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ダメダメパンツァー駐屯基地

ダメダメパンツァー駐屯基地

07:探求者ディスピュート

07 探求者ディスピュート



「うああっ!!」
短い叫びと共に村田は目を覚ました。
そこは小笠原の愛車の中。彼は汗だくの状態で、シートを倒した後部座席へと座っている。悪夢にうなされていたのは、誰かに指摘されずとも自身でよく理解していた。
「夢かよ、クソ……」
顔から服からぐっしょりと汗で濡れている。睡眠を取る前に寄った、折角の銭湯が台無しになってしまった。直ぐ隣で眠っている(と思しき行為をしている)城石を起こさずにいたことを村田は安堵した。
窓のすぐ外には川が流れており、車は河川敷に止められている。座席に置いてあったタオルを取ると、村田は顔を一拭きして扉を開き、外に出た。
「大丈夫ですか」
工藤だった。トレードマークの黒コートを脱ぎ、黄緑色をしたTシャツ姿で夜空を見上げている彼は、直立したまま村田に声をかけた。
「随分うなされてたみたいですけど、嫌な夢でも見たんですか?」
「ええ、まぁ……そういう工藤さんは? こんな時間に何やってんです?」
時計は既に深夜の2時を回っている。もしかすると自分のうわ言で起こしてしまったのかもしれない。そうなのであれば村田は謝罪をしようと決めた。
「僕はチャネリングをしてました」
「は? ちゃね……えぇ?」
「チャネリングですよチャネリング。そうですね、簡単に言えばUFOを呼ぶ儀式って所でしょうか。こうやって目を瞑り、姿勢を整え、肩幅程度に脚を開いて集中し、テレパシーを用いて地球外生命体との交信を行うのです」
工藤は直立の姿勢から両手を肩幅程度に開き、夜空へと顎を上げた。
あんぐりと開いた口を何とか閉める村田。数歩分近づけば、その地面にいわゆるストーンヘンジのような環状列石――規則的に並べられた石の小さいものが揃っている。
「あの」
「はい?」
「工藤さんって霊能力者なんですよね」
「はい」
「テレパシーって使えるんですか?」
「いえ、そういった類の能力はありませんよ?」
「……」
「……」
「……UFOは好きですか」
「はい!」
村田は理解に苦しんだ。オカルト関係ならば何でも好き、という訳ではなさそうだし、霊に関してはプロフェッショナルだけど、UFOに関してはアマチュアっぽい印象――チャネリングとか言い出してる辺りいやに庶民的な臭いがする――なのだ。
「……ええと、その、ええ……っと」
「あっはっはっはっは!」
狼狽している村田の様子に、工藤は肩を揺らしてさも愉快そうに笑った。
「いいんですいいんです、僕自身おかしいなって思ってるし。宇宙人の存在に熱心になる霊能力者なんてそうそう居ませんからねー」
言うなり、工藤はイプサムのトランクへ腰をつけて寄りかかった。見上げた空は星が輝く晴れの夜。目元にかかる前髪のせいで目こそ見えなかったが、工藤の表情は未だ笑い続けているようだった。
「年単位の習慣って奴は抜けなくって困りますよ。今じゃこれやらないとどうにも落ち着かなくって。村田くんにはそう言うのあります?」
「いや、俺は特にそう言うのは……」
「そうですか、それは羨ましいなぁ」
村田もイプサムの尻へと辿り着いて寄りかかった。前髪に隠れた目元のために、相変わらず工藤の表情は窺えない。だが、彼は何処か機嫌が良い風に見える。少なくとも村田はそんな印象を受けた。
「あの、工藤さん」
「うん? 何です?」
「城石さんのことは……すいませんでした。俺の考えでばかり物を言ってしまって」
唐突な謝罪に、工藤は一度だけ村田に視線を向け、そうしてからもう一度星空を見上げてんー、と小さく唸った。
「それなんですけどね、何だか僕も良く分からなくなって来ちゃいました」
「え? 何が?」
「僕の使命がかなぁ」
割と重苦しい内容のことを話している筈なのに、工藤の口調は何処か上の空にも取れるほど張りが無かった。何も考えてないようにも聞こえるし、逆に何らかの思案が巡らされている様にも取れる、酷く曖昧な印象のそれは、村田の中へ必然的に疑問符を生んだ。
「悪霊とは、想うだけで霊現象を引き起こすくらい危険な思念を持っている。負の欲望の塊だ……僕はそう思っていて、実際にそういった部分もあります」
工藤がミニ・ストーンヘンジの石を拾い、川に向かって投げる。暗い川の何処かで、水が弾ける音が響いた。
