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長押 綴

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2017.02.16
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カテゴリ:🌾7種
安居は決める役を買って出ていた。

決める事は、逃げ道を見付ける事。決める事は、逃げ場所を見付ける事。
意志という道も、目的という場所も、どちらも生き延びる為に必要。

非常時には冷静な判断をし、行動を決めなければならない。法律、ガイド、ヒントがあてにならなければ、自分でやるしかない。間違えた責任は自分で被る。他人を信じすぎない。他人を救い過ぎない。いずれ崩れるものだから、と先生達は要先輩は教えた。

そして無法地帯で「絆」と「リーダー」そして「極限状態の経験」は、信頼と責任の象徴となる。

******
要さんの「全部自分で考えて決めるんだggrks」は、先生達の都合で抜いたプライドと野生を植え直した。

それは、絆とリーダーと極限状態の記憶を繰り返し想い出すことに繋がった。

******


さて、安居はずっと先頭で風を切って走ってきた。
これは一見、一所に休まる「安居」とはそぐわないように思える。

初登場時の安居は茂と「食べている」(7巻表紙)
初登場時の安居は茂と「走っている」(7巻冒頭)
そしてじきに要先輩が流す音楽のターンになる。

食べる事、走る事、聴く事。
それらは過程の楽しみでもある。人として生きていく為の楽しみでもある。
けれど、走り続けたらいつかは疲れる。

…疲れたら座って休めばいい。安居すればいい。
その概念は、彼らが子供の頃はあった。

 それは時にルール、逸れたら叩き直されるレール…親と警察の代わりである「先生」であり、
 時に壊されるまでは使えて、壊されたら「直せ。もっと丈夫にな」と言える家具であり、
 焼き付いた幸せ、安らぎの記憶だった。

赤い部屋から出た後の安居が、ふわふわした源五郎の動物を触ってようやく泣けたように
落ち着けるホーム、ゴールで立ち止まれば、弱味を晒すことが出来る、という概念があった。
未来で蘭が牡丹という「自分より年上の」頼れる相手に叱られて、ようやく泣けたように。

そのホーム、ゴールは「ガイド」であり、「公務員」であり、「リーダー」…「ヒーロー」。
要先輩は聞けばなんでも教えてくれた。幼い安居にとってのヒーローに近いものだった。

だからそんな安居にとって、「教える事」は「助ける事」だった。
小さい頃から茂にやり方を教えて助けてきた。茂に気付きと記憶を教えられて助けられてきた。
小さい頃から要先輩は教えて、助けてと言えばいつも教え助けてくれた。


安居は誰かの家になりたくて、落ち着かせたくて、守りたくて、
「リーダー」になったのかもしれない。




仲間を休ませる場所を、安居させられる場所を探していたのかもしれない。
自分が信じられる律を、安居できるいきかたを探していたのかもしれない。



だから代わりにのばらのことを飲み込んだ。
だから代わりに茂に寝てろと言って動こうとした。
だから代わりに源五郎に、動物は俺が殺すと言った。

他の誰かには耐えられないだろうから、代わりに傷付こうとした。

けれど寮は燃やされ、動物は皆彷徨い歩く毒にされた。それを葬り救う源五郎は救いきれなかった。

卒業試験で教えられたのはゴールなんてなかった、落ち着いて良い場所なんてなかったと言う事。
安居は安居していてはいけないということ。
行き先さえ不確定だから、誰かを完全に導いてはいけないし、誰かを完全に信じすぎてはいけないということ。誰も誰かの家にはなれないし、誰も誰かを家にしてはいけないということ。

ゴールがあるとしたらそこは墓。落選者の末路、死という事。

茂が最後に昏い穴に落ちていってしまったように、
のばらが視力テストに落ちてもう二度と戻ってこなかったように。

平均台から落ちたそこは地面じゃなくて深い穴倉になっている。
もう食べられない。もう走れない、聴けない。
誰かの養分にされる側の世界が待っていた。
だから安居は走り続けることにした。捨てながら食らいながら。死ぬまで彷徨うことにした。
けれどそこに「未来」以外出口はない。だから「逃げられない」故郷という穴倉の中でぐるぐると彷徨い続ける生活が始まった。
常に安心することなく、生きる為の観察力を磨き始めた。人としての何かはそこで重んじるものではなかった。当たり前に傍にいる相手、茂への「ごめん」や「ありがとう」はその一つだった。
けれどある意味で、「重んじなくても失わないもの」として安心していた、甘えていた。

人としての何かを、平均台の上ではバランスを崩しかねない余計なものを、削ぎ落として飲み込んできた。
シャワー室という一所でなにかを飲み込んだように。
銃で人を撃つ事への罪悪感を捨てたように。
主導権を握る者いじめっ子・卯浪が導く事を苦々しく思いながら止められなかったように。

そうまでして、未来に、友達を導きながら生きてきた。

けれど、目指してきた未来は、唯一の方向性は、そんなに素晴らしいものではなかった。
そして「自分で全て決める」や、混合との衝突を経て「誰かを導く事リーダーとしての仕事」はいずれ否定されるものとなった。

