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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.11.12
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カテゴリ:カテゴリ未分類
お金と時間には切っても切れない関係がある。諺に「タイム・イズ・マネー」と言う通りだ。

近年は金利水準が低いのでお金には時間の価値があることを忘れてしまいがちになるが、お金は、箪笥の引き出しの中などに入れておくのではなく、これを銀行(本当に低金利だけど)などに預けると、何らかの収益が得られる。

何らかの選択を行ったことによって、他の選択をすれば得られたであろう収益が得られなくなり、この収益を損失と考えるのが「機会費用」の概念だが、お金の置き場所を考える際には、この機会費用を考える必要がある。

ちなみに、個人の時間もある程度までならお金で買うことができる。例えば、職場から1時間の場所に住むのと、30分の場所に住むのとでは損得が大いに異なる。たとえば、1時間当たりの収入が3,000円の人であれば、1月に20日通勤すると考えて、月間6万円の損得が発生している。住居として似た条件で、家賃差が6万円以内なら、近い場所に引っ越した方が得だという計算が成り立つ。好立地の不動産の家賃が高いのは、基本的にこうした経済原理が働いているからだ。

ところで、お金が、時間に伴って、何らかの収益を稼ぐことができるのはなぜだろうか。それは、何らかの意味で生産活動に参加しているからだと考えることができる。ビジネスを行うには、地代、設備投資、人件費、材料費(仕入れ)などにお金が必要だ。お金を使って、使った以上のお金を稼ごうとするのがビジネスであり、その差額が「付加価値」と呼ばれるものだ。お金は、これを効率のいい生産活動に好条件で参加させることができると、高い収益を生むはずだ。

自分のお金を、どこに運んで置いておくのがいいか、ということが「運用」(運んで、用いる)という言葉に込められた意味なのだろう。

正しい場所に置いて活用することができれば収益を生むはずの「お金」だが、長い時間を越えてその価値を維持することは、必ずしも簡単ではない。近年は物価が下落するデフレなので、お金の価値を維持することの難しさを意識するというよりも、お金そのものを抱えておくことが価値であるという気分になるが、デフレの世の中でも、付加価値の生産はあるわけだから、そこに自分のお金を参加させることができれば、お金は価値を生むはずだ。

インフレは、お金の価値が下落することだから、お金を持っているだけの人には歓迎できない事態だが、デフレであるよりは、インフレの方が価格調整は円滑であり、経済活動はより活発になりやすい。

先般、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、長期国債を大量に買い入れることで、民間経済に流通するお金を増やそうとする政策を発表した。これは、アメリカが日本のようなデフレにならないようにすることを目的とした政策であり、金融危機後の落ち込みからなかなか回復しない雇用情勢を意識したものだ。

こうしたお金の量を増やす政策を受けて、雇用はまだ顕著に回復しないものの、アメリカの株価は、いわゆるリーマン・ショック以前の水準まで回復した。

他方、日本は、物に対してお金の価値が上昇するデフレであり、民間経済に流通するお金の量が十分拡大していないこともあって、株価の上昇は、アメリカにも他の先進諸国にも遅れている。お金が民間経済にどの程度出回っているかを知るには、銀行貸出残高を見るといいが、9月の時点で前年比マイナス1.8%と低調だ。

デフレが円高の原因になっていることもあり、外国の金融緩和に負けてはいけないと、遅ればせながら日銀も金融緩和を強化しようとしている。

率直に言って、日本の経済の現状はパッとしないが、株価はこれを織り込んで形成されている。これから金融緩和が進むと上昇する可能性を大いに残していると考えてもいいのではないだろうか。現状では、お金がビジネスに投資されることを通じて、時間の経過と共に新たなお金を生む効果が、日本では過小評価されているのではないだろうか。

あくまでも仮説に過ぎないが、来年は、日本株の相対パフォーマンスが優れた年になってもおかしくないと思う。日本経済全体は低調であっても、株価にとって問題なのは期待の変化率であり、現状からの改善だ。加えて、世界の経済活動が金融緩和によって活性化するなら、日本の企業もそのメリットを受ける。

お金が時間と共にお金を生むということについて考えてみたら、日本株は、現在、案外悪くない投資対象なのではないかという結論に辿り着いた。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第86号 2010年11月12日発行より) ==========================================================







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最終更新日  2010.11.12 17:52:36



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