「けど、城石はまったくの逆でした。変わり果てた自分が知人に危害を加えることを恐れ、自分の衝動を律し、そして死んだことを純粋に悔やみ、泣く――村田くん、君はこの行動が“悪”って呼ばれる人のすることだと思います?」
え、と呟いて村田が工藤を見る。肩で息を吐く工藤の身体は、考えていたよりもガッシリとしており、適度な筋肉も見て取れる。工藤は水辺で座り込むと、両手でそれを掬って自らの顔で弾けさせた。
「僕、そうは思えなかったんですよねー。だから今、僕は彼の地獄戻しを躊躇っちゃってまして……僕の考える正しいことって、案外正しくもなかったんだなぁと」
長い前髪を持ち上げ、工藤は川の上に広がる暗闇を見つめた。
前髪を元に戻し、工藤は川に背中を向けながら歩き、村田の直ぐ隣へと辿り着く。やはり、口元には笑みを湛えたままだ。
「工藤さんは、どうして霊能力者をやってるんですか?」
何気ない村田の質問に、工藤はミニ・ストーンヘンジからもう一つ石を持ち上げ、サイドスローで川へと投げ込んでから向き直る。
「いやぁ、実は僕本当は別にやりたいことがあるんですよ」
「えっ!」
「あれ、そんなに驚くことですか?」
「だ、だって霊能力者なんて大それた仕事、好きじゃなきゃ出来ないんじゃないかなぁと思って……」
ほんの少し涼しすぎる風が二人の腕を撫でる。村田は腕を抱えると、改めて聞いてみた。
「じゃあ、工藤さんのやりたいことって何なんです?」
よくぞ、と言わんばかりに工藤が村田へと視線を向けたようだった。“しまった”と村田は思った。
「僕、本当は霊能力者じゃなくて、宇宙人とのコンタクターになりたいんです」
沈黙。
村田は答えに詰まってしまった。その結果故に訪れた静寂は、長い長い時間を置いてその場を支配することとなった。村田は懸命に次の言葉を捜していた。だが見つからなかった。どんな難解なネットワークの防御を壊すプログラムを書き込むよりも、二倍三倍の速度で脳を稼動させたが、優れた回答が形成されることは遂に無かった。
「……ごめんなさい、やっぱり変ですよね」
「えぁ!? い、いやそんなことはねーんじゃないッスかね!」
大慌てで村田は反論する。工藤の笑みは苦笑に変わっているようだった。くすくすと一頻り口元で笑みを噛み締めた後、ふっと空を見上げる。
「いいなぁ、村田くんは」
「え、何がッスか?」
「小笠原さんと、それに城石も」
「だから、何が?」
ほんの少し間を置いてから工藤は答えた。
「やりたいことを何の迷いも無くやってるんだから」
その言葉の真意は村田には分からなかった。ただ、今一度空を見上げた工藤の顔は何処か疲れを帯びているかのような、何かを諦観しているような、そんな暗い色をしているように村田には思えた。
広大に広がった夜空に流れ星が一つ、フッと現れて遠くの山の陰へと消えた。
「あっ! UFOだ!」
「……ほ、ほんとうだ」


現在地は横浜近郊の一般道。
炎天下の熱気は容赦なく地面を焼き、そこいらじゅうに陽炎を作り上げている。
夏場の渋滞と聞けば、誰もが目を伏せて耳を閉じたくなるようなものであるが、嫌悪される以上それは存在するものだ。そして、その渋滞にハマってしまった者は不運だ。そして今ここに、不運代表な男たちが四人居た。小笠原のイプサムは、鳴り響くクラクションの中をのろのろと進んでいたのだった。
「ったく畜生、さっきから何メートル進めたんだコレ、なぁ村田、高速使っちまおうよ」
「ダメッスよ。高速道路で襲われたら車を放棄しなくちゃならなくなる。それは避けないと。逃げ場も少ないし、それに一般人に迷惑をかけちまうかもしれねーんスから」
「あのー、一応俺も一般人なんですけど」
後部座席に座り、パソコンを操作する村田の制止の言葉に、小笠原は「あー」と声を上げてハンドルをリズミカルに指で叩いた。
「もうよ、なんの試練だコレ」
「頑張りましょうよ小笠原さん、僕も頑張ってナビしますから」
助手席の工藤が地図を広げたままで小笠原に適当なエールを送る、もう一人の後部座席の住人、城石・ザ・悪霊マンは相変わらず頬杖をついて外の景色を見ている。
「つーかよ、お前もまだ付いてくる訳?」
口の中に眠気覚ましのガムを投入しながら小笠原が尋ねる。工藤はフンと鼻息を鳴らすと運転席に軽く身を乗り出し、
「はい! 困ったときは僕、工藤にお任せ! 実はですね――」
と熱弁を振るった。「ああもううるせえな」と顔を歪めた小笠原は、片手で工藤の顔をぐいぐいと押して助手席まで後退させた。
「むがぁ! 最後まで話を聞かないのは小笠原さんの悪い所ですよ!」
