テーマ:東京オリンピック(611)
カテゴリ:政について
1986年に近代オリンピックの始まったとき、オリンピックの基本精神は、アマチュアリズムとフェアプレーとされた。 だが、近代オリンピックの基礎を築いた創立者、ピエール・ド・クーベルタン男爵は、フリーメーソンに所属し、規律と優生思想の持ち主でもあった。晩年の1936年にヒトラーの手で開催されたベルリン大会について、強さと規律に基づく大会を、後続の大会は規範にするべきだ」と高く評価したとされる。 美名のもとに「邪悪の根」は隠され、育ち、1986年ロサンゼルス大会で、「商業主義」の大輪の花を咲かせた。 蟹瀬誠一:国際ジャーナリスト・外交政策センター理事 2021.7.27 DIAMOND online … (略) … しかし時がたつにつれ、ふたつの世界大戦の影響もあり、政治が大きく影を落とすようになる。 例えば、ミュンヘン大会テロ事件やアフガン戦争中の東西の出場ボイコット合戦だ。ヒトラー政権下ではベルリン大会が露骨な国威発揚に利用された。聖火リレーはこの時から始められ、後日そのルートをドイツ国防軍が侵攻のために使ったという逸話さえある。 オリンピックの「黒い輪」を 受け継いだバッハ会長 最大のターニングポイントは1984年のロサンゼルス大会だろう。財政がひっ迫したIOCは米実業家で商売上手のピーター・ユベロスを大会組織委員長に抜てきし、企業スポンサーを認め、観客を呼べるプロ参加を解禁、人気競技優先し、テレビ放送権料やスポンサー企業から莫大な協賛金を集めたのだ。聖火ランナーまで有料だった。 これを境に平和の祭典は世界最大のショービジネスと化したのである。 当時、私は開会式を取材していた。抜けるような青空だった。ロナルド・レーガン米大統領による開会宣言、ジェット・パックを背負った宇宙飛行士によるスタジアム内の飛行、数え切れないほどのピアノによるラプソディ・イン・ブルーの同時演奏。ハリウッド顔負けの豪華な演出はメモリアル・スタジアムに集まった10万人の観客を魅了した。 しかし、その華々しいスペクタクルはオリンピックが権力と金とクスリにまみれた商業イベントに堕落した虚飾の祭典だったのだ。 ロス五輪は税金を使わず400億円の黒字で終了した。そのため「オリンピックはもうかる」との思惑から立候補都市が急増。過度な招致合戦によるIOC委員に対する接待や賄賂、より派手なパフォーマンスを狙った選手のドーピングなどの問題が表面化した。 そんなオリンピック・ビジネスの頂点に立ってぜいたくざんまいで我が世の春を謳歌(おうか)していたのが国際スポーツの帝王で、国際オリンピック委員会(IOC)会長として21年間君臨したスペインのファン・アントニオ・サマランチだったのである。 彼のそばで甘い汁を吸っていた黒幕がいた。国際サッカー連盟(FIFA)会長であるブラジルのジョアン・アヴェランジェと、オリンピックの花形である陸上競技の世界を操るボス、イタリアのプリモ・ネビオロ国際陸上競技連盟(IF)会長である。彼らはオリンピック・マフィアとさえ呼ばれた。 そんな「黒い輪」をサマランチから受け継いだのがベルギーのジャック・ロゲ会長であり、現在のドイツのトーマス・バッハ会長なのだ。米ワシントン・ポスト紙記者が彼のことをコラムで「ぼったくり男爵」と呼んだのもうなずける。 そんな商業五輪の醜い裏舞台は2人の英国人ジャーナリストによって出版された『The Lords of the Rings(黒い輪)』(1992年)で余すところなく暴露されているから、興味のある方は一読をお勧めする。 ― 引用終り ― 欲望はさらなる欲望を生む。2020年の東京大会で、スポンサーは1業1社の枠組みを外し、重層的なもの(ゴールドパートナー、オフィシャルパートナー、オフィシャルサポーター)となり、世界一の「広告宣伝媒体」として巨大な「集金マシン」の姿をあからさまにした。 オフィシャルパートナーに讀賣新聞、朝日新聞、日経、毎日新聞、オフィシャルサポーターに産業経済新聞社、Google、ヤフーが揃うことで、オリンピックの翼賛報道体制も形づくられた。 経済成長率が低下した日本では、財政規律を超越できる「葵の御紋の印籠」として機能した。オリンピックは公費を結果往来の予算とした。予算の大幅超過は既定路線だ。 制約の少ない予算を投じる行政、広告宣伝費を投じる企業のイベントに収入を得ようとする企業がそろい踏みすることになる。 集金力の源、駆動力は、アスリートの日々の努力と才能。オリンピックに参加すること、優勝することに大きな価値がある限り、彼らはオリンピックと世界選手権から逃げ出すことはできない。 かくして、究極の収奪、搾取システムの原動力が、「平和の祭典」の美名のもと、永久機関のごとく動き続ける。 東京五輪に注ぎ込んだカネは3兆円超 …閉会後に始まる「不明瞭な会計」への大追及 公開日:2021/08/04 06:00 更新日:2021/08/04 06:00 現代ビジネス … (略) … 3兆円分の感動はあっただろうか。招致段階で総額7340億円だった「大会経費」は、コロナ前の段階で1兆3500億円に拡大。さらに1年延期による2940億円の増加分が加わり、現在は1兆6440億円と公式発表されている。 この大会経費とは別に会計検査院が2018年までに1兆6000億円程度の「関連経費」がかかったと報告しており、総額は少なく見積もっても3兆2000億円を超すことになる。
― 引用終り ― 不明朗な会計の全貌が明らかになる前に、設備の維持・運営費の負担が明らかになるのだろう。建設費1569億円の新国立競技場の維持費は、年間24億円。 長野冬季五輪の教訓は活かされなかった。 長野オリンピック施設のその後 【2019年最新版】 開催から20年で明暗が分かれた 2018年9月22日 信州のいいところ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年08月22日 16時00分07秒
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