『ホンモノの日本語を話していますか?』
アラサウンドフォーティ(40歳前後の女性)を「アラフォー」とか言うらしいが、私には全然ピンと来ないし、使いたくない言葉である。日本語より英語の方が高級な進んだ言葉だと思い込んでいる人が多いのかな。 日本語学者 金田一春彦英語で「現在の大統領は何代目か?」という質問はできないそうだ。「何代目」という言葉がないから、「リンカーンは10代目の大統領である。それでは今の大統領はいかが?」と聞かないと何代目という言葉が出てこないという。「何曜日」という言葉もないそうだ。つまり、日本語はとても便利な素晴しい点がいっぱいあるということが書いてある本である。金田一さんは、フランス人の神父さんから「日本人は語学の天才ですね」と言われて驚いたそうだ。「私なんかろくに英語をしゃべることができませんよ」と言うと、「それはちょっと違います。日本人はいろんな人と違った言葉で話すでしょう。 ヨーロッパだったら3ヶ国語くらい言葉を使いわけているのと同じです」と言われたそうだ。確かに、相手に合わせて言葉の使い方を自由自在に言い変えることができる。同郷の人となら方言で、他県の人となら標準語で、上司やお客さまとなら謙譲語や尊敬語で。やっぱり私たちは卑下する必要なんかないのです。自信と誇りをもちましょう。日本語は、たった112のひらがな「あいうえを・・・・・りゃりゅりょ」まで覚えれば、小学1年生でも思っていることをすべて表現できるという簡単な言葉だ。数字は1~10まで発音できれば、10に1をたせば11に、10に2をたせば12・・・・・と簡単に覚えられる。それに比べてドイツ語もフランス語もアラビア語も、面倒なため計算すると頭の中が混乱するという。特にインド語はもっと大変で、1~100まで単語がバラバラなので、93まで覚えても94を何というか教わらなければわからないそうだ。日本人が瞬時にお釣りの計算ができてしまうのは、よその国と比較してみると、日本語が実に合理的にできていたということである。そう思うと、日本語を考えた人というのは改めて凄いと思う。日本では小学2年生で九九を覚え、すぐに計算してしまうが、終戦直後、アメリカの教育者たちが日本のその授業風景を見て、「あなた方は何という残酷なことを子どもに強いるんだ。 こんな難しいことを小さい子供にやらせようとするから、 日本人は頭が悪くなって、戦争にも負けてしまうのですよ」 と言われたという。(笑)日本人ははっきりものを言わないとか、何を考えているかわからないとか、何かとナンクセをつけられるが、金田一さん曰く、日本人は察しのいい民族だという。「このドア使用禁止」と書かれて貼り紙を見たアメリカ人が、「これじゃあどうしたらいいかわからない」と言ったそうだ。ではアメリカではどう書くのかと聞いたところ、「もう一つのドアをお使いください」と書くんだという。日本人ならそれを読んで黙って違うドアを探すが、アメリカ人はこのように書かないとどうしていいかわからないらしい。そういえば以前アメリカで、洗った猫を電子レンジに入れて乾かそうとした人が、「猫が死んだのはレンジに猫を入れて乾かしてはいけないと書いていないからだ」として、レンジ会社を訴えたという話は有名であるが、そういうことなんでね。色々と日本語について書かれた本だが、外国との比較が面白い。ハワイ大学で日本文学を教えていた時、『金色夜叉』の熱海の海岸での貫一、お宮の話をしたら、「日本では、松の木の下では男が女を蹴ってもいい、 という考えがあるのですか?」と質問されたという。(笑)工場視察に来た中国人は「油断一秒、怪我一生」という看板を見て、「もしも一秒でも油を絶やすことがあれば、我をとがめること一生であれ」と解釈したそうだ。そして、こういう心構えだから日本は世界に名だたる工業国になったのだと納得して帰国したそうだ。(笑)日本語の特徴、日本人の性質、語源など、日本語の個性がたっぷり書かれている。