「だってお前の話長いんだもん。もっと要点部分だけをまとめて話せや」
「取り敢えずですね、僕にもソトゥーバを放っておけない理由が出来たんですよ」
後部座席で村田が「ストゥーパッスよ」と訂正する。
「そりゃまたナニユエ?」
「デパートで襲われた後に言うタイミングを逃してしまったんで言わなかったんですが……実はあの信者達の半分以上が“死霊憑依”を施されていたんです」
「あぁ? なんだそりゃ」
工藤が地図を閉じ、コートの懐から黒いメモ帳を取り出して開く。
「“死霊憑依”、地獄に棲まう死霊を現世から何らかの方法で呼び出し、現世の生きている人間の肉体へと憑依させることによって、霊子の持つ負の魂魄エネルギーと生きている魂の持つ積極的生命運動のエネルギーとの一時的な極点融合を発生させ――」
「だぁから! 要点を離せつってんだろ!」
小笠原が叫んだ拍子にクラクションを叩いてしまった。突然の大声に驚き、メモを取り落としそうになった工藤が続ける。
「ええとつまりですね、悪霊が生きた人間の身体に取り憑くと、その身体能力は倍近くまで跳ね上がるんです」
はぁ!? と顔を歪めて工藤を見遣る小笠原。その声に軽く怯みつつも工藤は続ける。
「信者の中に、目の色が赤く変色してるヤツが居ませんでしたか?」
村田と小笠原が同時に「うーん」と唸る。
「俺は分からなかったな、何せ撃ちながら逃げるので一杯一杯だったし」
「そうだよなぁ、あの切羽詰った状態でンなこと言われても……」
小笠原の脳裏に、伝道師Nと共に己を襲った信者二人の姿がよぎる。ハッとして彼は目を丸くした。
「あ、居たよ! 居た居た!」
工藤がちょっとだけ嬉しそうに頷き、手帳のページを捲る。村田が覗き込むと、そこにはボールペンで様々な事柄が殴り書きされている。八割方が悪筆でとても読めたものではなかった。
「赤い目は悪霊自身か、それに憑依されて強化が完了している証です……しかし、実際に憑依されているのを見たのは僕も初めてでした」
「それで、その死霊なんとかが工藤さんの目的とどう関係あるんですか?」
「聞いてたかどうか分かりませんでしたけど、前に僕言いましたよね」
助手席から直ぐ後ろの村田に向き直る工藤。彼にはその表情が何処か嬉しそうに見えた。同時に、この工藤という男は一にも二にも自分の話を聞いて貰いたいタイプの人間なのだと村田は理解した。
「僕の目的は最近増加している死霊の現世流れ、その原因の調査です。あの場に居た死霊憑きは目測でも百人以上。それを見てピンと来たんです」
「な、何にスか?」
「あの連中ですよ。奴らが何らかの方法で地獄から死霊を呼び、戦力として信者達に憑依させているんです。本来、地獄から死霊が現世に迷い込むのは非常に稀有なこと。しかぁし! 何者かによる人為的な方法なら十分起こり得ることな訳で……」
「だから、それを阻止すべく僕も同行しますってか。いいねいいねとは言えねーなぁ。俺、お前みたいなうるさいのあんま好きじゃないんだよ」
苛立たしげにハンドルを指でとんとんと叩く小笠原。そんな彼に向かって工藤は両拳を握り、またもや身を乗り出した。
「何言ってるんですか小笠原さん! 僕が居れば百人力ですよ、任せてください。必ずやお二人の役に立って見せます! 城石! お前には力貸さないけどな! あっはっはっは!」
「お、赤信号」
「ぐぺっ!」
ブレーキの生み出した慣性運動によって、工藤は敢え無くフロントガラスに左肩から激突した。「ああおい、ちゃんとシートベルト締めて座れ」と面倒くさげに小笠原がその身体を引き戻す。
「安全運転してくださいよ」
「いや、お前がシートベルトしてねーのが悪いんだろが」
「シャーッ」
「シャーッ」
威嚇しあう二人を村田は止めないことにした。城石は相変わらず窓の外を眺めており、その表情から彼が何を考えているかは分からなかった。その城石をチラリと見た後、村田は何となく浮かんだ疑問を口にしてみた。
「今更ですけど、幽霊ってマジで居るんスね」
シートベルトを締めた工藤が、おお、と前髪の奥の目を輝かせながら振り返る。
「僕も初めて見た時は全く同じことを言いましたよ」
「まったく同感だ。未だに信じられねーっつの。何がどうして、まさかこんなスーパーオカルト大戦に巻き込まれちまうなんてよ」
頬の絆創膏を指で軽くいじりつつ、小笠原はハンドルから手を離す。無理に車を進ませることは諦めたようだ。
「今の所ハッキリしたのは……“卒塔婆ストゥーパ”と“幸福の竜”が協力関係にあるってことだけですね」
