*モナミ* SMAP・映画・本
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『カラフル』 著:森絵都 いいかげんな天使が、一度死んだはずのぼくに言った。 「おめでとうございます、抽選にあたりました!」 ありがたくも、他人の体にホームステイすることになるという。 前世の記憶もないまま、借りものの体でぼくは、 さしてめでたくもない下界生活に舞い戻り、 前世で犯した悪事を思い出さなくてはならなくなった。 気がつくと、ぼくは自殺を図った少年、小林真だった。 前世でどんな悪事を働いたかは知らないが、死んで天国にも行けず、 次の誰かに生まれ変わることもできないらしいぼくがいきなり、 抽選に当たって誰かの体に乗り移り、人生をやり直すって、 それってラッキーなのかどうなのか…。 ガイド役という天使も、なんだか胡散臭そうだし。 他人の人生なんてどうでもいいと、いい加減に生きてこうとするも、 それじゃぁいけないと天使からダメ出し。 どんな悪いことをしでかしたのか、思い出さなきゃいけない。 しかし乗り移った小林真という少年も、今ひとつパっとしないヤツで。 学校では孤立し、初恋の君は中年オヤジと援交していて、 父親は利己的な人間で、母親は不倫していて、兄は意地悪ときた。 という情報をガイドの天使から得て、ぼくはしぶしぶ、 自殺を図って死んだらしい小林真になりきるわけだが…。 以前の小林真がどうであろうと、ぼくは自分のしたいようにする。 だってコイツが生きている間に何を思って、何をしていたかなんて、 ぼくが知るわけないのだから、ぼくはぼくのしたいようにするだけ。 学校でも暗いヤツだったらしいけど、そんなの知ったこっちゃない。 どうせ他人の金なんだ、コイツの小遣いでちょっと高いスニーカーも、 買ってやれ。 以前と違う真に、周りの人間は戸惑いつつも、次第に慣れてくる。 ぼくも小林真であることに慣れてくるにつれ、周りが見えてくる。 主人公が現世で犯した罪は、途中でなんとなく分かってくるけれど、 その陳腐さの中でなんかこう、切なくなるものが。 オチを言っちゃうとぼく=小林真で、前世でぼくが犯した罪というのは、 自分で命を絶ったこと。 ぼくは知らずに自分自身の人生をやり直していたのだけど、 小林真であった時と何が違うかというと、どうせ自分の人生じゃないんだ、 他人の人生なんだから、とやりたいように振舞っていることが、 結局は自分の殻を破ることに。 こういう無責任さというか、自分の枠を外れた感じって、 分かるような気がする。 旅行先とかだと、いつもとは違うハシャギ具合しちゃうような(笑)。 自分を演じなきゃいけない、人に期待されてる自分でいなきゃいけない、 って、「ほんとの自分」なんていつ出していいのか、そもそも、 「ほんとの自分」なんているのか、分からなくなってくることが、 生きてりゃ何度もあって。 色んなものに縛られて、いや、自分で自分を縛って、 「ほんとはこんなんじゃないのになぁ」なんて思いながら生きている。 晴れて再び小林真として生きることができるようになったぼくだが、 以前のぼくがどんなだったかを思い出し、不安になる。 そんなぼくに天使が言う。 「せいぜい数十年の命です。 少し長めのホームステイがまた始まるのだと気楽に考えればいい」 この世は仮の宿。 そう思えば、知らずに縛っていた「自分であること」から、 少しだけはみ出すことができるかもしれない、そう思った一冊でした。
【参考】 ◆森絵都の著書は→
メイキング・オブ・マッドマックス 怒り… 2015.07.24
『家族の言い訳』 著:森浩美 2015.02.07
『あなたに褒められたくて』 著:高倉健 2015.02.05
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