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2024年03月07日
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カテゴリ:科学本
「物質のすべては光 現代物理学が明かす、力と質量の起源」フランク・ウィルチェック(吉田三知世訳)(早川書房)

だいぶ間が開いちゃったけど続きです。

P302 まず「第3章 アインシュタインの第二法則」に関連した「補遺A 粒子は質量を、世界はエネルギーを持っている」から。運動する物体についての質量とエネルギーの関係式はE=mc2/(1-v2/c2)1/2で与えられるが、ここからある物体が加速され、vが変化するとき、mは変化しないがEが変化すると解釈できる。これは第3章での「エネルギーは保存されるが、質量は保存されない」という話と矛盾する。「エネルギーの保存は、系に対して成り立つのであって、個々の物体に対して成り立つのではない。いくつもの物体からなる系の総エネルギーには、運動のエネルギーと、物体どうしの相互作用を反映する「ボテンシャル・エネルギー」の項との両方が含まれる。(中略)孤立した物体の速度は一定だ。これは、ニュートンの運動の第一法則である。(中略)一つの物体が孤立しているとき、それはそれ一個だけで系をなしていると見なされる。なので、その物体のエネルギーは保存されなければならず、したがって、先の方程式から、確かにそうなっている。逆に、物体の速度が変化するとき、その変化自体が、その物体は孤立していないというしるしである。何かほかの物体が作用を及ぼし、速度を変化させているはずだ。ある物体が別の物体に及ぼす作用は、一般的に、その二つの物体のあいだでエネルギーを移動させる。保存されるのは総エネルギーだけで、個々の物体のエネルギーを別々にとりあげたとき、それらは保存しない。」当たり前のことなんだけど、ここを読んで納得がいった。さらにこの考え方はクォークとグルーオンから陽子を作るときにも参考になる。「静止している一個の陽子は、相互作用しているクォークとグルーオンの複雑な系である。個々のクォークとグルーオンは、ものすごく小さな質量しか持っていない。だが、だからといって、系全体がエネルギーを持つことが禁じられるわけではない。(中略)Eは、系全体-すなわち、陽子-が孤立している限り、時間の経過のなかで保存される。あるいは、孤立した陽子を、ブラックボックス、すなわち、質量mをもった「物体」と見なすこともできる。」粒子の「質量」が何なのかを深く考えるときにこのように考えることが重要なんだね。

P116 「第8章 グリッド(エーテルは不滅だ)」から。「グリッド」は著者の造語だと思うが、「エーテル」には余計な意味がついているし、「時空」には「空っぽ」の意味があるのでイメージと違うということでこのように呼ぶらしい。「世界は何でできているのだろう」という質問に対する、現時点での現代物理学が提供する回答がここに記されている(以下、原文ママ、「現実」には「リアリティー」とルビが振ってある)。

・そこからほかのすべてが形成される、物理的現実の第一の構成要素が、時空を満たしている。

・すべての断片、すなわち、時空を最小単位まで分解したときのすべての構成要素は、ほかのすべての断片と共通する基本的性質を持つ。

・現実の第一の構成要素は、量子活動を盛んに行なっている。量子活動には、特殊な性質がある。すなわち、自発的であり、かつ予測不能であるということだ。しかも、量子活動を観察するためには、それを乱さざるを得ない。

・現実の第一の構成要素は、また、長期にわたって存続するさまざまな物質的成分を含む。これらの物質的成分があるため、宇宙は、多層構造を持った、多色の超伝導体となる。

・現実の第一の構成要素は、時空を堅固なものとし、重力を生み出す、計量場を含んでいる。

・現実の第一の構成要素は、普遍的な密度を持ち、質量を持っている。

P121 P119から始まる「エーテル概史」は、そこだけで読み応えのある部分。ニュートンが「遠隔作用」によって「空間を空っぽにしてしまったこと」を皮肉って、ヴォルテールがこう言ったという。「ロンドンにやってきたフランス人は、ほかのあらゆるものと同様、哲学も大きく変わってしまったことに気づくだろう。出発したとき世界は充溢していたのに、今見ると真空になっているのだ。」著者によれば、充溢(プレヌム)は、延長とその運動に基礎を置くデカルトが、その帰結として「近接作用」を導入せねばならなかったために宇宙を満たした「目に見えない物質」のこと。