「宗教団体の連合ならまだしも、そこに悪霊が加担してるっつーのはどういうことなんだ? 俺、もう頭の中がこんがらがって来たんだけど」
サングラスの位置を直しつつ小笠原は誰ともなく疑問を呈する。
「工藤、つまりお前が言ってるのは、“敵の中に悪霊を地獄から呼び出せる奴が居る”っつーこと?」
「はい、その通りです。詳しい素性は僕にも分かりません。ですが、確実にその能力を持っている奴は居ると僕は睨んでます」
小笠原は工藤の分析に噛み締めて視線を上方に泳がせる。彼の脳裏に浮かぶのは、ミオンデパートで自分を襲撃した白装束の信者達と、伝道師N――後輩・西浦の姿だ。
「まさか、“幸福の竜”の方か?」
「その線は無いと思うッス」
反論をしたのは村田だった。窓際に置かれたノートパソコンには、何かの資料がウインドウとして表示され、規則的に並べられている。
「何でそう言えるのよ?」
「調べてみたんですが、“幸福の竜”の信仰対象は人間の隠された力、即ち超能力やそれを使う人間の肉体です。仏教みたいな死者云々の手法を使うとは思えないッス」
小笠原は傍らのバッグから自分の手帳を取り出して唸っていた。彼の調査結果の内、ストゥーパと共謀していそうな団体の中で、心霊を主に扱っている団体は無かったのだ。ノートPCを持ち上げながら村田が続ける。
「伝道師Nの予知能力が本当だとしても、悪霊のことは別の団体かもしれませんね」
「いや、恐らくストゥーパだ」
口を挟んだのは城石だった。昼間でも不気味な輝きを放つ赤い瞳は、先刻の工藤の説明も合わさり、異質な存在感をより深くしている。運転席と助手席の間に置かれた村田のPCディスプレイを見遣る顔は何処か物憂げだが、今日は何処か意志の在る思考を村田達は感じた。
「この間オレ達を襲ったあの二人、プラセンテとサムエルは生前もストゥーパの信者だった奴らだ。デパートの時も、オレが倒した信者に憑いていた霊は全員、生前は信者だった奴らだった」
村田達三人はじっと城石の話に聞き入っている。
「オレの生前のフィールドネーム、“トンマージ”を知っていた点。そしてオレへの明確な復讐の意思を持っていた点から奴らが偽者とは思えん。おい、零能力者」
工藤が苛立たしげに城石の方へと顔を向ける。
「お前に発言権があると思って……」
「まぁまぁ工藤さん、落ち着いて」
喧嘩腰の工藤を宥めながら、村田は城石の隣へと座りなおした。城石と工藤はお互いに目線を合わせずに言葉を交わす格好となっている。
「一つ聞いておく。簡単に目当ての死者を呼び出す方法はあるのか?」
「……言っておくけど、お前の為に答える訳じゃないからな。村田くん達と情報を共有するためだからな、調子に乗るなよ」
村田はそう前置きをすると、不服そうにはあと息を吐いて「ある」と続けた。
「全く知らない第三者を呼ぶんでなく、見知った知人の霊を呼ぶことだ、それならば強く霊力を消費したりはしないし、失敗の可能性も格段に低くなる」
「つまり、素性を知っている人物ならば、ある程度簡単に呼び出せるんだな」
「ああ、そういうことになる……あ!」
城石が仏頂面のままで頷いた。村田と小笠原もあることに気付いて視線を城石に向ける。
「そうだ、ああも多くの信者を地獄から呼び出してるってことは、その主は明らかにストゥーパの……特にその過去について詳しい情報を持っている奴が呼んでいることになる。外部組織の奴だとは思えん」
「下手に知らない霊を呼び出すよか、ストゥーパに信仰心を持った奴を呼んだ方が駒として扱いやすいと、そういう訳か」
数回頷いて村田も納得する。だが、説明のダシに使われたことが気に食わなかったのか、工藤は腕組みをしたままフンとあらぬ方向に鼻息を噴射した。
「今日は良く喋ると思ったらなかなか冴えてんじゃんか、城石さんよ」
「僕の見解では全く違いますね!」
小笠原の言葉を遮り、工藤が突然大声を張り上げた。
「何だよいきなりデカイ声出して……」
「これは全て、グレイの陰謀によるものです!」
「は?」
突然小笠原の腕を掴んだ工藤は、今までの会話の流れでは出てこなかった単語を口にした。フッフッフと妙に低音の笑い声を響かせ、工藤は後部座席の城石と村田を交互に見遣った。城石は相変わらずの仏頂面だが、村田と視線を合わせて訝しげに工藤を見遣った。
「今回の事件は、グレイ、即ち悪質な地球外生命体が関連していると考えてまず間違いないでしょう。奴らは地球を征服する為の一環として、まずは卒塔婆ストゥーパに裏から取引を持ちかけ……」
