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ジャック・ドゥミー監督の『ロバと王女』(1970年)。これは『美女と野獣』を見ていないとオモシロさがわからない。ペローの童話「ロバの皮」を原作にしたこのステキな作品は、『美女と野獣』、そしてジャン・マレー主演の過去の名作へのオマージュなのだ。『美女と野獣』と同じく大人の観賞に耐えるファンタジーコメディであり、かつ主演のカトリーヌ・ドヌーブが最高に美しい時期に撮られているということも重要なポイント。
『美女と野獣』のベル風の冠を髪に立てているのが若き日のドヌーブ。召使の顔が青く塗られているのは、彼女が青の王国の王女だから(?)。 ドヌーブの父、国王を演じるのは50代も後半に入ったジャン・マレー。部屋の調度品は『美女と野獣』風に目の動く生きた彫像などがさりげなくおいてある。 玉座は野獣カワイイ系?? なぜか 最後の出演作品となったベルナルド・ベルトルッチの『魅せられて』(1996年)でも、レストランで若い兵士に「一緒に帰りませんか?」と誘われて、喜んで一緒に出て行き、同席していた別の青年が意味深に笑っている場面がある。このときのマレー、御年81歳。 さて、マレーといえば、「小さな人々」との共演も忘れられない。『悲恋(永劫回帰)』でのアシールだけなく、『ルイ・ブラス』でも小人症の役者との印象的な場面がある。なので、当然…… 『ロバと王女』の小さな人々は、大変に幸せそうにちょこまかと働いている! 国王は最愛の王妃を亡くして悲しみのどん底。亡き王妃の面影を映す王女を見るのが辛くなる。だからって…… こんな素直な言い方はヒドイんじゃないですか?。(ま、ジャン・マレーだし)。 ところが傷心の日々を送るうち、国王は家臣から「王女は亡き王妃以上に美しくなられました」という一言を聞く。亡き妃から「再婚するなら私より美しい女性にしてください」と言われていた国王は、「では、余の再婚相手は娘か?」と思い至る。(へ、変な展開……)。 国王は国一番の賢者の意見を聞きに。なぜかそのために螺旋階段をのぼっていく。 明らかにこれは『悲恋(永劫回帰)』の一場面(4/12のエントリー参照)。 賢者に意見を求めると、「私なら娘と結婚します」といい加減な結論(笑)。そこで国王は、「王女と結婚するぞ」と宣言する。運命に導かれる深刻なギリシア悲劇を得意とした役者が、大真面目にズレまくった宣言をするのが、本当におかしい。 娘にプロポーズし、詩を読んで聞かせるロマンチックな国王。でも、その詩って…… え? オルフェ? コクトーの詩だ! 国王いわく「リラの精の贈り物だ」。うそ~、コクトーの詩だよぉ。ピカソに捧げた詩の一説でしょ。 リラの精は細身のブロンド美人。『去年マリエンバートで』主演のデルフィーヌ・セイリグ。彼女、どうやら国王との間に「過去」があるようで…… ……だから、国王につらく当たるのだそうな。王女に向かって父との結婚なんてとんでもないと諭し、(以下のセクシーな語り歌をお聞きください。最後にチラッと見えるセイリグの脚の美しさには思わず目が釘付け??) http://jp.youtube.com/watch?v=nfdDn1qdSb8&feature=related 国王を困らせる難題を次々考えて、王女に入れ知恵する。それでも国王の決意が変わらないとみるや、「魔法の箱」(実はマレー主演の『ルイ・ブラス』で出てきた小道具)を王女に与え、城から逃げ出す手配を整えてあげる。 つまり、このリラの精は王女を ロバの皮をかぶって変装し、城から逃げた王女はある村へ…… あ、スローモーションだ! ベル(美女)が走っている! ドアが自動で開くのは『美女と野獣』と同じ。 このあともコクトー得意のフィルム逆回しがやたら多用されたりして、完全に懐かしきコクトー・ワールド。 そのころ国王はいなくなった王女を心配している。この鏡も『美女と野獣』。 そして、王女は赤の国の王子様に出会う。王子役は若き日のジャック・ペラン。もっと渋くなってから、『ニューシネマパラダイス』のサルバトーレ役を演じた。 バラをつもうとする王子。『美女と野獣』でバラをつむのは、ベルの父親だった。 王女のいる小屋へ近づこうとして見えない壁に阻まれる王子。これは『オルフェ』から。 あれっ、今度は『美女と野獣』のアヴナンになってる。 王子の夢枕に立つ王女。これは『オルフェ』でマリア・カザレス演じる死神の行為。 最後には王女と王子は結ばれてハッピーエンド。じゃ、国王はどうなったかというと…… なぜかファントマ(マレー主演の娯楽映画)風にヘリで結婚式に現れる。ロケ地は『美女と野獣』のロケもやったロワール川沿い。しかも、今回は豪華にシャンボール城! なんと、ちゃっかり国王はリラの精と結婚していた! 人間と妖精の禁断の恋!? とはいえ、確かにリラの精も超美人。ちらちら見える脚は悩殺的セクシーさ。これなら亡き王妃も許してくれるでしょう(?)。おまけにリラの精はコクトーだし(やるなぁ、ジャック・ドゥミー監督!)。 この成り行きになぜか、王女もまったく驚いていない(苦笑)。国王もなにごともなかったかのように「娘よ、また一緒に暮らそう」とにこやかに挨拶。 幸せそうな国王とリラの精。リラの精のポーズは微妙に『去年マリエンバートで』風。ここで皆が白い衣装を着てるのは、青の国+赤の国=白…… つまりはフランス国旗ってワケ。 この飛び切り楽しいオマージュ作品には、『美女と野獣』で駆け出しのメイクアップアーチストとしてメイク助手を務めたアレクサンドル・マルキュスがメイクの大御所として参加している。マルキュスは『ルイ・ブラス』でもマレーのメイクを担当した。 [DVDソフト] ロバと王女 デジタルニューマスター版 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.05.20 15:46:35
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