1379273 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

16

16.

「アヤ。下着はつけているんだろうな」
この状況で何を聞いてくるんでしょう。
「予備があるならください」
「威張るな」
ずるっとアヤを下ろしました。
巻いたタオルの隙間からお尻がちら見えしています。
気づいてあわてて引張ります。
「・・志信さん?」
「アヤを抱いたままでは撃てない」
言いながら、足元のふらつくアヤの背中を支えます。
そして髪が触れるほどの近さで誓いを立てます。
「護らせろ」
アヤはわずかに頷いて志信さんの胸に顔を埋めました。

志信さんがねじこんでいたピストルの照準を静かに合わせます。
銃身の先の克己は顎を押さえたまま志信さんを睨んでいます。
その空気に男たちが一斉に道を開けました。「亡霊のようだ」
志信さんが、とうとう裁きの一撃を放ちました。
射撃の反動がガクンとアヤの体にも響きます。
揺れる体を志信さんの左手がぐっと支えます。
「・・臭い!」
アヤが硝煙の臭いを拒絶します。煙草も嫌がる子です。
臭くて耐えられないのでしょう。
火薬だけじゃなくて鉛のような臭いも混じっていますから。
「そのまま・・じっとしていなさい。顔を上げるな」
志信さんがアヤをきつく抱き寄せます。
窒息させるようですが。
「う~~!」
アヤがむせています。
喉も痛くなりました、苦しくて目に涙がにじみます。

「そのまま目を閉じろ」
言われなくてもむせたせいで涙がにじんだ目です、見せたくない。
俯いたまま目を閉じます。
「あとは頼めるか」
志信さんの低い声が聞えました。
「アヤを大叔父に預けてくる」
「え」
アヤが反発しかけましたが
「いいから寝ていろ」
抱き上げられて廊下に出ました。

歩きながら「本当に寝たのか?」
「目を瞑っていただけですよ」
アヤが目を開けると志信さんの心配そうな顔が見えました。
「怖かったか」
「いいえ。・・俺、歩けますから下ろしてください」
「たまには抱かせろ」
「いつもでしょう」
アヤがむっとして言い返すと苦笑します。
「この格好で大叔父のところに行きたくないです」
「私だっていやだ。風呂場に行くからそこで服を着なさい」

別棟のお風呂場に、脱いだアヤの(正確には要の)スーツがそのまま置いてありました。
「さっさと着ろ」
「言われなくても」
アヤはするりと志信さんの上着を脱ぐと「はい。ありがとうございました」
そっけなく手渡してシャツを羽織ります。
ボタンをかけながら気になっていたことを聞きました。
「志信さん、さっき・・何を撃ったんですか」
「舎弟」
直球の応えでした。
「ころ・・」
「命はとっていない。懲役に服すわけにはいかないからな」
「・・塾の先生ですからね~」
アヤは安心しました。
克己に対して情はありませんが、大事なひとが罪に問われるのはごめんです。
「今頃救急病棟だろうけど」
なんですって?
「この世界は取引があるから大丈夫」
取引い?
「そのために地元のお祭りでは子供の相手をしているんだ」
アヤはめまいがしました。

「ヤクザの世界で生きていけません」
「そんなに早く結論を出すな」
「無理です」
アヤが下着をはきながら怒っています。
「大体、今日は挨拶と聞いてきただけなのに。どうしてこんな・・」
腿をあげて、よからぬものを見つけました。
跡が残っていました。
薄い黄色に変色した精液が、糸状にべったりとくっついています。
「・・ちょっと洗います」
「何を」
志信さんは気づいていないようです。
「いいから!」
アヤが風呂に駆け出しました。
これは洗わないと・・匂うし、かゆくなりそうな気がするのは考えすぎ?
露天風呂なのでシャワーがありません。
桶をつかむとお湯をくんで、大慌てでタオルを濡らします。
がばっとしゃがみこんで、シャツを濡らさないように裾をまくります。
タオルを固くぎゅうううと絞って、腿を擦りました。

「なにやってんだろう」

アヤは自分が情けなくなりました。
どうして拒絶できなかったのか。
いつもとは違う誘われ方、嬲り方に溺れてしまいました。
志信さんとのセックスに飽きたわけでもないのに。
刺激が欲しかったわけでも無いのに。

「こんなこと知られたくない、」
アヤは独り言を呟きます。


→→泣くな。17話は幸せになれそうかも

拍手

















© Rakuten Group, Inc.