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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.09.24
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カテゴリ:カテゴリ未分類

9月15日、日本政府は円の対ドル為替レートが15年ぶりの高値を更新して82円台に入ったところで為替市場に介入した。その後3日間、為替レートは84円~85円で推移している。

予測の難しい為替レートのことなので、今後どうなるかは予断を許さないが、今回の為替介入は、そのタイミングや方法がなかなか巧みであった。

為替介入を行ったタイミングだが、前日の民主党代表選での菅直人代表再選の結果を受けて円買いが出て、82円台に入ったところであった。

代表選の二人の候補の政策を較べると、小沢一郎元幹事長の方が菅直人首相よりも円高対策については積極的だと見られていた。菅首相の就任以来これまで為替市場に介入していなかったので、菅氏は円高対策に消極的だとの印象を持たれていた。そこで、菅氏の再選を受けて円買いが進んだのが介入前の状況だった。

日本政府の円売り介入にあたっては、現在、自国通貨安を望んでいる欧米諸国から、「為替市場に介入するのは良くない」という批判を浴びると、却って逆効果になるのではないかと思われていて、82、3円のこのレベルでは、まだ介入には至らないのではないかと観測する向きが少なくなかった。

ところが、こうした見方に反して、日本政府による介入が行われた。なお、介入は、財務省の指示の下に、日本銀行が行うので、直接的に市場に関わるのは日銀だが、意思決定は財務省だから、政府の意思で行われるものだ。

このタイミングは、二つの意味で効果的だった。

なんといっても、介入がないだろうとの観測が有力な中、円レートの高値更新に伴って、短期的な円買い・ドル売りのポジションがたまったところで行われたので、円買いで市場に参加した短期の参加者の損切りによるドルの買い戻しを誘発できるタイミングであった。今回、一回の介入でこれだけの効果があった最大の背景は、円高を積極的に仕掛ける市場参加者を集中的に叩く、このタイミングにあっただろう。

ついでに言うと、相場には直接関係ないが、介入は民主党代表選の翌日だった。菅首相サイドが選挙対策の意味で介入を行ったと批判されないタイミングであったことも、悪くなかった。

もう一つの効果は、円の高値更新のタイミングで介入が行われたことで、しばらくの間この介入が、一定のレベルのレートを目指して行われているものなのか、単に市場の急変を避けるために行われているものなのかが分かりにくいことだ。後者は、値動きをスムーズにするための介入という意味で「スムージング・オペレーション」と呼ばれるが、この趣旨の介入なら、他国の批判はかなり和らぐ。

一方、円を買い進みたい市場参加者から見ると、再び82円台に入るようなことがあると、あるいは現在のレベルであってもさらに、円安に向けた介入があるかもしれないとの予想が可能なので、しばらくの間、介入を警戒する理由が残る。

この「どっちつかず効果」は何時までも続くものではないが、一回の介入でこれだけ余韻を残すことができたのは、上手くやったといって良い。

また、おそらくは欧米諸国への根回しを済ませてから介入し、日本市場での取引時間帯の後に欧州、米国の取引時間帯にも介入したことは、日本政府の「本気」と、他国の介入への同意の可能性を臭わせて、効果的でもあった。

この他国との調整については、菅首相が代表選の討論会の中で、市場に介入した際に他国から「少なくともネガティブなことを言われないように、いろいろやっている」と述べていた。後から振り返ると、ヒントはあったわけだ。

また、介入の金額は約2兆円と発表されているが、これは、一日の介入額としては、1984年にあった介入以来の巨額だという。政府として、今後にどのような規模の介入をするつもりがあるのかは分からないが、仮に、他国から批判されずにできる介入が今回限りだったとした場合、一度にまとめて大きな金額を使ったことで、市場参加者に対してはまだ大きな介入があるかも知れないという「不気味な感じ」を持たせることができた。

もろもろの状況を考えると、随分上手く行ったように見える今回の介入だが、今後はどうだろうか。実は、すでに、欧州でも米国でも、日本の介入に対する批判の声は上がっていて、今後、G7、G20といった場で、日本の介入に対する理解が得られるか否かが、大きなポイントだ。これは、簡単ではあるまい。欧米各国は自国の通貨安を歓迎しているし、日本も含めて、中国の為替レート操作を批判している立場だ。金融危機後の日本経済の落ち込みが他国よりも大きいことなどで、上手く説得できればいいが、筆者は難しいと想像する。

また、もともと今回の一連の円高は、日本国内の要因よりも、米国景気に対する懸念が大きな理由だったと見られている。仮に、米国の景気に関して大きな悪材料を示す統計でも発表されると、今回の介入の効果はいっぺんに吹き飛んでしまっても不思議はない。

もともと、為替レートのレベルについては、介入だけの効果では長続きするものではないと考えられている。今後の推移に影響を与えるのは、第一に米国の景気がどうなるか、第二に日本のデフレ対策としての金融緩和がどれだけ力の入ったものになるか、の二点だ。日本の政策としては、為替市場への介入よりも、金融緩和を徹底して円安に導くのがより根本的であって、且つ理想的な展開ではないだろうか。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第83号 2010年9月24日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.09.24 10:49:32



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