御茶ノ水駅から三省堂へ下る道は、今も昔も学生のにおいに満ちている。ここにインド風カリーの店「
エチオピア」が産声を上げてはや四半世紀。今もコンスタントに若い男性が入っている人気店だ。昔から女性より、若い男性が多かった。今もそうだ。若者が多いのは、学生街だから当然といえば当然だが、女性より男性が多いというのはエチオピアの特徴のような気がする。エチオピアのカリーを支配しているクローブの芳香は、ある種の男性の嗜好には文字通りクギ(Clou)のように刺さるのかも。
もっともこの強烈なスパイスの香りには、女性だって酔いしれることは間違いない。口当たりはあくまでさらっとしており、とろりとした日本の「欧風」カレーとは、まったく別物の料理だ。エチオピアでは辛さが70倍まで指定できる。Mizumizuは5倍にしてみたが、ちょっとキツかった。横に座った「若干若いとはいいにくくなってきた」年頃の男性は、ライス大盛りの券を買い(ここは食券スタイル)、「辛さ20倍」と威勢よく言ったものの、いざカリーを食べ始めると水をガブ飲み。結局3分の1近く残してギブアップしていた。このような羽目にならないよう、くれぐれも辛さ指定は慎重に。カリーにはなぜかバターつきのジャガイモがつく。カリーができあがるまで、丸のジャガイモをくずして口に運びながら、本当の意味で「スパイシー」なカリーへの期待感を高めるワケだ。
このあたりを歩くと、大学生に戻ったような気分になる。今はリバティタワーというりっぱなビルが聳えている明治大学の敷地は、昔はキャンパスの入り口で緑の植え込みなどがあった。昭和天皇崩御の直前、その前の道を歩いていてふと目をやると、白い看板に大きなキタナイ赤い字で、天皇を罵倒する文言が書きなぐって並べてあったのをふいに思い出した。あれを書いた青年(だろう、当時は)は、今頃どんなオジサンになっているのだろうか。