『感染症と文明』3月の読書(6)
『感染症と文明 ー共生への道』
著者 山本太郎
岩波新書 2011年6月21日
新型コロナとヒトが共生できる日は、効果的なワクチンができても短期間に実現するものではなさそうだと知る。
P.15 根絶は根本的な解決策とはなりえない。病原体との共生が必要だ。たとえそれが、理想的な適応を意味するものではなく、私たち人類にとって決して心地よいものでないとしてもー。
P.53 感染症と文明を巡る基本構造
一. 文明が「感染症のゆりかご」として機能した
二. 文明の中で育まれた感染症は、生物学的障壁として文明を保護する役割を担う
三. 文明は、文明の拡大を通して周辺の感染症を取り込み、自らの疾病レパートリーを増大させる
四. 疾病の存在が社会のあり方に影響を与える
P.107 帝国医療・植民地医学
帝国医療:植民地の経営を守りその存続をはかる重要な統治ツールとして、宗主国によって植民地に導入・実践された近代医療
植民地医学:征服側が植民地統治の中で蓄積した医学の体系全般
P.146 開発原病
相当な規模、速度、複雑さを伴う開発によって引き起こされる疾病。
P.178 ウイルスのヒトへの適応段階
第一段階 適応準備段階。家畜や獣のひっかき傷やかみ傷を通して直接感染するが、ヒトからヒトへは感染しない。
第二段階 適応初期段階。ヒトからヒトへ感染する。ただし、感染効率が低いため、やがて流行は終息に向かう。
第三段階 適応後期段階。ヒトへの適応を果たし、定期的な流行を引き起こす。
第四段階 適応段階。もはやヒトのなかでしか存在できない。
最終段階 過剰適応段階。ヒトという種から消えていく。
目 次
プロローグ 島の流行が語ること
第一章
文明は感染症の「ゆりかご」であった
1 狩猟採集社会の感染症
2 疫学的転換
第二章 歴史の中の感染症
1 古代文明の勃興
2 ユーラシア大陸における疾病交換
◆コラム1文明の生態史観
第三章 近代世界システムと感染症
ー旧世界と新世界の遭遇
◆コラム2 伊谷純一郎最晩年の講義
第四章 生態学から見た近代医学
1 帝国医療と植民地医学
2 「感染症の教科書を閉じるときがきた」
◆コラム3 野口英世と井戸泰
第五章 「開発」と感染症
◆コラム4 ツタンカーメン王と鎌状赤血球貧血症
第六章 姿を消した感染症
1 姿を消した感染症
2 新たに出現した感染症
3 ウイルスはどこへ行ったのか
エピローグ 共生への道
付録 麻疹流行の数理
あとがきに代えて
参考文献