カテゴリ:デバイス
最近、このブログで、電子書籍について、あまり取り上げていない。
様々な情報は見てはいるのだが、正直、日本の電子書籍市場については、様々な立場の会社が、生々しいビジネスの主導権争いをしている最中で、情勢が混沌としていて、何か明確なことを言える状況にないし、技術的にはあまり面白い話がないからだ。 今回は、久々に電子書籍関係の話題なのだが、ちょっと違った視点で、技術的な面から興味を持っていることについて、分析してみたい。 電子書籍リーダーというと、これまで、Kindleのようにモノクロ電子ペーパーを採用したものがいいのか、iPadのようにカラー液晶を採用したものがいいのか、議論が分かれており、実際に、市場でも、当面、どちらかに決着がつく気配がない。 それは、両社とも、強みと欠点を持っているからで、目的よって、どっちがいいかは人次第のところがあるからだ。 例えば、電子ペーパーは、 ・文字が読みやすく、目が疲れにくい ・書き換え時にしか電力を消費しないため、本を読むだけなら週に1回の充電でも間に合うほど、省電力 といった良さはある一方で、 ・着々と改善はされているが、原理的に表示の書き換え速度が液晶より遅い ・カラー化が難しく、不可能ではないが、現状、液晶より高価で画質が悪い ・原理的に動画再生などは不可能 ・基本的に反射型なので、暗い場所では見えない(フロントライト等である程度カバーは可能) という弱点を抱えている。一方、液晶ディスプレイは、 ・ページ切り替えや、ズーム、スクロールなどの操作に対する応答性がよく、使い勝手がよい ・カラー表示の画質がよく、写真の表示も美しく表示されるため、カラフルな雑誌の表示に向く ・サブピクセル処理や豊富な諧調を利用したグレースケール処理により、実質的な文字の解像度を上げることができるため、新聞のような細かな文書の表示が得意 ・動画やアニメーションのマルチメディア再生が得意で、電子書籍の応用範囲を拡大するようなアプリケーションに使える ・バックライトがあるので、暗い場所でも、読みやすい といったメリットがある一方で、 ・消費電力が大きく、通常の使い方で、毎日の充電が必要どころか、ずっと本を読んでいたら、一日持たない可能性が高い ・バックライト液晶は、長時間活字を読むには、目の疲労が大きい ・また、電子ペーパーと逆で、屋外などの明るい場所では、画面が見えなくなる といった弱点があり、それぞれ一長一短で、なかなか勝敗の決着はつきそうにないのだ。 そんなとき、今年のCEATEC2010の日立ブースで、MEMSシャッター方式ディスプレイという新しいディスプレイパネルの量産試作を見て、衝撃を受けた。 日立ディスプレイズ、MEMS採用の新ディスプレイ -液晶より明るく、低消費電力。量産試作を発表 MEMSというのは、Micro Electro Mechanical Systemsの略で、Wikipediaによると、 機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイスを指す。とのこと。 まず、従来の液晶パネル工場のプロセスを使いながら、ガラス基板の上に、微細な可動式のシャッターを大量に組み立て、それがちゃんと動くというだけでも、「どうやって作るのだろう?」とワクワクしてしまうのは、私だけだろうか? デモでは、2.5インチのQVGAということで、携帯電話のようなデバイスを想定し、動画を表示していた。 しかし、私が衝撃を受けたのは、携帯電話用のディスプレイとしてではない。 これは、ひょっとしたら電子書籍リーダーに、革命を起こすかもしれないと思ったのだ。 前置きだけで長くなってしまった。 MEMSシャッター方式ディスプレイの、どこが優れているのかについては、改めて、続きを書きたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年11月14日 01時06分24秒
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