緊迫した順位争いこそが、経験の少ないチームを育てる。残り38試合。どれだけ長くても、あと2カ月足らず。初めて体感する負けられない日々の連続こそが、若手選手の能力を飛躍的に向上させる。それをだれよりも痛感するのは、他ならぬ山崎武だ。
球団創立5年目。ようやくこの時期まで順位争いができる。「やっぱり緊張感があるところでやりたいよね。今はイーグルスが強くなる課程だから。何とかクライマックスシリーズには出たいからさ」。自分が43発打っても、エースが21勝しても届かなかったAクラス。春先にいくら首位を独走しても、この時期に蚊帳の外では何の意味もない。「若い選手にしたら、いい経験なんじゃない?ドキドキしてさ」とほほ笑んだ。
優勝を経験したメンバーは、ごくわずか。楽天誕生後に入団した選手は、8月末の上位争いすら経験がない。それだけにプレッシャーのかかる試合を1つクリアすることで、少しずつ自信を深めていく。40歳の大ベテランでさえ「自信のとなりに不安があってさ。心が数秒ごとにコロコロ変わるんだよ」と、苦しくもやりがいのある日々を思い出す。重圧をはねのけ本来のプレーができるか。押しつぶされて自分を失うか。乗り越えた先にだけ、歓喜のゴールが待っている。
【小松正明】
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