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2008.02.04
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カテゴリ:Movie
<きのうから続く>

さて、ジャックとイニスに話を戻すと、ジャックの表情ががらりと変わるのは、アルマと離婚したという知らせを聞き、これでイニスとやっと一緒に暮らせると勘違いしたジャックが喜び勇んでワイオミングまでやって来て、「今週は娘と過ごすから」とイニスに追い返されてしまう場面からだ。

トラックに乗ってイニスに会いにやってくるジャックは、運転席で1人能天気にはしゃいでいる。口笛を吹き、鼻歌を歌い、ラジオに合わせてハンドルを叩く。心なしか頬がうっすら紅潮してみえるのは、メイクのせいかもしれない。ところが、アルマと離婚しても、やはり周囲の目を気にしてジャックを寄せつけないイニスを見て、ジャックは長年いだいてきた「2人で一緒に暮らす」という夢がかなわないことを知る。イニスのもとを去るジャックは、今度は一転して、運転席で涙を流す。会いにくるときの有頂天なジャックの姿を見てしまっている観衆には、このときのジャックの絶望が真に胸に迫ってくる。ワイオミングからテキサスに戻ったジャックは、そのまま南下し、メキシコへ「なぐさめを求めに」行ってしまう。

この運転席での涙のシーンは、ジャックの青春の終わりを示すものだ。これ以降、ジャックが夢を語ることはなくなる。口ひげをはやし、声の調子も低くなる。かつて、「こんなふうにいつも一緒に暮らせる方法がある」とイニスに話しかけた、甘い高い声は消え、周囲に対する配慮と遠慮もなくなり、かわりに何かにつけて眉間に皺をよせ、すぐに感情的になって怒り出す。このあとジャックが死ぬまでにイニスと会うエピソードは2回しかないが、どちらも最後は喧嘩になっている。まず、メキシコのあとに出てくる逢瀬のエピソード。ここでは、ジャックとイニスの生活の違いが浮き彫りになる。妻のビジネスの話をするジャックに、「上流階級のお遊びだろ」とイニスは言う。イニスが気にしているのは、相も変わらず、周囲にばれているのではないかということだ。それを聞いたジャックは、「テキサスへ引っ越したらどうだ」と言う。勘づいているかもしれない近隣の人間から離れて、自分のそばへ来てほしいということだ。ところが、イニスは、「娘を養子にもらってくれるのか。そしたら2人で住んで、ラリーンの父親から金をもらって2人で羊番をやろうってことか。頭がいいな」などと憎まれ口をきいて、ジャックを怒らせてしまう。これでジャックは、「自分のそばに来てほしい」という、それだけでも以前より後退した夢まで諦めざるをえなくなる。

そうして2人が気まずく別れたあと、イニスにはキャッシー、ジャックには牧場主任のランドールが現れる。最後の逢瀬では、ジャックはイニスに、「再婚相手はいないのか」と聞いている。静かな友人同士の会話のようだが、ここにはジャックの諦念がある。それでも諦めきれない気持ちが、「だけど、ときどきどうしてもお前が恋しくて、耐えられなくなる」という呟きになる。そして、翌日別れの朝の2人の諍い。ここで、怒りを爆発させるジャックの台詞は、実はかなり文学的に凝っており、むずかしい。映画では字幕も吹きかえも、原文から離れて日本風にわかりやすい訳にしていた。それは、ここが韻を踏んだような独特のリズムがある凝った「語り」で、そのまま訳すとしゃべり言葉としては不自然になるということと、ジェイクがここでものすごいスピードでこの難しい台詞をしゃべるので、忠実に訳していては字幕と吹きかえの時間が足りなくなるためだ。

一番違っている部分(つまり、英語が一番ブンガク的に凝った部分)を忠実に訳すと、次のようになる。「20年近くの間に何度一緒にいることができたのか、数えてみろよ。お前が俺につけた短い手綱の長さはどれくらいか、はかってみろよ。メキシコのことを聞くのはそれからにしてくれ。俺がほとんどまったく得られなかった何かを必要としたからといって、俺のことを殺すというなら、それからにしてくれ」。

こうした文学的な台詞をジェイクは迫力あふれる怒声でよどみなくこなす。本当に惚れ惚れと聞き入ってしまう。変なたとえだが、山田洋二監督が、「僕は渥美〈清の寅〉さんの口上をほとんどうっとり聞いてるだけ」と言った、あの感覚に近いかもしれない。ジェイクは、何かに憑かれたように台詞を弾丸のようにしゃべるときも卓越した才能を見せる。

たとえば、「ジャーヘッド」で仲間に銃を突きつけて、あわや本当に撃ってしまうのではないかと思わせる部分。この場面で、仲間を責めるために、わけのわからない質問を早口であびせるジェイクの常軌を逸した台詞と迫力は、「この人、マジでおかしくなってない?」と思わせるぐらい真に迫っている。ジャーヘッドは、ジェイクの「語る力」が最大限発揮された作品だった。端的に言えば、ダイアローグ(会話)だけでない、モノローグ(ナレーション)の魅力だ。モノローグ(ナレーション)の内容は、主に戦地に送られた普通の若い青年の生理的なことだが、その中に、次第に「本当に人を撃って、血が飛び散るのを見てみたい」という狂気が忍び込んでくるようになる。この部分がジェイクの語りの聞かせどころ。「マスタベーション」への欲求と同じようなトーンで、「人を撃つこと」への関心の高まりをジェイクは低めの声で淡々と語る。戦地という異常な状況の中で、平凡な人間に隠された狂気が次第に肥大していくのだ。それが見る者を震撼とさせる。

そして、ジェーヘッドでのジェイクの演技の「視覚的クライマックス」は、イラク兵を狙い撃ちしようとするところだ。ここで相手に狙いを定めるジェイクの瞳がアップになる。目だけしか映らないのだが、まつげの奥のブルーの瞳が、本当に冷酷に、「人を殺したい」と言っているように見える。

<明日に続く>





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最終更新日  2008.02.06 01:54:43



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