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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.10.08
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先頃、国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、民間サラリーマンが昨年一年間に得た平均給与(ボーナスを含む)は税引き前のグロスの数字で平均406万円(千円単位を四捨五入。以下同じ)であり、これは、対前年比5.5%もの落ち込みという衝撃的な結果だった(1949年の調査開始以来、幅、率ともに最大の落ち込みだ)。給与所得者の平均年齢は44.4歳、平均勤続年数は11.4年だ。性別では、男性が500万円、女性が263万円だ。

ちなみに、平均給与のピークは、1997年の467万円であり、61万円も下がったことになる。加えて、失業率も高止まりしており、日本人の所得環境は相当に悪い。

給与の高い団塊世代の大量退職といった理由もあるが、長引く不況とデフレ、さらに企業のコスト削減の影響が大きい。

経済の論議としては、政策として、デフレ脱却のための金融政策(財政的な補強を伴うものも含む)と、雇用に関する対策、さらには成長戦略が必要だという話になる。しかし、率直にいって、「望ましい」とされる政策について議論で結論が出ても出なくても、そうして政策が速やかに実行される公算は小さいし、実行された政策の効果が出るまでには時間がかかる。

ところで、政策について「諦める」ことは国民として適切ではないが、残念ながら「望ましい政策は実現しない」あるいは「政府は頼りにならない」という前提の下で何が起こり、個人や企業はどうしたらいいのかという点を議論しないと、経済の論議として実りが少ないのではないかと、筆者はこの頃強く思うようになっている。

やや長期的に見ると、物価がデフレなので、実質的な購買力はそう落ちていないが、前年比の5.5%という落ち込みのひどさを見ると、「生活防衛」という言葉が頭をかすめる。

「サラリーマンは体が資本」という言葉があるように、勤労者は将来の稼ぎを現在価値に換算した「人的資本」(人間の株価のようなものだ)を持っていると考えられ、これが、資産運用を考える場合にも重要な要素になっているのだが、この多くの人にとって最大の資産である人的資本の価値が下落するような状況が起こっているということだ。

生活防衛のもっとも基本的な方法は、第一に生活の必要コストを下げることだ。もっとも、誰もが直ちに失業したり収入が減ったりするわけではないから、いざというときに、生活コストを縮小する方法を確保しておくべきだということだろう。

生活のコストを考える際には、大きな支出項目から順に考えていくのが定石だ。住んでいる地域や職業にもよるだろうが、住居にかかる経費の削減、自動車の節約(持たないで済ませられないかの検討を含む)、生命保険料(特に医療保険は不要で且つ不利な場合が多い)といった辺りが、大きな削減対象候補だ。日頃から、生活をシンプルに、身軽にしておくことが役に立つだろう。

住居については、たとえば二世帯住宅で親子の連携を図りつつ一世帯あたりの負担を下げて、同時に共稼ぎの環境を改善するといった方法が考えられる。交通と生活に便利な立地に住宅を持つことができれば、自動車の費用を節約することもできるかも知れない。街中に住むと、自家用車を持つよりも、必要な場合にタクシーを利用する方が総コストは安くつく場合が多い。

男性勤労者の500万円という平均年収は、女性が結婚相手に期待する年収水準(600万円くらいから上を希望することが多い)を考えると、晩婚化やそもそも結婚する率を引き下げる要因になることが考えられるが、「共稼ぎが普通」という割り切りを持って、早めに結婚する方が人生全体のクオリティを上げやすいのではないだろうか。

以前に本コラムで指摘したように、働く女性の出産時期の選択として、若年期の方が出産に伴う仕事の空白期の「機会コスト」が安いことを考えると、何とか、共稼ぎと、女性が子育てで離職せずに済むような生活体制の構築大事だ。

もちろん、経済要因としての子供は大きなコスト要因であることは間違いないのだが、大きな張り合いであり楽しみであることも事実だ。子供を持って、さらに生活の質も落としたくないとなると、かなりの戦略性が必要だ。

資産運用はどうすべきだろうか。

多くの人にとって最大の資産である人的資本のリスク(価格変動リスク)が大きくなったということ自体は、リスクに対する態度が同じなら、直接的には金融資産運用でのリスク・テイクを縮小させるべき要因だ。世の中がますます縮んでしまいそうな話で恐縮だが、理屈上は仕方がない。

ただし、生活の必要コストを下げて、リスク・テイク上の余裕を作ることができるとすると、人的資本の収益率が悪化しやすいとすると、金融資産運用でリスクを取って稼ぐことは有力な選択肢だ。生活をシンプルにして、金融資産を手厚く持つと、失業や病気のリスクに対する抵抗力が増すので、保険料を一層節約することができるかも知れない。

従って、若年時点から金融資産形成に積極的になることは、現代の生活戦略の一部としてプラスだと考えられる。筆者は、最近、若い頃から貯蓄や積立投資に積極的な「感心な若者」と会うことが多いのだが、この点は評価できる。

この上は、結婚する時期を早めたり、子供を早く持ったりする積極性を持つと、もっといいのではないかと思うのだが、どうだろうか。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第84号 2010年10月8日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.10.08 14:50:22



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