●●●2300年未来への旅
数多くの観衆が見守る中、30歳の誕生日を迎えた者たちが聖地へ旅立つ。人口調整のために跡形もなく消滅させられるのだ。2274年、度重なる戦争などによる大気汚染で人々はコンピューターに管理されたドームの中で暮らしていた。手のひらに埋め込まれたクリスタルが赤と黒に点滅したら30歳になる10日前。表向きはうまく稼働しているシステムも数多くの逃亡者を出していた。サンドマンと呼ばれる警察官、ローガンは潜入捜査で逃亡者を捕らえるためにクリスタルに細工が施される。26歳のローガンが再生の儀式に招かれる立場に立たされていた。ドームの中の生活は快楽に溢れている。若さを精一杯行かせる施設が盛りだくさん。副作用や幻覚症状に悩まずに恍惚状態になり、姿カタチが気に入らなければ取り替えが可能。好みの相手を見つけたら即座に出会える電磁波システム。家族制度もないから「勉強せい」とも言われない。なにをやるにも無料である。白黄緑青赤手のひらに埋め込まれたクリスタル。赤と黒が点滅するまでは。ドームの外がどうなっているかなど誰も知らなかった。1976年とは思えないチープな世界観。ファッションも装置もデザインも古さを通り越して別の世界へ行ってしまった。女優さんたちのセクシーさも愉しい。ローガンが外の世界を知り、汚染はなくなっていて老人の生きる世界にふれ、ドームを壊そうするのはお決まりのコース。正義を貫くような展開よりもこの世界観に頭がクラクラする。この映画、リメイクが決まっている。ブライアン・シンガー監督である。若さと快楽だけの人生。老いてゆく度に生まれる感情を知らぬまま再生を信じて死んでゆけた人たち。ただ無知ではあったけれど。無知のまま死ぬことは不幸なのか。ならば何歳まで生きていればいいのか、どんな人生ならばいいのか。しかし予定の寿命を削られたローガンはピーター・ユスチノフが演じる老人に希望を見る。それは先のわからぬ希望だが、人生の終わりではないことを示している。30歳の誕生日に死んでゆく人々の姿は衝撃的。原題Logan's Runとは随分違う邦題だが、近未来の地球の姿だと捉えればかの名作のパクリだが許せる。青や赤のクリスタルの年齢であればローガンとともに死を間近に感じさせる仕掛けである。2300年の人間の寿命が今と変わらないとは限らないのである。