P125 「だとしたら、アインシュタインがやっきになって、自分はその逆の立場だと主張したのはどうしてだろう?たしかに彼は、ニュートンの法則に従う粒子でできた、力学的なエーテルの概念を弱体化させた(中略)。だが、アインシュタインの新理論は、空間を満たしている場を撲滅したどころか、そのような場の地位を向せたのであった。彼は、運動する観察者からは違って見えるエーテルという概念は間違っが、一定の速度で互いに相対的に運動している観察者たちからは同じに見えるという修正されたエーテルは、特殊相対性理論のための自然な設定なのだという点を、もっと正当に強調してよかったのではないだろうか(と、わたしは常々思っている)。」ここで言っているのは、特殊相対性理論がマクスウェルの場の方程式がその基盤にあるということ。

P128 「1909年までには(中略)、アインシュタインは、マクスウェルの方程式は光の深い現実性を示しているとは考えなくなっていたのだ。彼は、場それ自体が現実として存在するとは考えていなかった。場は、特異点の近くに小さな塊として集中しているのである。アインシュタインのこのような考え方は、もちろん、光は離散的な単位として-今日で言う光子として―出現するという彼の立場に強く結びついていた。」P129では話が一般相対性理論に移り、計量場を考案しつつも電磁エーテルは受け入れられなかったアインシュタインの話が続く。さらにP131ではファインマン・ダイアグラムによって場の概念を回避できると考えていたファインマンの話になる。「自分が発見したものが何かを受け入れる」ことの難しさがここに現れているのだ。

P136 アインシュタインもファインマンも「粒子説」に戻ろうとしていたのだが、それは「場はそれ自体独立して存在しているという確固たる証拠」に乏しかったからだと言う。「図8.2(註:特殊相対性理論が場の概念を導くという興味深い図)を巡る議論のなかで、場は便利だということをわたしは論証した。だがこれは、場が究極の現実に不可欠な内容だというのとはまったく違う。」

P138 「ファインマンはというと、彼は、自分の考案した量子電磁力学の数学を構築しようとしていた最中に、便宜的に導入したはずの場が、それ自体独立して存在するものになっているのに気づいたときに、諦めてしまった。この数学と、実験事実の両方から、図8・3に示すような種類の真空偏極(訳注:つまり仮想粒子反粒子対の生成)による修正を電磁プロセスに加えざるを得ないと気づいたとき(中略)、空間を空っぽにしようという自分の計画に自信がなくなってしまったのだと、ファインマンはわたしに語った。」

P140 「物理学者たちは、これらの物質エーテルを普通、「凝縮体」と呼んでいる。物質エーテルは、朝露のように、あるいは、すべてを包む霧が、目には見えないが湿気を含んだ空気から凝結するように、空虚な空間から自発的に凝縮する、という言い方をしてもいいだろう。」この比喩がエーテル、あるいは著者のグリッドをイメージするのに助けになった。

P147 「力を運ぶ粒子にどうやって質量を持たせればいいかという手本として自然が示してくれているのは超伝導だ。というのも、超伝導体の内部では光子が質量を持っているからである。(中略)光子は電磁を移動する擾乱である。超伝導体の内部では、電子は電磁場に激しく応答する。電子は平衡を取り戻そうとして必死にがんばり、場の運動に対して、それを引っ張って邪魔するような作用を及

ぼす。したがって、超伝導体のなかにいる光子はいつもの光速では運動できず、もっとゆっくりと動かざるを得ない。まるで慣性を獲得したかのようだ。方程式をじっくり調べてみると、超伝導体のなかで速度を落とした光子は、ほんとうの質量を持っている粒子と同じ運動方程式に従うことがわかる。もしもあなたが生まれつき超伝導体のなかで暮らしている生物だったとしたら、あなたが見る光子

は質量を持った粒子であるはずだ。」

第8章は本当に面白い。まだまだ続くので一回ここで切ろう。






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最終更新日  2024年03月07日 11時01分15秒
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