だから未来に来てからの安居は、真夜中に夢遊病で草原や海岸を歩き回っていた。
茂、幼馴染という家族ホームのような関係に安心していたこと、甘えていたこと、ごめんもありがとうも言えなかったことを後悔し続けた。

茂と言うゴールが見付からないから、歩き続ける。
要先輩という「正解ゴール」を教えてくれる人が居ないから、自分を止められない。

まるで草原を彷徨っていた端午たち……

源五郎に介錯されるまで怯え苦しみ続けた狂犬病の動物のように、ずっと歩き続ける。


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某コピペのパロディ。

要「自分で考えろには五種類ある。「お前なら自分で調べ考えた方がいいはずだ」の自分で考えろ、「教えるのがめんどくさい」の自分で考えろ、「俺はよく知らない」の自分で考えろ、「なんだかよく分からないが自分で考えろと言われて育ってきたしお前もつらい思いをすべきだ」の自分で考えろ、あともうひとつは自分で考えろ。」

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白黒はっきりつけられない。
殺さぬように忘れぬように、ずっと引きずり続ける。

半分白髪、半分黒髪の安居は、きっとその象徴。

16巻の黒安居と白安居の脳内裁判。
これはつよさとよわさの戦いとも言えるし、
若さと老いの象徴、自己責任と他者依存の問題でもある。
白黒はっきりつけるという言い方を借りるなら、
黒(検事)と白(弁護)の闘いでもある。

司法プライドという家」「弁護まもるという家」の、喰らい合いでもある。
「調和」「自分以外」の為の潜在意識と、「生存本能」の為の意識の闘いでもある。

家がない安居には、第一話で「僕らに帰る家はない」と考えた安居には、
その拠り所スリコミしかない。間の灰色がない、カテゴリーがあまりに少ない。
日のあたる道や、陰の中しか通れないならば、出来る事は限られている。
…安居の出来る事の中に、平和的な解決手段はとてつもなく限られていた。

********************

「ゴールは、どこなんでしょう」

ゴールは、決着の場。白黒はっきりつけることを迫られる場。
ある意味での家、過去の安居達にとっての「未来」のような拠り所。

だけどその答えは、「どこでもない」から、「自分達で決める」ものなのかもしれない。

誰かのせいにしたくないしできない安居に、茂は自分のことは自分で背負うと言った。
涼は安居の隣で一緒に背負おうとした。時に代わりに罪を犯そうとしながらも。

涼がかつての茂の決断を、ロープを断つことを決めたのが茂だということを告げた時安居は、墓場まで秘密を持っていくことをやめて、嵐に「花を俺達が殺した」と言った。

自分で全て決める事をやめ、
「俺達には逃げ出せるだけの力がもともとあった」から、
「今もメーデーを出すだけの力がある」と思ったんだろう。

安居が心を休める事が出来たのは、夢遊病徘徊をやめたのは、
世間に見捨てられ、世間を見捨てた夏Bに出会ってから。
「教育」や「世間(秋・混合)」が絶対正義ではないと分かってから。
その中で安居は平均台の下に、「言うな」の外に踏み出すことを決められたのかもしれない。


ただし、自分で決めなければいけない、と自分で決めていい、は似ているようで違っている。


嵐の「逃げられたんです」はきっと、
「あなたには逃げる力がある。それを生かし切れていないだけで」ということなんじゃないか。
「拠り所に依存しすぎないで、周囲にある伸ばされた手を見てほしい」ということなんじゃないか。


そして、
守る側だけでなくて、守られる側にもう一度なってもいいんだよという言葉かもしれない。

分からなかったら、聴いてもいいのだと、囚われていても手を伸ばすことは出来るのだと、一歩踏み出すことはできるのだという言葉かもしれない。

記憶や経験・ノウハウが「古い」のであれば、捨てないで、一緒に育てていこうというものかもしれない。



日本ではプライドは捨てるもの。速く効率良く走るには、捨てなければいけない重りがある。
それは自分のプライドだったり、味方だったり、時に人としての倫理だったりする。
欧米ではプライドは飲み込むもの。無駄にしない為に、後後活かす為に食らうものがある。
それは泥水や根だったり他者の犠牲だったり、己の感情だったり、未来に抱く夢だったりする。

けれど、共に背負う人が居るのなら、共に飲み込む人が居るのならば、プライドを捨てても生きられる。



……残念ながら、
手を握ったって振りほどかれることはあるけど。
手を握って頼り過ぎると洗脳されたり、従うことしかできなかったり、
手を握り過ぎて互いに自由が効かなくて共倒れになったりすることもあるけれど、
それでも一歩踏み出すことの鎖だけはなくなった。

監禁部屋ホーム/ルームから出ようとする度に電流ショックを受けて出られなくなった犬ではなくなったのだろう。

信じながら、歩き出すことができるようになったのだろう。



だから、一枚絵の中の安居はやっと笑えるようになった。24巻ぶりに笑えた。



「ただいま」と「いってきます」を言えるようになった。





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最終更新日  2017.02.18 02:41:16
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