『Q&A』 著:恩田陸
「これからあなたに幾つかの質問をします。
ここで話したことが外に出ることはありません」
最初から最後まで、Q&Aの形で進んでいく小説。
何十人もの死者が出た、大型スーパーでの事故。
その関係者に、事故についての聞き取りをしている、
といった感じ。
同じ事件を体験した人であっても、受ける印象、
その後の影響は、さまざま。
ある人が、そこで見たと話している人物本人に、
また別に話を聞いてみたら、また違っていたり。
事故の原因を突き止めようとの調査かと思いきや、
どうやらそうでもなさそうな、事故の原因と同じくらい、
聞き取りをする人たちも、また謎。
調査員のようだったり、単なる物好きのようだったり、
記者のようだったり、カウンセラーのようだったり、
秘密を持ち出した人物を見つけ出し、
「消す」人だったり。
近年起こった、いろんな事件を髣髴とさせるような、
不可解な集団事故。
事故が起きているその時、事故の直後、
マスコミ合戦が熱狂してる頃、色んな憶測が渦巻く頃、
それも落ち着きを見せ始めた頃、そして廃墟となり、
その跡に、また新しい建物が建った時と、
時間を少しずつ経過させながら、物語は進んでいく。
ああいう時、人はどうなるんだろう…と、
漠然と感じていたことが、この小説で、
リアルに語られている、というか。
きっと人は、こうなるんだろうな、こういう行動を、
きっと取ってしまうんだろうな、と想像する以上のことを、
まざまざと見せ付けられたような気がして、
まるで、体験してしまったかのような、気分でした。
現場に駆けつけたレスキュー隊員の話は、
ぶっ飛びすぎでは?と思ったけれど、
ありえないことではないかも…と、恐ろしかった。
色んな角度から語られた事件が、
次第につながりを見せ、それが一つになり、
そして最後に真相が!という手の話ではなく、
結局最後まで、事件の原因は分からないし、
聞き取りをしている人たちの正体も分からない。
でもこういう小説、嫌いじゃないかも。
読み終わった後も、「え?で、何だったの?」と、
物語を反芻しながら、3日ぐらい頭悩ますのが、好き。
世間を騒がす事件を見ても、
つい他人事だと思ってしまうけれど、
この小説の登場人物たちも、そう思っていたに違いない、
と、平凡な1日を過ごせることに感謝したくなる、
一冊でした。
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【参考】
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