テーマ:天気・気象(176)
カテゴリ:環境・自然災害
2021年8月14日、気象庁は、最大級の警戒が必要として、佐賀、長崎、福岡、広島の4県に大雨特別警報を発表した。 この4県と島根、岐阜、長野の計7県では、警戒レベルが最高の「5」に当たる「緊急安全確保」が発令された。 この連続豪雨は「大気の川」が大きく影響しているという。 「大気の川」は、巨大な水蒸気の帯で、海洋が温暖化すると、空気中の水蒸気が増え、より大きく、長く持続する大気の川が発生すると推定されている。 複数の線状降水帯生む 2021年8月14日 産経ニュース 西日本を中心に降り続く大雨について、上空に大量の水蒸気が流れ込む「大気の川」と呼ばれる現象が発生していることが、筑波大の釜江陽一助教(気象学)の解析で分かった。人工衛星の解析画像から、大気の川は九州から東北地方南部までを帯状に覆っていることが分かる。線状降水帯を発生させ、広い範囲で記録的な大雨をもたらす危険がある。 大気の川とは、大量の水蒸気が帯状に流れ込む現象で、南西から東へ水蒸気を運び、雨雲を形成する。平成30年に甚大な被害を出した西日本豪雨や昨年の九州北部豪雨でも、大気の川が発生していた。 今年はオホーツク海高気圧の勢力が強く、前線が強まっている影響で、大量の水蒸気が南シナ海や東シナ海方面から日本列島に流れ込んでいる。 今回の大気の川は、長さが約2000キロにおよび、九州から東北地方南部をすっぽりと覆う。上空に大量の水蒸気が集まるため、釜江助教は「大気の川の中では、線状降水帯が複数、発生する可能性がある」と指摘する。 2018年7月の死者が300人を超えた西日本豪雨でも「大気の川」がみられたという。 2020年7月の九州豪雨では、「大気の川」により球磨川が氾濫するなど、大きな被害をもたらした。 【解説】 2019.3.23 researchmap 筑波大学 生命環境系 釜江陽一 平成30年7月豪雨では、西日本を中心とした広い範囲で大雨が降り、洪水・土砂災害によって200人を超える方が亡くなりました。こちらで解説したように、非常に広い範囲で災害が発生した要因として、日本南方の海上から、大量の水蒸気が川のように流れ込む「大気の川」と呼ばれる現象が発生していたことが挙げられます。 地球温暖化の進行によって、このような災害は増えるのでしょうか? 地球温暖化と豪雨の関係については、大気の力学・熱力学的な性質をもとにした理論的研究や、気候モデルを用いた検証が進められています。空気が含むことのできる水蒸気の量(飽和水蒸気量)は、空気の温度が高いほど大きいという性質があります。水蒸気を多く含んだ空気が、上空と地上の間で大きくかき混ぜられ(対流)、積乱雲の発達とともに地上に大量の雨を降らせる(夕立やゲリラ豪雨など)ときの雨量は、空気中に含まれる水蒸気の量が多いほど、多くなることが知られています。これにより、日本を含め、世界中のほとんどの地域では、気温の上昇とともに、大雨になったときの雨量が増えると考えられています。日本に豪雨をもたらす現象として有名な台風は、将来どうなるのか、についての研究も世界中で進められています。では、大気の川は、将来どのように変わるのでしょうか? 将来、大気の川が増えるかについては、欧州や北米では盛んに研究されています。地球温暖化が進行し、空気中に含まれる水蒸気の量が増えると、同じ強さの風が吹いたとき、その風が運ぶ水蒸気の量も増えます。「大気の川」は、水蒸気の流れの強さで定義するため、気温が上がって水蒸気が増えれば、「大気の川」に分類される現象は多くなるのです(熱力学的変化)。 ― 引用終り ― 海洋の温暖化により「大気の川」が活発化することが、南極の氷にとって「正味ではプラス」に働いていることを示唆しているという研究が報告されている。 巨大な水蒸気の帯が氷を補充 2021/4/2 ナショジオ ニュース 南極の上空を流れる「大気の川」が、南極の巨大氷床の消失スピードを大きく左右しているらしいことが最新の研究で明らかになった。南極の氷床消失は世界的な海面上昇につながるため、その変化を正しく見積もる必要がある。今回の研究は、2021年3月2日付で地球物理学の専門誌「Geophysical Research Letters」に発表された。 ― 引用終り ―
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最終更新日
2021年08月24日 06時00分09秒
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