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カテゴリ:身体・感覚
言葉が、文法という決まりに従って書かれているように、目にするものも、決まりを読み解くことができる。
その決まりを知る入門書として書かれたのが本書です。 『「形は語る」D・A・ドンディス サイエンス社』 目にするものの決まり=視覚の読み書き=視覚リテラシーと呼ばれています。 この本は、昭和54年に発行されているので(古い!)視覚リテラシーについて書かれた初期の本だと思います。 しかし、ネットの時代となり、携帯電話で簡単に写真を取ったりできる今、読んで古びていないことに気づかされます。 『芸術家でない人にとって、視的感度と表現能力の開発にどんな利点があるのであしょうか。第一の決定的な価値は、漫然とした反応や個人的な趣味や偏好を超えて、判断基準が向上することです。視的に訓練されたもののみが気まぐれな流行を超越し、何が適切で美的であるのか、自分自身の判断ができます。』 デザイナー等が流行に左右されない格好いい服を着ていることが多いこと。 アーティスト等がTシャツにジーパンから?な(びっくりするような奇抜な)服をきていること。 その理由を「視覚リテラシー」をよく学んでいるからだ、と説明することができます。 「目にするもの」、それは「思想や、感覚や、イメージ」を伝えるものです。 六本木ヒルズの森美術館は、デートコースにも使われるような洒落た美術館です。出口には、おしゃれな売店を通り抜けてたどりつくようになっています(04年秋に私が行ったときはそうでした)。 「お土産にいかがですか」とは書いていませんが、「いかがですか」というメッセージは伝わります。 『・・意味は外的刺激に対する人間の心理生理的作用から発生します。』 人がどのように反応するか、を予測し表現のプロが考え出したもので、今の世の中はあふれています。 相手は何を考えて作ったのか? これを知る一番良い方法は、「自分がつくること」と著者は述べています。 これは、気軽に写真をとったり、ビデオを録画したりできる今に、活かせる提案です。 そのときのポイントとして、「なぜつくるのか、どのようにつくるか」を考えることだと述べています。 そう考えることが、視覚リテラシーの技法(具体的にいえば線、明暗、方向、形、運動、比率、大きさなど)に近づくことになります。 また、自分がイメージや感覚をどのように「視覚」という言葉で話しているかをしることは、もう一つの言語を知る楽しさがあります。 自分がつくることを考えることで、ひとのつくるものの意味が見えてきます。 この本は学術的に、また美術史の流れについても書かれているので全体的には堅い本となっています。 しかし、リテラシーの技法について白黒の図版をたくさんいれて体系的につくられてあるので、技法のみに目を通す読み方もできます。 基本的な定義は全く古びていませんが、美術についての考察、視覚リテラシーについての取り組みについて、今と書かれた時代との違いをふまえながら読むと非常に興味深いです。 視覚リテラシーに近く、「日本の形」等も紹介しているエッセイ式の新書本を次に紹介します。(数日後になると思いますが、よろしかったらまた見に来てくださいね) 最後までお読みいただきありがとうございました! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年04月27日 10時35分56秒
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