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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.05.28
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株式市場は、ギリシャ危機の余波を吸収しきっていない。日経平均も、ついに1万円を割った。

ギリシャ問題への欧州各国の対応を見るにつけて、この問題は長引きそうに思える。直ぐに次の問題が起きるかどうかは分からないが、今後何年かかかる問題のような感じがしてきた。

ここまでの段階では、欧州各国の国家財政が問題であるように見えているが、ドイツが独自に発表した空売り規制の対象に、同国の銀行株が入っていたことを見るにつけ、真の問題は、不良債権を抱えた欧州の銀行のバランスシートに対する信認問題だろう。

次に表に出る問題が、ポルトガル等ギリシャに次ぐ欧州国家のソブリン問題なのか、欧州のどこかの大銀行の経営問題なのかは、今の段階では分からないが、問題の根源には、不動産ブームとその後の崩壊で抱えた不良債権と東欧向けの不良債権を抱えた欧州の銀行のバランス・シート問題がある。銀行は、それぞれの国の単位で支えるしかないが、国によって政府の余力も世論も違う。

個々の問題は細かく見る必要があるとしても、欧州の大まかな状況は、バブル崩壊後の日本に喩えると、90年代の半ばだろう。住専への公的資金投入に手間取った日本だったが、その後に、真の問題として銀行の不良債権問題が登場した。欧州もこのパターンではないだろうか。

バランスシートの傷みを隠している銀行はリスクを取って融資を拡大できないし、不良債権の真の姿が発覚することを恐れる。また、同類の銀行に対して「傷み」の類推ができるので、他行との間の資金のパイプも詰まり気味になる。欧州版、失われた10年の始まりだ。

緊急時の流動性の問題に対しては欧州中央銀行が対応できるが、個々の銀行の不良債権を表に出して十分な引き当てを行った上で資本を増強する「支援」は、国家単位でやるしかない。すると、今回のように、「ギリシャのために、ドイツ人の税金は使えない」といった国単位の感情的な問題が持ち上がるリスクがある。バブル崩壊後の日本の政府・中央銀行の対策もスムーズでなかったが、国境を越えて錯綜する欧州の事情は複雑なので、欧州版の「長期停滞」に陥る危険性が大いにある。

この場合、ポイントは二つ考えられる。

まず、欧州の金融問題の構図がかつての日本と似通っていることを思うと、問題が峠を越えるには、銀行のバランスシートの実態を明るみに出すことと、同時に資本の手当てを行うことが重要だ。これが先に伸びるほど、停滞は長引く。日本では、いわゆる「竹中プラン」の下、何度も銀行に金融庁の検査が入り、その度毎に不良債権が膨らんでいった。その間、不良債権の処理が小出しであったために(そう「せざるを得なかった」のかどうかは、見解が分かれる)、銀行への信頼が戻らず、金融の回復に時間がかかった。欧州の、銀行がバランスシートの膿出しを早く終えるなら回復は早いだろうが、必ずしもそういう訳ではなさそうだ。

もう一つの問題は、世界の中央銀行の金融緩和のつづき具合だろう。今のところ、米国の金融緩和の「出口」は来年の半ばくらいかという予想が多いようだが、どうなるか。もちろん、欧州中銀も、そして早期引き締めに定評のある日銀の動きにも要注目だ。インフレに対して「予防的引き締め」をという議論が出てくるようだと危ない。たとえば、今後少し景気が回復してきた場合に、ドイツがインフレの懸念に我慢できなくなったときに欧州中銀が利上げに動くと、耐えきれない(自国の銀行を支えきれない)国が出てくる可能性がある。こうして考えると、危ないポイントが今後数年の間に幾つもある。

今のところ、かつての日本の不良債権問題にあまり関係なく米国や欧州が成長できたような展開になることが日本にとっての希望だ。この場合、米国の金融緩和の継続と、中国経済が成長を維持することが必要条件になる。いずれにしても、海外の経済次第ということになる。しかし、心配を抱えながらも、こうなるのではないか、というのが筆者が考えるメイン・シナリオだ。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第75号 2010年5月28日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2010.05.28 18:34:58



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