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カテゴリ:本の話
ようやく宮部みゆきの『孤宿の人』を読んだ。
まだ文庫化されていないので、でかい単行本上下巻を通勤電車で読むのは少々辛かったが、それくらい読み応えがある本である。 私がはじめて宮部みゆきに出会ったのは『火車』である。いまさらこの作品に注釈は垂れない。素晴らしい作品であった。出会いが『火車』であったので、宮部みゆきの“時代物"には当初は興味が持てず、“現代サスペンス・ホラー系"のものを中心に読んでいた。 しかし“少年冒険物"っぽいものにはイマイチ惹かれず、“超能力系”の物も『龍が眠る』以外は面白いと思えなかった。 という訳で、仕方なくって感じで“時代物”を読み始めたのだが、『本所深川ふしぎ草子』ではまってしまった。それ以来、宮部みゆきの“時代物”は好きになった。 とはいえ“時代物”と“超能力物”の合体となる『霊験お初シリーズ』は正直ピンとこなかった。 そして“時代物”と“ホラー”と“少女冒険物”の合体となる『あかんべえ』は個人的には嫌いだ。イマイチだった。 という訳で今回この『孤宿の人』はどんな作品なのか半信半疑で読み出したのだが、なかなか面白い。複雑な話なのだが、細部がしっかり書かれており、しかも伏線がきちんと張られているので読み進むにつれて納得がいく。さすが技巧派である。 “超能力物”や“冒険物”だと、伏線の張り方や展開に無茶ぶりっぽいことが多々あるのだが、今回はそれはない。無茶ぶりどころか実にスローテンポで話が進んでいく。それでいて飽きさせないのだ。まさに『宮部ワールド』全快!である。 ストーリーとかは面倒なので書かない。興味がある方はぜひ書を手にとって読んでください。 ただ彼女の長編作としては、珍しく「悲しい」話である。短編では悲しい話はいくらでもあるが、長編では他にあまり思い浮かばない。 でもなかなか良かった。 主人公は少し知恵の弱い女の子のため、「あほう」の字からとって「ほう」と呼ばれていた。それがラスト近くで「ほう」は「宝」だなんて言われるシーンはつい涙してしまう。あっ、別にストーリー的にはこれはあまり関係ないことなので、安心して本を読んでくださいね。 こちらは参考HPです。 という訳で、上下巻を読みきってしまったので明日読む本が無い。 もう一度『火車』でも読み返そうかな。 ではでは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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