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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

4.

  4.

「声え?」
普通言うか?そんなこと聞くか?
飴を掴んだ手が力を失くす。

「ああ。また落としたで?なんや住吉さん?力ないんかい。」
春日ミカ・・が飴をひとつ剥いて、
「自分。飴ちゃんくらいしっかり持ちぃな。早う。くち。くち開けえな。」
からん。
俺の口の中に飴をほおりこんだ。
「甘・・。」
「なんや、辛いと思うたんか?飴ちゃんは甘いやろ。おもろいなあ住吉さん。」
彼と同じ<いちごみるく>の味がした。
何年ぶりだろう。飴なんて。
こんなに甘い匂いがするんだな。
彼からも、すごく甘い匂いがする。
あ。またあひる口・・。
「なあ?聞きたいねんて!こ・え。なあ~・・感じてもうたん?」

「まだいうのかよ。」
「そらすんかい。」
「・・女だと思ったよ。きみが。」
「はああ?なんでそんなことになるのん。」
彼は目をまん丸にして驚いている。
自分の声を聞いたことが無いんだな。
「春日くんの声。・・女の声みたいだった。」
「はっは~~ん!感じてもうた?俺に?あははは。おかしいで、あんた。
あ、いかん。ミカでええよ。ミカって呼んでな?」
きゃっきゃ、と嬉しそうにはしゃいでる。
「ミカ・・さん。あのさ。」
「ミ。カ。  言うてみ?」
あひる口が、ぱかーんと開く。
そのあほっぽいところが・・本気で可愛いと思ってしまった。
「ミカ。あのさ・・。」
「なにぃな?」

「・・声が煩い。」

「腹立つ?」
「腹は立たないけど、・・あれでは寝れない・・。」
「耳栓買うたげる。」
「そんなもので。」
「ひよ・・建ちゃんさあ。いつもバイトかなんかしてるんやろ?
おっそいやんか、帰ってくるの。
昨日まではな、その時間までに終らしてててんけどな。
な~んで昨日、部屋にいたん?よりによって・・客2人の日になあ。」

「きゃくう??」

声が裏返った。
慌てて口を押さえたけれど。彼は面白そうに目を輝かせている。

「なんやああ?おもろいなあ!自分!!
なになに?もっかい聞かして?今の声!!」
「俺の声じゃなくて、問題発言だろう?なんだよ・・ミカ・・は。
あの部屋で客を取ってるのかよ?」
「あかんのかい。」
「・・ええ?いけないでしょう?現に俺は寝れなくて。」
「耳栓買うたげるって言うてるやんか。」
「そんなもので効果あるのかよ。」
「あんなあ。建ちゃん?
俺の声で抜いたんやろ。ならええやん。な?」
「・・良くないよ!昨日はきみが女の子だと思ったから抜いたんだよ!」

「抜いたんや・・。」
いきなり悲しそうな顔をされた・・。しまった。言ってしまった。
ひかれてる!

「あ!!・・うん。そう。ごめん。」
「ええわ。ごっつおもろい。なんでそない正直なん?あっらー。
わろてまうな。こない男前なのにあかん子やなあ。」

え。
男前?俺が??
なぜか・・こんなに可愛い彼に言われると嬉しくなる。
今は彼女がいないけど、たしかに・・もてなくはない・・はず。
でも自分が男前かどうかなんて彼女はおろか、他の誰かから聞いたこともないし。

「建ちゃん。ええ匂いするなあ・・。」
彼がくんくんさせながら近寄ってきた。
「飴だろ。」

「ちゃうちゃう。男の匂いがするねんて。」
瞳が笑う。あひる口が顎をひいた。
それは・・もしや・・・必殺の表情なの??ねえ。
さっきより数倍可愛く見えてきた・・。
「あかんなあ。そういう時は黙っとったらあかんやろ。
もっとアグレッシブにせえや。」


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画像提供/optimisuto様

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