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身体・感覚とアート

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2006年09月24日
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カテゴリ:捕虜体験記より
『「[私はロシアの老婆から魚を一匹貰った。]見事な魚である。鯛に似た色合いが多少白っぽい感じだった。

『これを私に?』私は思わず叫んだ。
『どうぞ食べてください。』老婆は再び言った。
『ありがとう、ありがとう。』私はそれを受け取り、押しいただいた。老婆は私に魚を渡すと引き返して行った。

 私は感激し、ゆっくり賞味させてもらった。十分に塩出しがされており、生まれて初めて味わったおいしさに思えた。

 その栄養は私の体のすみずみまで行き届いていったのがはっきりわかった。
 
 慈悲という言葉がある。慈悲とは、仏、菩薩(ぼさつ)が衆生(しゅじょう)に楽しみを与え、苦しみを除くことだという。

 当時のソ連市民の生活はけっして豊かではなく、他人に塩魚一匹を与えることは大変なことであった。見知らぬ老婆がなぜ私に貴重な施し(ほどこし)をしてくれたのかわからなかった。察するに、痩せ細り、乞食(こじき)スタイルの私が、おぼつかないロシア語手帳をくり、シベリア原野での苦しい生活のなかを生き延びようとする姿を見てとり、人間としての哀れを感じたものであろうか。そうだとすれば、ほんのひとときでも苦しみから解放し、喜びをもたせてやろうとしたこの老婆は、仏であり菩薩であって、その行為は慈悲というものであろう。』

引用:「捕虜体験記1」P178~179部分:イルクーツク駅近くの第三収容所にいた本多順次氏回想 編集・発行 ソ連における日本人捕虜の生活体験を記録する会





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最終更新日  2006年09月24日 10時23分57秒
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