ある日どこかで

これ昨年公開だったようですが、全く知りませんでした。
中、高生の頃、くらもちふさこの漫画は大好きでよく読んでいました。漫画を読まなくなって久しいのですが、くらもちふさこの漫画の映画化と言う事で俄然興味を持った作品です。原作は未読。期待と不安が入り混じりながら観たのですが、これが・・・良かったです！


島根県の山間の町、木村町。中学生のそよはここの中学校の2年生。小、中校生合わせて6人しかいない小さな分校だ。そよの他に中学1年生が2人、小学生が3人。男子はそよの弟小6の浩太郎だけだ。ある日、その分校へ東京から男子の転校生がやって来た。そよと同じ中2で、しかもイケメンだ。


田んぼと山、そしてしばらく行くと美しい海に出る、本当に美しく、のどかな町と言うより村。通り過ぎる人は皆顔見知りで、学校では小、中校生が、そして先生達も何でも協力して行う。登下校も誘い合い、待ち合わせて皆で、海へ行くのも皆で。村の事は皆お互いに知っている。窮屈です。しかし、きっと故郷を離れたら、大人になったら、その窮屈さが愛おしくなるのかもしれません。いろんな場面から、そんな先の事までを感じさせられる映画でした。



そよの優しいけど、時に残酷なところ。大沢君のぶっきらぼうだしちょっと意地悪っぽいけど、実はさりげなく優しいところ（これは、くらもち作品の男の子に共通するところだと思います）。この2人が、はじめジャケットが欲しい故にチュウをして、そして本物の恋へと少しずつ変わり、成長していく様子が描かれています。
そよ役の夏帆がを方言だらけで、天然で可愛くて清々しくてスゴクいいです。そして、大沢君役の岡田将生もおそらくくらもちふさこが描く大沢君に近いのではないか、と推察します。

そして、他の子供達もしっかりと個性を持って描かれていて、特に弟の浩太郎の自分以外の唯一の男子大沢を慕う所や姉に対する気遣い、一番ちびっこのさっちゃんの可愛さなんかは、観てるだけで涙が出そうになったくらい。くらもちふさこって、こういう小さい子の描き方も上手いと思うのだけど、そういう場面を観たりして感じたのは、きっとこの映画は原作に忠実なんじゃないかと言う事でした。再度言いますが、原作は読んでないのですけどね。

初めてのチュウがそんな理由？と最近の子は田舎の子もこんなか！？とドキッとしますが、その後の東京への修学旅行や、2人の日常の積み重ねと、少しづつ育まれそうな恋の過程がいいのです。そして卒業式を迎え、教室でのドキドキ感（ちょっと期待はずれではあったけど）。なんだかとても懐かしいこの空気。都会でも、田舎で育っても、間違いなく誰にでもあったこの年頃の独特の空気が感じられて、その頃が懐かしくて、愛おしくてたまらなくなりました。



日本の原風景とも言えそうな美しい村で、都会とは関係なく生きている村人。特にこれと言った出来事があるわけでなく、ごくごく普通の日常。
村の大人たちもいろいろあるんだろうけど、そんな事をほのかに匂わせながら、そよ達の青春を心地よく観る事が出来る、何だか泣けてきそうになる、不思議な作品でした。
ゆっくりとした気持ちで、のんびりと鑑賞したい映画です。全体の音楽も、そしてエンドに流れるくるりの曲もとてもいいです。

是非原作を読みたい。そして、他の懐かしいくらもち作品を又読みたくなりました。


2007年
監督：山下敦弘
脚本：渡辺あや
原作：くらもちふさこ　『天然コケッコー』
音楽：レイ・ハラカミ
テーマ曲：くるり　「言葉はさんかく　こころは四角」
出演：夏帆、岡田将生、柳英里沙、藤村聖子、森下翔悟、本間るい、宮澤砂耶、佐藤浩市、夏川結衣、斉藤暁　他




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