北半球の西洋蜜蜂の4分の1が消えた。イミクロプリドやネオニコチノイド系の農薬が蜂の帰巣本能を消失させたり大量死をもたらしているという警鐘を鳴らし、一般の人にもハチミツが危ない「健康を害する意味で危険であるとともに、希少になり高価になる危機」と思わせた本、ジェイコブセン「ハチはなぜ大量死したか」(文藝春秋)を遅ればせながら読んだ。ついでに気になっていた「ニホンミツバチが日本の農業を救う」(高文研)も取り寄せて読んだ。
前者は、われわれの食卓が想像以上に蜜蜂と密接な関係を結んでいることを改めて知らせてくれたし、CCDに対しトウヨウミツバチが耐性があることはトウヨウミツバチの亜種であるニホンミツバチの飼育者には希望である。世界の食糧事情をめぐるグローバル化と農薬漬けが生んだ危機的な状況が変わる訳ではないが、後者の「ニホンミツバチが日本の農業を救う」はその希望の実験的な実践例でもある・・・が、基本的には、環境と経済を巡る体制的な危機的状況の打開を図らない限り、解決できない底の深い不気味な問題であるように思えた。「ファウスト」ではないが、知恵と引き換えに人類が選んだのはまちがいなく毒の杯だ。大多数の人が気づき、滅亡の進路が軌道修正なされる前におそらく人類と地球は滅ぶに違いないが、小さな蜂を通して、そうした深淵が覗けるほど、宇宙は精巧に創られたのだと感心せざるを得ない。
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