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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.06.25
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カテゴリ:カテゴリ未分類

音楽は、かつてはLPレコードで、次にはCDで、最近はMP3などの電子データで楽しむものに変化した。25年くらいの間に起こった変化だ。もちろん、アナログの音の豊かさを愛してLPレコードを聴き続ける音楽ファンもいるが、多くのファンがLPレコードのコレクションを始末して、CDに切り替えた経験を持っていると思う。そして、近年は、ショップでCDを買うのではなく、音楽をダウンロードで買うことが普及してきた。

この間、最も大きな影響を受けたのは、オーディオメーカーとレコード・CDなどを売っていた小売店だろう。マニア向けは残ったとしても「ステレオ」や「コンポ」は売れなくなったし、CDを売る店はどんどん少なくなっている。

楽曲の提供側にもビジネス的な変化があった。近年、日本では、CDのミリオンセラーが出にくくなり、ヒット曲が小粒化した。音楽のダウンロード購入が一般化することで、店頭に大量に並ぶCDでなくともファンの元に楽曲が届くようになったので、ヒット曲が分散した。少数の曲を大量に売るというスタイルが緩和されたこともあって、TVの歌番組がかつてよりも減った。

アーティストの側は、多様な楽曲がファンに届きやすくなり、こまめにファンを集めるコンサートで稼ぐ方向にシフトしているようだ。もちろん、国民的な人気と巨大なセールスを有するアーティストもいるが、中規模くらいの売れ方でも「食べて行きやすく」なったようだ。

最近よく話題になるのは、出版の変化だ。アップルのiPadやアマゾンのキンドルなどの書籍リーダーの登場と書籍の電子化でどんな変化が起こるか注目されている。出版関係者の一部では、紙の本が廃れると共に、出版社の経営が傾いてしまうのではないかという悲観論もある。

確かに、デジタル化された本は便利だ。何百冊分ものデータをハードディスクやUSBメモリで持ち歩けるし、いわゆるクラウドにファイルを置けば、パソコンでもiPadでも読める。

紙の蔵書をスキャンしてデジタル化することを「自炊」と称するようだが、断裁機(PLUSのPK-513)、スキャナー(富士通ScanSnapS1500)共に標準的な機械があり、これらで簡単にPDF化できる。筆者も、これらの機械とiPadを手に入れて「自炊」をやってみたが、簡単だった。新書一冊が1、2分でPDF化でき、8MBくらいのデータサイズだ。音楽CDをデジタル化するのと待ち時間は似たようなものだ。iPadで新刊を一冊読んでみたが、快適に読めた。

書籍にあって紙が不要になると、紙代や印刷代が要らなくなるほかに、輸送や保管のコストも節約できる。出版社としては、本の過剰在庫を持つ心配がなくなるから、本を安く、たくさん作ることができるだろう。ただし、印刷設備を持つ必要もないし、ダウンロードで配本ができるなら、出版社でなくとも本を作ることができるようになる。編集プロダクションと出版社とで、何ら差がなくなるかも知れない。

電子化された書籍の価格がどのレベルに形成されるかが興味深いところだが、本が安くなる一方で、著者の取り分は増えるだろう(注;現在、紙の本では定価の10%程度が印税として著者に支払われるのが普通だ)。本を書く側にとっては楽しみな面もあるが、本を出しやすくなるということは著者間の競争が激化するということでもある。著者にとって良いことばかりかどうかは、まだ分からない。

電子ブックの普及スピードがどのくらいのものになるかも、未だ分からない。音楽は最終的に音を聞くという点で、レコード、CD、デジタルデータの差が小さかったが、本の場合、デバイスが進化してきたとはいえ、紙の本とは感触に差があるから、音楽ほど早く交替は進まないかも知れない。紙の本とデジタルデータの本はかなり長い間共存するのではないだろうか。

いずれにしても、技術が変わると、ビジネスが変わる。投資にあって重要なことは、利益がどこに集まることになるのかが変わる点だ。利益の行き先を読む際に大事なのは、どのプロセスで競争が激しくなって利益が圧縮されるか、どのプロセスの供給が不足して供給者が利益を得るかの二点だが、投資家には楽しみの多い時代だ。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第77号 2010年6月25日発行より) ==========================================================
 






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最終更新日  2010.06.25 19:23:10



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