パイロットと焼き芋屋
幼稚園生の頃に将来の夢を聞かれて、「パイロット!」と答えたそうだ。それに対して父は本当に喜んだと聞いている。「とんびが鷹生んだよ!」と飲み屋で言って回ったらしい。ところが、冬になり、、新高円寺の商店街に毎年来る焼き芋屋のお爺さんから店番を頼まれる小学生になった頃に、将来の夢が変わった。そう、、焼き芋屋。屋台の胴体に仕込まれたドラム缶に薪を放り込み、業火に焼かれる石を混ぜ、サツマイモを埋めていく。見事な手さばきと炎を自在に操るそれは、小学校低学年の私には尊敬できるスキルだったのだろう。ある日、いつものように母の目をかすめて父が私を連れて飲み屋に行ったそうだ。父は息子の気持ち代わりも知らずに、客や店員相手に自慢げに言ったそうだ。「おい!俺の息子はよぉ!床屋のせがれらしからぬ大きな夢を持ってんだよ!とんびが鷹生んだってのは、こういうことだぜぇ!!なぁ、、おい!将来何になりたいんだ!?」私はそこで、「焼き芋屋!」と答えたそうだ。当然、父以外の同席者は大爆笑。父だけが「おぃ!なんでだよぉ!え!?俺は知らねーぞ!!」と血相を抱えたそうだ。そんな懐かしい話を、今でもお元気で焼き鳥屋にて酒盛りをする地元の老紳士から聞いた。当時小学生が40歳を超えた。そして、父は10年前に亡くなった。パイロットと焼き芋屋。どちらもなれなかったけど、、一生懸命やっているよ。親父。↓執筆意欲につながります。できればポチッとお願いします。にほんブログ村