カテゴリ:♪本の覚え書き♪
讃岐国、丸海藩――。この地に幕府の罪人・加賀殿が流されてきた。以来、加賀殿の所業をなぞるかのように毒死や怪異が頻発。そして、加賀殿幽閉屋敷に下女として住み込むことになった少女ほう。無垢な少女と、悪霊と恐れられた男の魂の触れ合いを描く渾身の長編大作。 宮部さんお得意の味のある時代小説でした。 待ちに待っていた宮部さんの新作というだけで何の予備知識もなく読んだので、最初のうちは謎解きや推理仕立てにはなってこないなぁと変な勘繰りが邪魔をしていたことと、私の読みの浅さから誰を主人公として描かれているのかがわからず、いろいろな疑問ばかりが浮かんで読んでいるという感じでした。そして上巻の終わり近くとなって『ほう』という名の女の子のことを語る物語だとやっと気づいた私でした。 下巻に入り、世の中というものや昔の日本という中で、情報や知識よりも上に立つ人によって動かされている、導かれているということの良さと悪さが伝わってきます。 昔のことを語ることによって今を比べて見せる、語る。宮部さんのうまさだなぁと思いました。 恵まれない境遇に生まれ「おまえはa阿呆のほうだ」とつけられたその名前。周りに流され続けて丸海へとたどりついた「ほう」はそんな中でもひがむことなくすべてを受け入れて素直に育ちます。 いろいろなねたみ、野望などによる事件。藩を守るため、暮らす人々を守るために示し合わされるいつわり。それらを何かのせいにしなければ生きていけない人々の中で、ほうは唯一の鍵となってゆきます。 読み終えてたしかにいろいろなことができすぎという感はありますが、正しいことを見抜く、和尚によって語られる人というものなどとても考えさせられるよいお話でありました。 そしてやっぱり泣かされるシーンでは涙が止まらず、作者の思うつぼにはまって、これまたあっという間に読み終えてしまう物語なのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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