カテゴリ:♪本の覚え書き♪
波瀾万丈の小説を書く人が波瀾の人生を送ることはめったにない。アガサ・メアリ・クラリサ・ミラーは1890年9月15日にトーキイ効外のアッシュフィードという家で生まれ、幸福な少女時代と平和な晩年を送り、世界的なベストセラー作家アガサ・クリスティーとして1976年1月12日世を去った。だが、その生涯にはいくつかの謎が残され、その作品群はいまだ尽きせぬ多くの魅力と話題に溢れている。ミステリの女王についてのすべての疑問に答える決定版読本。
上記のような紹介がありましたが、作者自身をはじめアガサクリスティー・ファンクラブでも有名な数藤 康雄さん、そして江戸川乱歩氏に丸谷才一氏などなどによるクリスティーに関する文章がたくさん収められている一冊でした。 興味深かったのは江戸川乱歩氏によるランク付けでした♪ 人気ミステリーを学ぶ上ではずせないということから当時出版されていて手に入るだけ手に入れて読んだようです。その本に記されたクリスティーの著作一覧をあげて、●読んだけれども余り面白くなかったもの ○相当面白かったもの ◎大いに面白かったもの などの印がつけられていました。 一般の芸能は作者が年をとるに従って円熟し、大成し、後の作品ほど優れたものになるのだが本格探偵小説だけは例外で、初期の作品ほど優れ、晩年は気が抜けてくるのが普通である。ドイル然り、ルブラン然り、ヴァン・ダイン然り、クイーン然り、フィルポッツ然り、原則には全く例外がないと考えていた。ところがクリスティーだけは、その逆を行って晩年ほど力の入った優れた作品を書いていたのである。これに気づいたとき、私は驚嘆を禁じ得なかった。この老人は実に驚くべき作家である。 そうなんですよね~。マープルものも遅くなって書かれたものだし。 この本に納められたそれぞれの人のインタビュー物やエッセイなどを読んでの共通点としては ●基本的な英単語、比較的短い文章、比較的短い段落から成り立っている。 これは翻訳に適しているということにも通じるらしいです。 ●登場人物はどの国にもいるような普遍的な人物。 マープルなどは周りを見回すと必ずどこかにいそうなおばさん。 ●暴力、政治、宗教、時事問題、セックスなどが排除された物語。 知識などがなくても読める。読者は読んでいる間醜悪さを忘れ理想郷にひたれる。逃避文学そのもの。 ●すでにあるトリックの巧みな組み合わせとその組み合わせについての独創的技巧。プロットはとても巧である。 つまり私にはぴったりである。ということです(笑)♪ 『ノスタルジーの王国』コリン・ワトスンの文章によると クリスティーの小説が、主として中流階級の、それも中年層だけではない広い読者を楽しませ、読み終わったあとでほかの人にすすめないではいられない気持いさせたのはいったいどこに理由があったのだろうか。 単純明快で肩のこらない文章。プロットは複雑だがよく練られていて退屈しない。物議をかもすような不愉快な題材はことごとく避けられている。それでも、ページを繰るにつれて、人間性に関する極度に単純化された省察が知らず知らずのうちに頭に入ってくるようになっている。読み終わったあと自分が哲学的な人間になったような気がして読者はくすぐったい思いをすることだろう。 ポアロいわく「人生は汽車のようなものですよ、マドモアゼル。とどまることを知りません」 と称されていました。 『クリスマス・ストーリーについて』丸谷才一によると アガサ・クリスティーは新しい現実などにはいささかも関心を示さない。彼女はひたすら伝統的なクリスマス・ストーリーを巧妙に優雅に作り上げる。 クリスティは一年に一冊クリスマスの頃に出版するようになり、クリスマスにはクリスティーをと宣伝されていたようです。このころに生きていたなら私もきっと倣っていたことでしょう♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 27, 2008 06:13:03 PM
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