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成定 竜一~高速バス新時代~

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2011.07.22
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カテゴリ:高速ツアーバス
昨日は、設立準備会から数えると5回目の高速ツアーバス連絡協議会の年次総会。報道陣まで合わせて80人を超える皆さんにご出席いただいた。私はもう協議会事務局を離れた身なのだが、それでもホスト側、裏方的に動いてしまうのは、自分でイチから作り上げた協議会への愛着、ではなくて、元ホテリエ(ホテルマン)としての習性かな。私が大学を卒業しホテルに就職して、ベルパーソンやハウスキーピング(客室清掃)など最初の1年は各セクションで研修した後、正式配属されたのが宴会場のウェイターだったのだ。

2000人収容の大宴会場を担当し、来る日も来る日も夜を徹して翌日の宴会の準備を重ねる日々。今回のような事業者団体の総会であれば会議卓と椅子をセンチ単位で測りながら整然と並べ、それが終わると時間との勝負で立食パーティに「どんでん」し、週末は婚礼(結婚披露宴)。正直、バス会社の労使の基準では考えられないような超長時間労働の中で、タキシードを着てゲストの前でサービスができる時間などほんの僅か。宴会やイベントの段取りをしたり会場を作り上げたりする作業は楽しいけれど、やはりホテリエになった以上はゲストの前に立ちたい。フラフラになりながらもむさぼるようにその僅かな時間を楽しんでいた時代。今なら、半日と体力がもたないだろうなあと懐かしく振り返った。

さて協議会総会には毎回、国土交通省から幹部の方を来賓としてお迎えし、耳の痛いことも含めて講話をお願いしている。今回のテーマは、当然、「バス事業のあり方検討会」中間報告書と「新高速」の詳細について。旅客課長さんの講話の後、私も短いセッションながら今日のマーケット環境の変化について講演し、その中でも若干の補足をさせていただいた。前回、中間報告書発表の際に一度ご説明をいただいていることもあり、今回は会員からの質問も思ったより少なかった。その後の懇親会では質問攻めにあったけれども。

各社とも、その業態や規模に応じて、これからどんな順番でどういう内容に対応していかなければならないか、少しずつながら確実に焦点を結んできた様子。全ての会員にとって低いハードルではないかも知れないが、彼ら自身の事業の安定、さらなる成長のために必要な努力を払っていくことだろう。私としても、協議会の顧問(渉外担当)を承った身として、行政はじめ関係諸機関との調整ならびに会員の努力への支援を、粛々と進めていく。

業界には、未だ、オフィシャルな場で「中間報告書には納得していない」とご発言なさる方もあると聞く。そもそも、日本バス協会や各労働組合、高速ツアーバス連絡協議会らの代表者が参じて繰り返し議論を重ねた会議の末に国土交通省によりまとめられた中間報告書を「納得していない」ではないと思うのだが。しかしながら、大切なことは、今回の報告書に書かれた内容は、高速ツアーバス各社にとって大きなメリットがあるのと同時に、既存の高速路線バス事業者にとって非常に大きな意義があるものだということだ。

それには短期、長期、二つの意義が考えられる。まず、どう考えても高速バス市場で大きなボリュームを持つのは短・中距離の多頻度昼行路線だ。東京と地方都市を結ぶ長距離夜行路線など、どれほど高単価だ、高乗車率だといったところで、毎日1~2往復×20数人の規模に過ぎない。一方で東関道、中央道、アクアライン、明石海峡、九州内路線など、いったい毎日何人を運び、どれだけの売上を計上しているか。この種の路線こそ高速バス市場の「本丸」であり、そこでは現在、圧倒的に高速路線バスが強い。

今後、この種の路線に新規参入を目論む者は絶対に出てくる。既存の高速路線バスがその新規参入を阻止、または影響を最小限に収めるには、規制に縛られた今日の事業のあり方から、より積極的なマーケティング活動を行なえるよう柔軟性を高め、潜在需要を先に掘り起こしてしまうことが最も近道だ。規制を厳しくすればさえ新規参入を拒めるだろうなどと考えるのは、ウェブ化の進展など外部環境の変化を、またマーケット(乗客)のパワーを考慮に入れない、いたって楽観的、独善的な観測である。

そして何より、長期的に見て、ここで高速と平場を切り離すことが、実は平場の路線バスを守る道なのだ。40年前に約100億人の年間輸送人員があった我が国の平場の路線バスは、今日では40億人である。逆立ちしても、それがV字回復を遂げるとは思えない。だから本当に公共交通としての平場の路線バスを守ろうと思えば、何らかのスキームを作ってもっと多くの公的なお金をつぎ込むしかない。だが、片や高速バスは競争が排除され儲かっている、また昔からの流れでサービスエリアのレストランやら航空総代理店やらといった利権も握っている、その一方で路線バスは赤字だからもっとお金を入れてくれでは、あまりにも虫が良すぎて社会は認めてくれないだろう。

路線バス事業者という「会社」にお金を入れるのではなく、赤字だけれども残さなければならない「路線」に対してお金を入れる。そしてその路線が残すべき価値があるかどうか「経営」面を常にチェックする仕組みと、顧客満足、安全・安定性そしてコストなど「運営」面を常に最適に保つ仕組みを導入する。そう書くとさも大げさだが、我が国のバス産業とバスという輸送モードを守るすべが他にあるのか。そして考えてみれば、2002年および06年改正以降、我が道路運送法の理念は上記のとおりだ。法律が先に走り、むしろ業界が「マッチ売りの少女」のようにノスタルジーにしがみついているのである。

今回の制度改正は、間違いなく、我が国のバス産業を立ち直らせるための大きな大きなターニングポイントになる。関係者は、何度も何度もこの中間報告書を一字一句飛ばさず読み直し、腹に落とすべきだ。そうすれば、この転機にバス事業に携わっている自身の役割の大きさを、もう一度認識できるはずである。





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Last updated  2011.07.22 15:25:57
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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