「待て待て、そりゃちょっとあんまりだろオイ」
「何があんまりデスカァー! 僕は考え得る全ての要素から最も可能性の高い推測を……」
「取り敢えず落ち着けって、このままじゃお前があんまりだ」
生まれて初めて、小笠原は渋滞にハマっていたことを神に感謝した。これが走行中のやり取りだったとしたらそれはもう大変に面倒な事態となっていただろう。
「あー、分かったぞー、うっふっふ……」
「こ、今度は何だ」
「三人とも僕の推測があまりに説得力あるから羨ましいんだー……うっふっふ、きっとそうなんだ……うっふっふ……マキマキマキ……!」
「何を言っているのだ」
「それ、笑い声ッスか?」
肩を震わせて両手で顔を押さえている工藤。それを見て城石はボソリと「バカが」と呟いた。
「何だとこの悪霊! 成仏させてやろうか!」
「フン! 出来もしないことを!」
「ちょっと工藤さん落ち着いて! 城石さんも何で分かってて挑発するんですか!」
シートベルトを伸ばしきって工藤は城石に襲い掛からんと両腕を伸ばす。城石も城石でファイティングポーズを取りながら不敵に笑っている。村田は手早くPCを閉じてシートに放り出すと、二人の間に割って入り抗争の収拾にあたるが、次の瞬間に
「うるせぇ! おめーら少し黙れ!」
と張り上げられた怒声によって、三人はすごすごと元の席に戻った。
「……フン、オタクと言うのはイヤなものだな。何がGLAYだ。奴らはまだ活動しているのか? ニューシングルはいつ出たんだ?」
城石が再びぼそりと呟くのを見て村田は気付いた。この男は楽しんでいる。工藤の反応を見て、尚且つ彼が小笠原に怒られている所を観て楽しんでいるのだ。知り合って四日目だが、まさかこんなに性格の悪い人物だったとは思わなかった。
「そっちじゃなくて宇宙人の方だ! 灰色で大きな黒い目の……」
「次騒いだら下ろすぞ」
小笠原の制す声に押し黙る工藤。サングラス越しとは言え、小笠原が横目で睨んでいるのが見えたのだ。運転席の小笠原はハンドルを握りながら溜息をつき、やれやれと呟いた。
「工藤さぁ、お前昔からこうなの?」
「え?」
「いやだから、アレだよ。昔からそんなオタクなのかって聞いてんの」
「オ、オタクじゃないですけどね。いやまぁ、でもUFOや宇宙人は昔から好きでした。色々な資料を集めたり仮説を立てたり、色んなテレビのドキュメントを集めたり。あ! あと、そういうサークルにも入って活動してました! “船橋超常現象研究会”って言いましてですね、様々な超常現象の……」
「ほらオタクじゃねぇか」
小笠原はやっぱりな、といった風に笑いつつ工藤に向き直る。
「そのハマりっぷりと言い解説っぷりと言い、典型的なオタクの特徴そのものだぜ」
「なっ! ちがっ!」
「……違わぬな。色眼鏡の言うとおりだ」
腕組みをした城石が、横目で視線を工藤に向けながらぽつりと呟いた。なにこのと工藤は反論をしようとしたが、先の口論の際のことを思い出し言葉を噤むに至った。もうギャアギャアと騒ぐ訳にはいかないのだ。
「相手の話をあまり聞かない、常に己が好む分野での見解や会話……理屈さえ述べて客観を気取るがその実、屁理屈で出来た主観でしかなく……ともかく話や価値観が周囲にも受け入れられない存在……まさしく先程の貴様だ」
「おお、ホント今日はやけに喋んなぁ。しかも何だ、その見解は」
「ストゥーパではオタクの連中は排除すべき愚者とされていたからな」
「そうなんか。けど分かるわそれ。俺の劇団にもそういう奴が居てなー、話合わせるのが大変でよー」
「生前、隣の家にニートが居たが……やはり同じようにオタクの要素を持ち合わせていた。社会悪とまでは言わぬが、付き合いづらくはあった……」
「まぁともかくよー、お前の趣味をどうこう言う必要もねぇけど。もう少しお前、周りのこと考えて喋れや。お前だってオタク呼ばわりされんのイヤだろ?」
長い前髪の下で、工藤の口元がグッと何かを堪えて歪んだ。
この三人と出会ってから、工藤は何度も何度も疎外感のようなものを感じていた。元々工藤はあまり人付き合いの上手い性格ではない。どちらかと言えば城石の見解どおりで、自分の興味があること以外はどうでもいいというような、典型的なオタクの性分をしている。
しかしながら、工藤は心の中でそんな自分に落胆し、何よりも自覚していた。どうしても自分の趣味のことを言われるとカッとなってしまう自分の幼さなど良い例だ。そして何より、今行動を共にしている三人と工藤とでは、決定的に違う点が一つだけあった。
