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2008.07.20
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カテゴリ:


『禁じられた楽園』 著:恩田陸


大学生・平口捷は、同級生で世界的天才美術家、
烏山響一から招待を受けた。

熊野の大自然の中に作られた巨大な「野外美術館」へと、
いざなわれる。

そこは、むせかえるような自然と奇妙な芸術作品、
そして、得体の知れない“恐怖”に満ちていた。



恩田陸作品にしてはちょっと、微妙でした。
ファンタジーなのかミステリーなのかSFなのかホラーなのか、
どっちつかずな感じが、この作品の気味悪さを増長させてるような。

でもそれが狙いならば、狙い通りなのだろうけれど。


そこだけ時間の止まったような、うっそうとした森の中、
インスタレーションという、芸術なのか建築なのか、
一目ではその全体像をつかみきれないほど大きな建物に、
様々な趣向を凝らした仕掛けを隠し。

その中に入った人を、不思議な感覚へといざなう。
それは過去、その人が忘れたかった過去を見せるもの。

ある特殊な能力を持っているものだけが、その建物と共鳴し、
忘れたい記憶を増幅させる。


その建物の細かい描写が、とても不気味で。
生理的に不快感を呼び起こす記述は、まるでその建物に入り、
彼らと同じ体験をしているかのような錯覚を呼び起こす。

ベタっとしたゴムの質感まで、肌に感じるよう。


子供の頃、見えてはいけないものを見てしまった捷は、
最近その夢を、たびたび見るようになる。
それと時を同じくして、天才芸術家との呼び名の高い、
烏山響一から声を掛けられる。

響一と同じ大学にいるというだけで、芸術家でもない捷は、
響一のいきなりの誘いに戸惑いつつも、好奇心を抑えきれず。

平凡な学生だと思っていた捷の、隠された能力を、
感じ取っていた響一。
自分の芸術を完成させるには、君のような感性の人間が必要だと。
それは一体、何のために…。


最期を締めるのが捷の姉であるのに、その姉についての描写が、
他の人物に比べて全然少なく、不協和音を呼び起こすような、
なんとも居心地の悪いラスト。

え?結局それでいいの?
と、その収まりの悪さまで計算していたとしたら、すごいものだけれど。


響一の作った「カーテン」というソフト、色々形容しているけれども、
そのモノずばりは、何とも書かれておらず。

そういう、まさにカーテンの向こう側を透かして見ているような、
読み手の想像力と好奇心ともどかしさをかきたてる書き方は、さすが。

もしほんとにそんなソフトが存在するのなら、ぜひ見てみたい。
私が見たら、一体何が見えるのだろう…と思った一冊でした。



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よろしくお願いします♪


【参考】
◆恩田陸の著書は→ 楽天ブックス


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最終更新日  2008.07.20 19:47:33


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