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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.10.22
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海江田万里経済財政担当大臣は、10月17日のテレビ番組で、来年度の税制改革で法人税率が「下がることになると思う」と述べた(ロイター、17日。http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17700820101017)。

法人税の引き下げは、財界が長年要望しているものの、なかなか実現しなかったが、ここに来てついに現実化しそうな流れが見えてきた。

日本経済は、金融危機で他国に較べて大きかった落ち込みから十分回復していない。加えて、近時、日本企業の海外進出が本格化しており、特に、今まで日本の外貨獲得を大きく支えると共に関係会社まで含めると大きな雇用を吸収してきた自動車メーカーが、相次いで生産拠点を海外に(たとえば、タイに。タイの現地の部品メーカーの製品品質は日本の部品メーカーに迫るという)移しており、産業の空洞化に勢いがついてきた。何らかの手を打たなければならないという問題意識が、税務当局にも芽生えてきたのだろう。

法人税引き下げは、いうまでもなく株価にとってはプラス材料だ。実効税率40%といわれる日本で、仮に法人税率が5%下がると、税前利益の60%が純利益だったものが、65%に増えるから、これは、1割近い増益要因だ。株価は、おおむね将来純利益の割引現在価値だと考えることができるから、株価には直接的な効果があるはずだ。少しでもいいから、ともかく実現して欲しい、というのが株式を持っている市場参加者の切実な願いだろう。

利益のあるビジネスを行うことの税引き後の実質的な収益性が増すのだから、不動産価格に対してもプラスのはずだ。株式、不動産、両方の価格にプラスということは、消費者は持っている資産の価値が増えることを意味するので、これには消費を増やす効果もある(「資産効果」と呼ぶ)。

以上が法人税率引き下げで考えられそうなプラス効果だ。しかし、心配な面もある。

一つは、法人税率引き下げに見合う財源を、直ちに調達しそうなことだ。報道記事を読むと、租税特別措置の見直しなどで財源を調達するとの考え方があるようだが、増税のタイミングや内容によっては、減税分の景気に対するプラス効果を上回るマイナス効果が出る可能性もある。

また、法人税の減税幅は、正式には今後の議論で決まるのだろうが、現在議論されているのは「5%」程度の数字であり、大幅な引き下げは期待しにくい。アジアや欧州に較べて日本の実効法人税率が高い状況に変化がないので、世界的なビジネス立地の選択において、「他国(特にアジアの国々)ではなく日本」という答えを引き出すには全く不十分だろう。

ところで、法人税に関しては、個人的に「夢の腹案」がある。

法人税の税収は、過去を見ると、好況時でも13兆円程度であり、意外に大きくない。消費税に置き換えるなら、ざっと5%消費税率を引き上げるなら、法人税を廃止することができる計算だ。こうすると、どうなるか。

増減税同額で景気に対して、直接的な効果は中立的だとしても、先に述べた資産価格への効果が大きいので、プラス効果が大きくなるだろう。加えて、「法人税ゼロ」ということだと、さすがに立地として日本を選択して、オフィスを移す国際企業が出てきそうだし、日本への投資が活発化するだろう。日本に投資資金が流入すると、この資金が国内で支出されるので、この景気浮揚効果も大きい。

また、企業では、法人税に関する業務が必要なくなるので、経理関係のコスト削減効果も大きい。

机上の計算ではいいことずくめに思える「法人税ゼロ」なのだが、予想の問題としては、ほぼ絶対に実現しないだろうと思っている。企業の税務の仕事がなくなると言うことは、税務当局の影響力の低下と人員余剰を招くし、それに加えて、税務署OBが多数ビジネスとしている税理士の仕事が減るので、財務省が大反対するにちがいないからだ。

ともかく、「ゼロにして」とまでは言わないが、法人税率は、早急に、かつなるべく大幅に引き下げて欲しいものだ。いったん海外に流出したビジネスを呼び戻すのは、極めて難しい。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第85号 2010年10月22日発行より) ==========================================================

 






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最終更新日  2010.10.25 14:52:35



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