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2006年10月06日
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朝、9時半に自宅の電話が鳴りました。

また心拍数が不安定になってきたとのこと。
いままでと違って、午前中からの呼び出しです。

これまでの経緯から、すでに
覚悟はできていました。

しかし、この日は台風の影響から、
大荒れの天気。
雨も風もすごいので、タクシーを呼ぼうとしても、
電話自体がつながりません。

しかたがないので、実家の父に連絡して、
車で迎えに来てもらいました。

ダンナさんの携帯に連絡を入れると、
留守番電話になっていました。
どうやら地下鉄で移動中のようです。

しばらくして、ダンナさんから
電話がかかってきました。

もしかしたらまた安定するかもしれないけど、と
言ってはみたものの、状況はけっして
よくないのは想像がつきます。

連日の面会で、仕事も立て込んでいます。
どうするのかな、と思ったら、ダンナさんは
出勤途中ながら病院に行くと言いました。



雨のせいで、道が混雑していたらしく、
車で送ってもらったハハよりも早く、
ダンナさんのほうが病院に到着していました。

ハハがNICUに着いたのは午前11時。
午後4時までは個室を使わせてもらえる
ことになっていて、ダンナさんは先に
部屋で待機していました。

望実ちゃんの心拍数は40台になっていました。

お顔を見れば、とても穏やかです。
いままであまり開いていなかった右目も、
今日はぱっちりとこちらを向いています。

もしかすると、心臓の動きがゆっくりになって、
もうどこも痛くないのかもしれません。

ときどき、昨日ほどではないけれど、
目を閉じて、身動きはしています。

ゆっくりながらも心臓は安定しているようで、
急激に心拍数が下がるような傾向はありません。

我々はお互いに話をしたり、望実ちゃんに
話しかけたり、一冊ずつ、うさこちゃんの
絵本をダンナさんと読んであげたり、
ハハはちょっと泣いたりして、時間を過ごしました。



ダンナさんと交代で昼食を摂り、
車で病院まで送ってもらった実父には、
これからいつまで時間がかかるか分からないため、
いったん実家に帰ってもらうことにしました。

個室を使わせてもらっているあいだ、
望実ちゃんはずっと目を開けていました。

だんだんと身体を動かすことも少なくなりました。

人間とは、大きなショックを受けると、
心を守るために眠りに陥る、という話を
聞いたことがあります。

妙に眠くなるのです。

わたしたちは時折、個室のソファに寄りかかり、
仮眠を取りながら、時を過ごしました。

担当のスタッフさんが、そのあいだ、
たくさん望実ちゃんの写真を撮ってくれました。



午後4時になり、個室が使える時間が終わり、
いままでのNICUの部屋に戻ることになりました。

元の位置に望実ちゃんの保育器を移動してもらい、
長い面会時間に気を遣ってくれたスタッフさんが
授乳用のソファを用意してくれました。

NICUに戻ったとたん、望実ちゃんの心拍数は
じりじりと下がりはじめ、30台になりました。

そのとき、わたしは気づきました。
望実ちゃんに触れても、まったく
反応がないのです。

以前は、頭に触れたときには
首をすくませていました。

昨日あたりから、その反応が鈍くなり、
弱ってきているのを実感していたのですが、
目の回りや鼻を触ると、嫌がる素振りは
見せていたのでした。

それが、目の回りを触ったり、
眉間を撫でたりしても、もうなんの
反応もありません。

いつの間にか意識を失っているのだ、と悟りました。

ハハはダンナさんに、もう望実ちゃんは
意識がないんだと告げました。
ダンナさんも顔を触ってみて、
望実ちゃんの反応がないことを確認しました。

午後5時半のことでした。



担当の先生とスタッフさんがやってきて、
わたしたちに言いました。

「望実ちゃん、抱っこしてみますか」

わたしが、はい、と答えると、
先生たちは呼吸器を稼働させたまま、
望実ちゃんを保育器から出しました。

ソファに座ったハハは楽な体勢をとり、
授乳用クッションを膝に置いて、
直接、胸に望実ちゃんを抱きました。

想像以上にずっしりと重く、
火照るくらいのぬくもりがありました。



ときに記念写真を撮ったりしながら、
ゆったりと望実ちゃんと時間を過ごしました。

しかし、望実ちゃんを見ている時間が長いのか、
モニターの数値を眺めている時間が長いのか、
わからないほど、心拍の数値が気になります。

ふと望実ちゃんの目を見ました。
開いたままの眼。

白目が見えない、漆黒の瞳。

まっすぐに見つめる目線には、
昼までにはあった、光沢のある輝きが失われ、
ぼんやりとした照明の反射が認められるだけ。

よく見ると、涙が乾いているのです。
もう、眼が乾いて、まぶたが閉じない…、

こちらが閉じさせようとしても、
すでに眼が乾いていて、まぶたが
動かせないことに気づきました。

ふいに激しい悲しみに襲われました。
涙があふれました。

自発では呼吸していないでしょう。
いつ消えるかもわからない生命。
いまの鼓動は、強制的に呼吸器で
維持されているのでしょう。

心臓の鼓動は1分間に30回を切りました。

ダンナさんと抱っこを交代しました。
望実ちゃんの身体を動かすので、
一時的に心拍数は上がりますが、
落ち着くとどんどん落ちていきます。

心拍のモニターでは、数値が0になったり、
10台にもどったりしはじめました。

抱っこしているダンナさんの横で、
ハハは望実ちゃんに語りかけ続けました。

感謝の気持ちを伝えていました。



先生とスタッフさんは、両親である
わたしたちにカンガルー抱っこを勧めました。

裸の望実ちゃんと、直接肌を触れあう
抱き方をするのです。

服をたくしあげ、おなかのあたりに
望実ちゃんを抱いて、肌をつけると、
想像以上にぬくもりが伝わってきます。

モニターでは数値を拾えず、0になっていますが、
こうして肌をくっつけていると、まだ
心臓が動いているのがわかります。

だけど、望実ちゃんの眼からは、
意志の光は消え失せています。

だんだんと体温が下がってきたようです。
触ると、頭が冷たくなっていました。

ダンナさんと交代し、しばらくたってから
ふたたびハハと交代して、十数分後。

先生がやってきて、ペンライトを取り出しました。

うっすらと開いた、黒い目に、
先生は光を当てました。

「ちいさいからねぇ…」と言いました。

ライトは目の中で反射して、
白色がかった緑に光りました。

「残念ですが…」と先生が言いました。

内心では、わかっていました。
望実ちゃんが、とうに旅立っていったことを。

心臓が動いているように思えたのは、
強制的に酸素を肺に送り込んでいた、
呼吸器の規則正しさだったことを。

19時28分。
正式に、望実ちゃんの死亡宣告をされました。









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最終更新日  2006年10月09日 23時57分44秒
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