キャロルが言い残したのは、
テンプル騎士団の財宝のキーワード。
「秘密はシャーロットが握っている」
合衆国独立宣言書に署名した最後の生存者という肩書きは、
財宝が誰の手に受け継がれてきたかを物語る。
そして、それは、
ゲイツ家の男たちの夢となる。
トレジャー・ハント、隠された宝探しの夢。

冒険家にして、歴史学者、
ベンジャミン・フランクリン・ゲイツがその職業だったのも、
いつまでも夢を忘れなかったからだろう。
ゲイツ家の夢は、2004年まで引き継がれる。
「シャーロット」の謎を解いたゲイツは、
それが、手がかりの一つに過ぎないことを知る。
合衆国独立宣言書、1ドル札、フリーメーソン・・。
アメリカ建国に関わる三つの都市を巡りながら、
やがて、彼と彼の仲間は
ゲイツ家が追い求めた財宝に行きつく。
小気味よく描かれる謎解きは、
ベン一人の力で、決して解けなかったはずだ。
コンピュータに強い相棒のライリーの雑学や、
ベンの父親、パトリック・ヘンリー・ゲイツの知識、
そして、成りゆきで同行するハメになった
アビゲイル・チェイス博士の協力あってのこと。
彼らにあるのは、宝探しの夢と歴史の探求心である。

だが、もう一人、財宝を狙う男がいた。
イアン・ハウ、彼にとって、財宝は「お金」でしかない。

ベンジャミン・ゲイツをニコラス・ケイジ。
冒険家というには、柔和に見えるが、
ラストを考えれば、頷けるキャスティングに思える。
ジョン・ボイドや、ハーヴェイ・カクテルと言った名優も、
この作品の「宝探し」の位置づけを象徴する役柄だ。
「お金」という欲を得るためでなく、
「夢」や「知識」のためのトレジャーハント。
ベンたちは、財宝を見つけ、夢を実現する。
欲で財宝を欲し、財宝を得れば、
死が関わってくるのが宝探しの映画。
人の欲望が強調される題材を、人の前向きな力に変えたのは、
ジョン・タートルループ監督ならでは、かも知れない。

宝探しの起源は、歴史の中に。
歴史に刻まれているのは、まぎれもなく「人」の歴史。
欲望が刻まれるよりも、
夢や探求心が刻まれるほうがずっといい。

テンプル騎士団の財宝を見つけたのは、
ベンジャミン・フランクリン・ゲイツだけではない。
ゲイツ家とその仲間たちが見つけたのだ。
つまり財宝は、誰のものでもないのである。