工藤の目的だけは自らの“仕事”に関することで、完全なる自由意志を目的として動いている他の三人とは庭が違うのである。“城石の監視”から本来の目的にシフトしたのは幸運だったが、この意識の差は工藤にとってかなり大きな障害と化していた。
“同行している”と“同行させてもらっている”という意識ではかなり変わってくるものだ。特にこの工藤景介という男はそれが顕著だった。
「ぼ、僕はオタクじゃありません!」
「じゃ何よ」
「……ミステリーハンターです」
言ってから彼は後悔した。ああしまった、素直にはいと言っておけば良かったと心中で呟き終わらない内に、これ以上無いほど大きな笑い声が車内に響き渡った。
「なーっはっはっはっは! あんだって? ミ、ミステリーハンター!?」
「ク……クク……ックックックックックックック……!」
「ぼ、僕はそういうつもりで言ったのではなく……!」
「ちょ、ちょっと勘弁しろよおい! あっはっはっはっはっは!」
小笠原の盛大な笑いと、城石の陰湿な笑いが複雑に混ざり合う。二人の笑い声に工藤は俯き、膝の上で拳を握ってわなわなと震わせた。どうして自分はこうなのだろう。悔し紛れに妙なことを呟いては笑われる。つくづく自分の性格や趣味に憎悪を抱いた工藤は、涙が出てきそうになるのを必死で堪えていた。
「何がおかしいんスか」
「え……?」
やっぱり自分は一人で行動しよう。そう工藤が考えた時に聞こえたその声。反射的にピタリと笑い声が止む。声の主は工藤の背後。村田だった。
「何が面白くて笑ってんスか、二人とも」
「え? いやだってよ、こいつのオタクっぷりがさぁ」
「オタクの何がいけないんスか? 差別されるようなことなんスか?」
エンターキーを叩き、村田の手が作業を終えた。じろ、とまるで敵を見たような目で隣の城石と、そしてバックミラー越しに小笠原を睨んだ。
「な、何を怒ってんのよ?」
「じゃあ聞きますけど、小笠原さんはオタクじゃないって言うんですね?」
「ああ、まぁ……」
「城石さんは?」
「無論、オタクなどではない」
「じゃあ、聞きますけど」
ぱたん、とノートパソコンを閉じた村田は軽く息を吐き、首を鳴らした。
「オタクって何スか? どこからどこまでがオタクで、どうなったらオタクじゃないってんです?」
唐突なその質問に、小笠原と城石は多少の戸惑いを覚えつつも思案を巡らせた。
「そ、それは……えーと、人に自分の趣味を押し付けた時、かな」
「それじゃ部屋にこもりっきりで、一切人とコミュニケートしないゲーマーはオタクじゃないんですね」
「それは……違うと思うけど……」
サングラスの位置を直しながら、小笠原はフロントガラスに視線を戻す。
「己の趣味以外のものを見なくなった時、ではないか……?」
「じゃあ、その人が何か別のジャンルに手を出したらオタクじゃなくなると」
「ぬ……それは……」
狼狽しながら眉間に筋を立てて腕組みをする城石から視線を外し、溜息をつきながら村田はシートに座りなおした。
「いいスか、オタクの概念なんてのはね、一部の高慢チキな人が作り出した人の見方に過ぎないんスよ。言ってしまえば、全ての人がその要素を持ち合わせてるって話。工藤さんをオタクだっつー前に、二人とも自分を見た方がいいと……俺は思うッスけどね」
工藤が肩越しに村田の姿を見る。村田は腕組みをして、そこはかとなく強気な表情で何処ともなく前を向いていた。
「ちょ、待てよ。するってーと何か? 俺や城石も同じオタクだって言いてえのか?」
「その通りッス。勿論俺もね」
「おいおい、なんちゅー極論だそりゃ」
「小僧、幾ら貴様でも言って良いことと悪いことがあるぞ」
「じゃあ、聞きますけど」
村田の強烈な睨みに、小笠原と城石は思わず怯む。
「二人とも趣味とかハマってるものとかあるッスよね。小笠原さんは演劇でしょ?」
「ああ、そうだけど」
「城石さんは? 今じゃなくてもホラ、生前の趣味なんてないッスか?」
「俺は……そうだな、スロットやパチンコなどを……」
「ほら、パチスロオタクに演劇オタク。俺から見たら二人とも立派なオタクッスよ」
姿勢をそのままに放った村田の一言に、小笠原と城石は途端に反論の体勢に入った。
「おい! こんなオカルトマンと一緒にするんじゃねえよ!」
「小僧……オレは違うぞ、零能力者のように深みまでにはハマってなどいない……!」
「いいや同じッスよ。こういう言葉知ってるでしょ? “五十歩百歩”って」
