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2015.01.13
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カテゴリ:本・読書
元旦に、司馬遼太郎の『菜の花の沖』を読み終えた。

本棚にある司馬さんの本を数えたら、この6巻でがちょうど50冊になっていた。

『菜の花の沖』を読むきっかけは、司馬さんの講演の言葉を何かで読んだからだ。

「英知と良心と勇気を、偉さの尺度とした場合、江戸時代で一番偉いとした人は誰か。『菜の花の沖』の主人公、高田屋嘉兵衛である。それも二番目が思いつかないくらい偉い」

と語っている。

司馬さんが言う江戸時代で一番とは、どんなに凄い人なのか。知りたい!

それまで私の頭では、高田屋嘉兵衛と大黒屋光太夫がごっちゃになっていて、どちらも漂流民でロシアに行った人といういい加減なものだった。

高田屋嘉兵衛は漂流民ではなく、拉致されたのであった。

淡路島の貧しい家に生まれた嘉兵衛が、小さな漁村でいじめられながら育ち、商売へと目覚めて行く様子や、交渉相手のある商売と、船を使って荒海という自然を相手に行動する様子が、1巻~4巻まで長く綴られているので、面白いと思える部分になかなかたどり着かない。

読み終えてわかったことは、嘉兵衛がいかにしてそのような人間に成長して行ったのか、過程を知る必要があったということだ。

函館という港町が、淡路生まれの嘉兵衛が開発した所だったこと、北海道に最初に関西人たちを、開拓移民として連れて行ったのも嘉兵衛だったことを、これを読むまで知らなかった。

蝦夷交易ルートを作るため、国後・択捉までも航路開発に挑戦してゆく勇気は、当時の日本では嘉兵衛しかいなかった。

しかし、ロシアのゴローニン艦長を拘束した日本への報復として、航海中の嘉兵衛がロシア艦船に捕まってしまい、酷寒のカムチャッカまで連れて行かれてしまう。

現在まで続く北方領土問題も見えてくる。

敵国の艦長リコルドと寝食を共にし、コミュニケーション能力を発揮する嘉兵衛。

鎖国の中、ロシアとの外交問題を解決した英知に、高田屋嘉兵衛という人間の大きさを見せつけられる。

江戸時代に、このような重要な人材がいたことに、ただただ感心するばかりだ。

外交問題は国と国の問題であるが、人間と人間の大きな問題である。自国の利益だけを要求しても、上手くゆくはずがない。

言葉の通じない相手国に対して、無礼のない外交をするのはとても難しい。

武士でもない無学の商人が、ロシア相手に果敢に良心を持って英知と勇気で対峙してゆく姿に、頭が下がる思いだ。

そして、松前藩という士族たちのレベルの低さに、「武士」と呼ぶにふさわしくない卑劣な日本人たちがいたことも知る。




相変わらず無知をブログにさらす私は、途中大きな間違いを起こしたことを、恥を忍んで記す。

5巻目でようやく面白くなって来た展開に、一気にこの巻を読み進めていたら、(完)という文字が・・・。

    ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!

なんと、なんと、それは5巻ではなく、6巻目の本だった。

    ウワァァ-----。゚(゚´Д`゚)゚。-----ン!!!!   なんという愚かなことを。

4・5・6巻を同時に買い、未読のものは本屋のカバーをつけたままにしてある。

確かに読んでいる時に、あれ? どっかを読み飛ばしたかな、という思いは数度あった。

しかし、物語が極端にわからないという症状ではない。ちゃんと繋がっている。

だからどんどん読み進めて行ったわけで。

読んでしまったものはしかたない。(;>_<;)

自分の愚かさに落ち込みながら、すぐに5巻の目次を見てみると、「林蔵、高田屋雑記、ロシア事情、続・ロシア事情 レザノフ記、カラフト記、暴走記、ゴローニン、嘉兵衛船」となっている。

読んでみると、どの部分も高田屋嘉兵衛の動きはなく、歴史解説のようになっている。

当時のロシア事情や、江戸時代の事情など、ほとんど歴史の勉強のような1冊である。

司馬遼太郎の「蛇足だが・・・」がまるまる1冊になっていると思える。

つまり、物語に動きがない1冊だ。だから6巻へ飛んでも意味が通じたのだ。

蛇足は蛇足でとてもためになるし。

その一つは、明治になって、帝政ロシアの一青年が嘉兵衛に魅せられて、日本に骨をうずめたいとやって来たというのである。

あの、東京神田にあるニコライ堂を建てた人物であった。

大学時代にゴローニンの『日本幽囚記』を読み、そこに登場する嘉兵衛に魅了され感動し、生涯の目標を日本に定めたという。

お茶の水に行くたびに、あのニコライ堂の建物がなぜここにあるのか気にはなっていたが、詳細は知らなかった。

嘉兵衛に魅了されたロシア人は、今もはっきりとその証拠を残していた。

高田屋嘉兵衛という人間の器の大きさと、良心と英知と勇気を、日本人はもっと知るべき人だと思った。


『菜の花の沖』を読みながら、新撰組の『燃えよ剣』も読んでいたのであるが、20年後に執筆された前者は、後者を大きくしのぐ書き方で、司馬さんの筆質が高く飛躍していることがよくわかった。







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最終更新日  2015.01.13 12:35:46
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