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行きかふ人も又

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2011.08.21
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カテゴリ:日本映画

 

 瓦屋根の古い家屋が建ち並ぶ小さな町。

警官の友川(奥田)は、平和なこの街で

荒んだ毎日を送っていた。そんなある日、

喫茶店で知り合った少女に誘われホテル

へいく。やがてふたりは本気で惹かれあい

友川の退廃した人生も変わり始めるのだ

が―――。


 先日の『風の外側』が記憶に新しい、奥

田瑛二による監督デビュー作。原作は、

中年男と少女の純愛を描いた、連城三紀

彦の短編小説。

なんとなく捨てておけない作品だった。

フランス映画を意識した音楽や演出からは、

ふしぎな情緒が漂う。昭和の匂いがぷんぷん

するのに、どこかヨーロッパチックだ。

北野映画を思い出すアートを取り入れた画面、監督自らが出演する奇妙な間、外国で評価さ

れるところもちょっと似ている気がする。

それでも中年男と少女の純愛から目を逸らせなかったのは、陽子役の小沢まゆの体当たり

演技がとても好きだったからだと思う。

陽子の母は放蕩の果てに再婚して家を出た、兄は知的障害者、祖父は彫物師。自分は学業

の傍ら、まだ15歳で納棺師について死に化粧を学んでいる。とてもまともじゃない環境で育った

陽子は当然大人びて、中学校でも浮いた存在で友だちもいない。

そんな彼女がSOSを発し近づいたのが、背にじいちゃんの彫った刺青<比翼の鳥>が羽ばた

く町の警官・友川だった――。

img_184418_48078189_0.jpg  img_184418_48078189_0.jpg

すべてを知って近づいた陽子の強い意志と、少女と本気で生き直したいと思いはじめる友川の

真剣な気持が、行けばゆくほど切なくなる。

障害を持つ兄のエピソードや、自殺した父親の記憶、友川と母の腐れ縁・・・・・ユーモアを交え

ながらも、小さな町に淀んだ過去が重苦しくのしかかる。

情けない友川よりも、よほど真摯に現実を見据えて、陽子は生きている。

写真のとおり、陽子は背に刺青を入れるのだけれど、これって『蛇にピアス』よりずっとヘビーだ。

彫物師のじいちゃんが、今生の最後の仕事として陽子の背に刺青を彫らせほしい・・・・・・そう

哀願するのだった。

「そんなことしたらわたしお嫁にいけないよ ! 学校の検診だって温泉だって困るよ !」

現実的に当然断った陽子だけれど、紆余曲折あって結局彫ってしまうのだった。友川の背に

雄だけで羽ばたく鳥が両の翼と目を与えられるように―――。


小沢まゆや奥田瑛二は、きっと『蛇にピアス』を見て甘ちょろいと思ったことだろう。じいちゃん

の仕事道具はまだ電化されていない手作業、半端なく痛そうなのだ。小沢まゆの苦悶の表情

がたまらなくいい。奥田作品のエロスはこんなところにも表れてくる。

痛みに堪えて、やっと手に入れた<比翼の鳥>。

フランス映画のようなラストシーンに、ふたりの幸せを素直に喜べる爽やかなハッピーエン

ド。あからさまに思えるオブジェには目をつむってしまおう。

原作は別物のようだけれど、読んでみたいなーと思った。




  †    †    †



監督・製作/ 奥田瑛二

原作/ 連城三紀彦 『少女』

脚本/ 成島出  真辺克彦

出演/ 奥田瑛二  小沢まゆ  小路晃

(カラー/132min)






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Last updated  2011.08.21 21:17:33
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