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カテゴリ:判例、事件
数日前の話になりますが、グリーンピースという団体の人が、調査捕鯨の船員が「お土産」として持ち帰った鯨肉を、搬送中の運送会社から盗んで、窃盗罪で逮捕されました。
ここはいちおう弁護士のブログなので、捕鯨の是非とか、「お土産」として持ち帰ることの是非は触れません。 グリーンピースの人たちは、「調査捕鯨員が鯨肉を持ち帰ったのは横領罪にあたり、それを警察に告発する証拠として鯨肉を持ち出したのだから、窃盗に当たらない」と言った。 この点を法的に検討します。 一見して無茶な暴論のように思えますが、グリーンピースの弁護士というのがいて、それなりに法律家らしいことを言っています。 「告発を目的としたものなので、『不法領得の意思』はない」と。 窃盗罪が成立するためには、「不法領得の意思」(ふほうりょうとくのいし)が必要です。 つまり、単に他人のモノを奪うだけではダメで、その奪ってきたモノを、「自分のものとし、かつ、利用法にしたがって利用するつもり」である必要がある。 (正確にいうと「不法領得の意思」とは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞い、その経済的用法に従い利用又は処分する意思」と定義されます) ただこの「意思」を限定的に見ると、窃盗罪が成立する範囲は極めて狭くなります。 たとえば女性の下着を盗んだ下着泥棒が開き直って、 「俺はこの下着の利用法にしたがって自分で履くつもりだったんじゃない、見て楽しむつもりだったんだ」と言えば窃盗罪にならないかといえば、そんなことはない。 観賞して楽しむという性的快楽を得るつもりであれば、それは不法領得の意思があると言っていい。 このように、そのモノ自体から何らかの効用を得るつもりであれば、窃盗罪は成立する。 グリーンピースの人は、奪った鯨肉をその利用法にしたがってハリハリ鍋にでもして食べるという意思はなかったでしょうけど、捕鯨反対運動の一環としての告発の物的証拠として利用するつもりだったでしょう。 これは鯨肉を自分たちの求める効用のために利用する意思、つまり不法領得の意思があったとみていい。 細かい話になりましたが、この事件で恐ろしいと感じたのは、警察でも検察でもない私的な団体が、犯罪だから告発するなどと言って他人の建物に入り込んでモノを取っていったということです。 そんなことが許されるとなれば、極めて恐ろしい世の中になると思います。 そんなグリーンピースとは果たしてどういう団体だろうと思って検索してみたら、グーグルの「関連検索」でトップに出てきたのは「グリーンピース ご飯」だったということをどうでもいいですが付け加えておきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/06/27 08:44:30 AM
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