カテゴリ:♪本の覚え書き♪
この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津(えのきづ)らの推理を超え噂は意外な結末へ。 京極さんの本は、気づいたときにはたくさん出版されていて、気にはなってはいたもののはまってしまいそうな自分が恐くて手をつけずにいた方の一人でした。 ものの見事にはまりました(笑)。 終戦直後の日本的な家系のおどろおどろしい物語というのも、横溝正史の作品を読んでいるようで、なつかしくもありちょっと身構えてもみたりと好印象で読み出しました。 けっこうな長い物語で、内容はというと京極堂の語るものすごい量のウンチクなのですが、飛ばすことなど考えられないくらいにおもしろく読んでしまうものでした。 物語の中で世間的に知られてはいないことを読者に説明しようとする文章はときに嫌気がさしたり飛ばし読みしたくなる部分であることが多いのに、この物語ではひきこまれてしまうくらいに興味深く読めるところがすごいです。 『………心理学は文学の部類さ。共感できる者のみに有効なんだ。科学の産んだ文学だ。』 『………仏教ではすべての執着心を捨てなければならない。…生への執着、子供への愛もしかり…』この辺の小難しそうな神や仏に関するものも京極堂によってそれはそれはわかりやすく語られています。 『………だいたいこの世の中に面白くない本などはない。だから読んだことがない本は大抵面白い。』これまたわたしとしてはうなずけて読めてしまうのです。 『………君も落ち着きのない男だ。挨拶をするならする、座るなら座る、本を見るなら本を見ろ。気が散るじゃないか。』と関口をたしなめるところなどは私が言われているような気さえしてしまうのでした(笑)。 楽しく笑い、軽口を言い合い、同意してはずむ会話ばかりの毎日。時としてただただまじめに語るといのも必要な気がしてくるのでした。 しかし今のこの生活の中でこんな語るような内容も相手もいるわけがなく、この本を読みながら京極堂と関口によって私は満たされていたのかもしれませんねぇ。 物語の中で小さく語られていることが、最後にはすべて何かに結びつき明かされるところは、宮部みゆきさんの本と共通するものを感じました。 う~ん、困った!! またまた古い順に読み進めてみなければ気がすまなくなった作家が現れてしまいました(苦笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 24, 2007 12:05:44 AM
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