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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:フランス映画
事故で夫と最愛の娘を失った主人公ジュリーが、作曲家だった亡き夫の未完成交響曲を完成させることで、悲しみから立ち直っていく姿を描く―――。 十数年ぶりの再見。 フランス国旗の色“ 自由・平等・博愛 ”をモチーフにした3部作の第1作目、テーマ色はブルー。 鮮烈な青のイメージが記憶にあったのは、劇中に登場する硝子のオーナメントがとても印象的だったから。 今回は、色をあまり意識せず、ただただ悲しみから自由になっていくビノシュの姿に、じっと魅入ってしまった。 著名な作曲家だった夫の曲は、じつはジュリーが作曲していたのだろうか。。 そうだとしても、夫が死んでしまった今では、未完成交響曲が日の目をみることはない。なぜなら、偉業はすべて夫のものであり、彼女は陰の存在だったのだから、、、。 家族を失った悲しみと同時に、ジュリーは音楽に対する諦めも抱いたように、わたしには見えた。 なにもかも捨てて、独りになろうとする姿は、悲壮感たっぷり。 亡き夫のパートナーで、ずっと彼女に思いを寄せてきた男の深い愛さえ、撥ねつけてしまう。それでも男は「曲を完成させる」と世間に発表することで彼女と繋がろうとする・・・。 音楽も邸もなにもかも、家族を思い出すすべてと離れていたいジュリーに、未完の楽譜と向き合うことは深い意味を持つ。 いつしか再生へと歩む彼女に希望の光はみえるのだが。ぬぐえない悲しみの涙が、同時に頬を伝い流れるのだった―――。 音楽と映像が絶妙に絡んだ物語で、とくにラストの合唱はとても素晴らしい! ジュリエット・ビノシュという女優さんの魅力に、今度も圧倒されてしまう。 当時、まだアメリカ映画ばかり多く見ていたわたしにとって、ヨーロッパ映画の寡黙さは脅威だった。 悲しみひとつとってみても、じっくりと静かに切り込んでくる大人な描写が、すぐに好きになった。 刺激を受けた頃を思い返して懐かしい。 完成後は監督を廃業したため、このシリーズがキェシロフスキの遺作となっています。 監督・脚本/ クシシュトフ・キェシロフスキ 製作/ クシシュトフ・キェシロフスキ マラン・カルミッツ 撮影/ スワヴォミール・イジャック 音楽/ ズビグニエフ・プレイスネル 出演/ ジュリエット・ビノシュ ブノワ・レジャン エレーヌ・ヴァンサン (カラー/99分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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