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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.08.27
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ここしばらく1ドル85円台に踏みとどまっているが、円高が話題になっている。外貨建て資産に投資している投資家は円高で直接損を被っているし、日本株を買っている投資家も、円高が日本の株価の足を引っ張っていることはご存知の通りだ。景気全般も、海外経済の懸念と円高によって急ブレーキがかかりつつある印象だ。

そこで、日本政府は円高を是正するために、為替市場に介入を行うべきではないかという意見がしばしば話題になる。たとえば、『日本経済新聞』(8月21日、朝刊)は社説の文中で、「過剰な円高に対して、為替介入を辞さない姿勢を見せてほしい」と書いている。微妙なニュアンスの文章だ。

今後、為替介入があるのかどうかは分からないが、為替の世界を理解するためには、「介入」について知っておきたい。さし当たり、三つのポイントをご説明しておこう。

介入とは、政府が市場参加者として外国為替市場に参加して、為替レートに影響を与えようとする行為だ。日本の場合、財務省が意思決定の権限を持っている。

第一のポイントとして、介入は効果がある場合も、無い場合もあることを覚えて置いて欲しい。

いささか乱暴だが、印象に残る相場格言をご紹介すると「初介入には、逆らえ」。これは、介入が行われるということは、政府自身が為替市場に一定方向の(その時に政府が望まない方向の)勢いがあると認識しているということだ。従って、第一回目の介入水準は後に破られる場合が多い。介入があると、市場参加者が驚いていったんポジションを手仕舞うことがあり、こうした場合は、介入に逆らうポジションを作るのに絶好のレートが現れることがある。

もちろん、この格言は、絶対にこうなるというものではなくて、相場に参加する上での一つのヒントを提供するものに過ぎない。今後いずれかの時点で本当に介入があって、読者がそれに逆らってみた場合に必ず儲かると主張する(まして「保証する」)ものではない。介入の効果が絶対ではない場合があることを思い出し、勝機がないかと検討してみることは無駄ではない。

第二に、介入にあたっては、外国、特に米国の意向が重要だ。

日本円の場合、過去の経緯から、介入を米国が容認するか、外国政府との協調介入でなければ、十分な効果は期待できないというイメージがかなりの程度できあがっている。

2000年代の前半の為替介入は、米国経済が好調だったこともあり、日本がデフレ脱却のために行う金融緩和の手段として「ゼロ金利+量的緩和+為替介入(ドル買い・円売り)」というメニューを米国が黙認してくれたことが重要だった。

今回はどうだろうか。

米国、欧州は共に自国の経済について不安要因を抱えており、マクロ的には自国の通貨(ユーロと米ドル)が安い方が目下、好都合だ。加えて、貿易ウェイトと物価変動の影響を調整した「実質実効レート」(日銀のホームページで見ることができる)を見ると、現在の円相場は、せいぜい2005年並の円高であり、1995年や1999年の円高よりも「実質的には」かなり円安である。1ドル85円程度の状況は、日本が国際的に同情を買うことができるほど円高なのか、という点では疑問がある。

現在、為替相場をあからさまに「誘導」している主要国は中国だけだ。米・欧は、現状を「容認」している。日本政府が為替レートのレベルを力ずくで変えようとすることは、かなり難しい。

第三に、為替介入は、介入の結果起こる自国通貨の通貨供給量の変化を放置するのか、中央銀行の市場操作で相殺するのかによって、印象と効果が変わる。自国通貨の売り介入の場合、その結果市中に出回る自国通貨を吸収してしまうと、介入でもたらされた金融緩和効果を減殺することになるので、「自国通貨の価値を本気で落とそうとはしていない」とみなされることになる。

そういう意味では、自国の金融緩和を徹底させて、通貨の価値を落とす意志をはっきり示すと、為替レートも自国通貨安に向かう公算が大きい。1ドル=85円で、そのレベルが実質的にはそれほどの円高ではないという解釈が出来るのは、日本の物価が長年下落し続けて(つまり日本の通貨の価値が上昇し続けて)、これまでデフレではなかった外国の物価の動きと異なっていたことの結果でもある。

今回の円高の場合、デフレ対策に十分力が入って、デフレ脱却が期待されるのと共に円レートが円安に向かう展開になれば、日本の景気と株価には理想的だ。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第81号 2010年8月27日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.08.27 12:02:09



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