村田は語気を強めたようだった。少なくとも工藤にはそう聞こえた。
「工藤さんがUFOを好きだったらそれでいいんスよ。ミステリーハンターだっつったらミステリーハンター。俺達にそれを批判する権利なんて無いんスから。ま、いわゆる“偉い人”になりたいんだったら別ッスけど」
「で、でもよぉ」
「上辺や相手の生き方を受け入れられないってね、動物と大差ねーッスよ……寂しいモンッスねぇ、言葉なんて便利な道具を持っているのに分かり合えない現代人って」
「……」
「二人は、それでも良いんスか?」
城石は遂に黙り込んでしまった。小笠原も反論が無い訳では無かったが、これ以上反論すると、何だか自分が汚い存在に見えてくるように思えた為に口を噤むことにした。
(む、村田くん……)
工藤はいつの間にか助手席で畏まっていた。心中で述べるのは、村田に対する感謝の気持ちだ。孤立した自らの立場を救ったのは、紛れも無い村田の言葉だ。その気遣いが、涙が出そうなに程嬉しかった。
「それに、工藤さんって凄いんですよ? 俺達なんかよりずっと」
「何がだよ、実はUFO学の権威でしたーとかじゃねーだろうな」
ジャンパーのポケットから取り出した板ガムの銀紙を剥き、村田はそのまま頬張った。
「工藤さん、悪霊ハンターの正式名称って何でしたっけ?」
「えっ!?」
「免許ごと見せてくださいよ」
突然投げられた質問に対して戸惑う村田。わたわたと意味も無く両腕を動かすと、ようやく落ち着いて懐のポケットから一枚のカードを取り出した。
「……神霊庁・対霊処理局・界境管理官です」
それがどうした、と城石、小笠原の二人が興味無い素振りと共に工藤を見る。村田は口元にほんの少しだけ笑みを作って、更に尋ねた。
「分類は?」
ええと、と言い難そうにしてから工藤は言った。
「一応……国家公務員です」
小笠原と城石は目を丸くした。「国が霊能力者にかかわっているのか」「つまり幽霊の存在は国がらみで隠されているのか」「お前は国家試験を受けたのか」など、彼らの中にしたい質問は山ほど浮かんだのだが、たった今判明した一つの真実に、何処から突っ込めば良いのか分からなくなってしまっていた。


一時間後。
渋滞を脱した一行は、立ち寄ったスーパーマーケットで買い物を済ませて駐車場に居た。
照りつける日差しの中、村田と小笠原が地図を広げてルート探索をし、城石は買ったものをトランクに積み込んでいる。
「……零能力者はまだ来ないのか」
「そういえば遅いっスね」
言われた村田がスーパーマーケットの店舗や駐車場内を見るが、この七月の陽気でひたすら目立つあの黒コートの姿はどこにも見当たらない。
「ったくもう、小笠原さんが偉そうにダメ出しなんかすっからッスよ」
「んだよ、俺のせいかよ。そんなら城石だって同罪だろがよ」
「そりゃ勿論ですけど……」
「ち、違うのだ小僧……オレはアイツの身勝手な振る舞いが許せずにだな……
「一昨日一人で突っ走ってた人が言える台詞じゃないッスよ」
先日のこと以来、城石は村田にだけはどうも頭が上がらないようだ。好かれようとしているのか、口調こそ傲岸不遜ではあるが、しどろもどろな印象は誰の目にも明らかだった。
「まさか敵に襲われたんじゃねーだろうな、おい城石。お前気配とか察せねーのか?」
「オレはそういった感覚には長けておらんのだ、近場ならまだしも……」
「みなさーん!!」
工藤の声だ。その方向に一斉に振り向く三人。見れば、スーパーマーケットの敷地内への入り口から走ってくる黒コートの姿。手には何やら白い小箱を持っている。
「すいません、道に迷ってしまって……!」
近寄ってきた工藤の姿を見て、三人はぎょっとした。額から血を流し、頬には傷跡、腕には腫れ物、コートの至る所が汚れているではないか。小笠原が指を差しつつ尋ねる。
「お前、なんだそのケガは……」
「ああ、これですか! ちょっと階段で転んじゃって!」
嘘だ。コートのいたるところについている傷は、どう見ても何か鋭利な凶器による切り口で、裾には返り血らしいもの見受けられる。小笠原の予想通り、敵に襲われたのかもしれない。にこにこと笑ってはいるが、その姿はたいへん痛々しい。
「実はですね、以前この近くに修行で訪れたことがありまして、その時に美味しい和菓子屋さんを発見しまして! そこのお菓子をみんなで食べようと……!」
箱を開ける工藤。そこには白い花をかたどった一品物の和菓子、だったらしき残骸が四つ分収納されていた。どうやら戦闘の激しい挙動でこの有様になってしまったらしい。こしあんが酷い具合に飛び散っている。
流れる沈黙。数秒の後、工藤は落胆の表情と共に膝を突き、ゆっくりと頭を下げた。
「……すいません、僕はやっぱりダメなただのオタク公務員らしいです」
あまりにもネガティブな悲嘆を示す声に、三人は掛ける言葉が見当たらず押し黙ってしまった。
「本当は、さっきのお詫びにと買ってきたんですけど……」
ああ、やっぱりそうだったんだ。と同時に心中で呟いた三人。工藤は暫くの間項垂れた後、長い長い溜息を吐いた。自分への失望がぐんぐんと大きくなり、遂に工藤は目を閉じようとした。
「なかなか美味いな、コレ」
小笠原だった。いつの間にやら工藤の目前で小箱の中の残骸を適当に掴み、もぐもぐと口を動かしている。
「帰りにも寄ってみよーぜ、そん時にまた買い直せばいいじゃねーの」
「小笠原さん……」
「うん、確かに美味しいッスねぇ。なんてお菓子なんです?」
「あ、えと、山法師です」
歩み寄ってきた村田も箱の中に手を入れてもぐもぐと食べている。
「城石さんもどうッスか?」
「フン、オレはそんなモン要らん。どうしてもと言うならば食ってやらなくもないがな」
いうなり、城石はトランクを閉めてのしのしと歩き、村田の横から腕を伸ばして和菓子を口に放り入れ、まずくはない、と呟いた。気遣いをする三人を見て、工藤は頬の傷を手で拭い、地面に正座の状態で畏まってしまった。
「ごめんなさい、また気を使わせてしまって……」
「あーあー、気にすんなって。さっきオタクだなんだってバカにしちまったんだし、これくらいやんねーと。まぁ何? アレだよ、一種のケジメって奴だよ! まぁその……すまんかった――な、城石さんよ!」
「フン、オレに振るな」
小笠原は右手の親指でサングラスを直すと、にぃと笑ってイプサムのトランクに背中を置いた。工藤は小箱の和菓子を摘んで口に入れると、会釈程度に小さく頭を下げた。
「その……UFOのことばっかしか話せませんけど、気遣いも下手糞だし、どうも空気が読めなくてご迷惑をおかけするかもしれないんですけどその……出来るなら、この後もご一緒させて頂けると……」
「うっせーなぁ、グダグダ面倒くせえこと言ってねえで早く乗れっての」
「え?」
「ダチ公一人分くらい、俺のイプーは狭くはねえからよ。つか、不満だってのか?」
「えー、小笠原さんそれクサイッス」
「んだよるっせえな! 黙ってろ!」
小笠原は既に運転席のドアを開け、車の天井に頬杖を突いている。拍子抜けしたようにぽかんと口を開く工藤。でも、と続けようとするが、今度は村田にその先を遮られる結果になった。
「と言うか、戦力的にも工藤さんは必要不可欠なんですから、居てくれないと困ります」
「フン、オレは貴様などどうでもいいがな……それよりも小僧、オレも戦力的には不可欠なのだよな? 零能力者だけではないよな?」
「はいはい、城石さんも重要ですってば」
小箱を受け取り、車に戻ろうとする村田。その後を追いながら問う城石。小笠原はやれやれと肩を竦めて尚も尋ねる。
「おーい、どうすんだよ。乗るのか? 乗らねえのか? ストゥーパに用事があるんだろ?」
車で待つ三人の姿を順に見ながら、工藤は考えていた。
自分は気兼ねし過ぎていたのかもしれない。
自由意志に拠る目的が無いと嘆いたが、違ってもいた。偶然に出来たこの妙な友人たちと、工藤はなるべく長く、出来るだけ長く同じ時間を共有したいという目的がいつの間にか出来上がっていた。
つくづく、自分は寂しがり屋なのだなと思い知った。
立ち上がってコートの汚れを払う。ブチのめしてきた三十人程度の信者達や、ケガのことなどはどうでもよくなっていた。

――彼らの為に。

使命をもう一つくらい作っても、罰は当たらないだろう。そんなことを思いながら、工藤はゆっくりと立ち上がった。
「はい、乗りま――」

ぱたっ。

安心がどの程度のものだったかは誰にも分からない。だが、工藤は何らかの形で安堵にほど近い心境だった。あまりにも心地よい安堵のあまり、既に出血多量の境地に至る彼の身体は急激に疲労を思い出し、意識はそれに伴って敢え無くブラックアウトした。
小笠原と村田の脳裏を「殺人容疑で逮捕」の文字がよぎる。
刹那、小笠原は叫んでいた。
「積み込んでェェェ!!」
その日、血まみれの死体を運んでいる三人の男達を見た、と言う通報が警察に数件発生した。





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