カテゴリ:犬の話
鈴へ
鈴に書く、ママからの最初で最後のお手紙です。 朝起きた時に、「出して出して!」とサークルの中でジタバタしているあなたが居ないだけで、一日がとても静かに始まってしまいます。 おねーちゃんも、鈴の「おはよう」のスリスリがなくって寂しがってるよ。ご飯もなかなか食べられなくなってちょっと痩せてしまいました。 朝、家族の一番最後に家を出るママは「行ってきます」が言えないし、「お留守番ちゃんとするからご褒美のオヤツちょうだい」とピョンピョン跳ねて催促してくれる人もいないし、仕事から帰って駐車場に駐車しているときに、バックミラーに映るカーテンの陰から顔を出して待っている三角のお耳が見えないし、鍵をあけてもクルクル回って「お帰り」を言ってもらえません。だから黙って出て行って黙って帰ってきます、とても辛いです。 ママが帰ると毎日、スーパーの買い物袋の匂いを嗅いで大好きなササミが入っているかどうか確かめてたね。 「そんないやしい子に育てた覚えはありません」って毎日言われても絶対やめなかったよね。 ママが夕飯を作っている間は、いつもキッチンの入り口でとても良い姿勢で伏せをして待ってたね。「鈴のご飯じゃないよ」って言うとしっぽを下げてスゴスゴと戻っていく後ろ姿をみて、ママは毎日笑ってたよ。 鈴のお皿にはいつもドライフードが入っているのに、絶対にパパやおねーちゃんがご飯を食べ始めるタイミングで食べてたよね。一緒に「いただきます」をしているつもりだったんだよね。 一緒にお散歩に行くと、いつも鈴とパパだけ先にスタスタ歩いて行っちゃって、ママはなかなか着いて行けなかったね。でも、鈴はすぐにママが遅れていることに気付いて、振り返って首をかしげながら待ってくれてたよね、嬉しかったなぁ。ママは「あれ?ママは?ちゃんと着いてきてる?」って振り返ってくれる鈴のお顔が見たくて、わざと遅れていることもあったんだよ。 鈴の首には犬用の首輪は大きすぎたから、実は猫ちゃん用の一番小さいやつを使ってたんだよね。だから鈴の首輪には鈴が付いていて、鈴が歩くといつも「リンリンリン」って鈴の音がしてたね。ママはもう一度あの音が聞きたかったな。さっき首輪だけ振って鳴らしてみたけど、余計に寂しくなっただけだったからすぐにやめちゃったよ。 鈴が「お庭に出たいよ」って言わないから、お庭の草取りをするタイミングがわかりません。いつも鈴が遊んでいる横でついでに抜いてたからね。 そろそろ寝ないの?って鈴が聞きに来てくれないから、寝不足続きなのについつい夜更かししちゃうよ。 鈴はパパが「ねんね」って言っても最近は全然信じなくって、いつもママに「本当にねんねの時間?」って聞きに来てたよね。だってパパはいつも鈴に嘘をつくんだものね。 パパは「ねんねの時間だよ」って言うとテチテチテチってハウスに入ってベッドで寝ようとする鈴の姿を見るのがとても好きだったんだよ。だから本当はねんねの時間じゃないのに何度も言って鈴を困らせてたんだよ。 でも、「ねーちゃんが帰って来た!」の嘘にはずっと騙されてたね。だって嬉しすぎてつい条件反射で玄関に走っちゃうんだもんね。鈴はすごくがっかりしてトボトボと帰って来るのに、パパはその姿がまた可愛いって喜んでたよね。パパはいじわるだねー。でも、許してあげてね、男の子は可愛い女の子がいるとついいじめちゃうものなんだから。 みんなが鈴が居なくなったことをとても寂しがってくれてるよ。お花もいっぱいだよ。入院していたパパが、「病室より鈴の方がお花が多い」って言ってたよ。 退院してきたパパは、パパが手術している間に鈴が居なくなってしまって、まだなんだか戸惑っているみたいだよ。 鈴の火葬に、あのオモチャも入れてあげればよかったのに、これも持たせてあげればよかったのに、ってママに文句ばかり言っています。 今日は退院したばかりなのに、半日かけて鈴がうちに来た日からの写真のデータの整理をしていました。何百枚もあってとても大変みたいだったけどどの写真も可愛くって楽しくって、あっという間に時間がたったみたいだったよ。 写真で見ると鈴はいつでも私たち家族のまん中にちょこんと交じっていて、その姿を見て本当に本当に「家族」だったんだなぁ、とあらためて思っています。そんなの当たり前だよね、そうだよね。 ママは鈴が食べ残したフードやお薬を整理していました。 胃薬、整腸剤、抗生物質、ステロイド、免疫抑制剤、粉に錠剤にカプセルに液体、本当にいっぱいのお薬があったけど、でもママは鈴にお薬を飲ませるのに一度たりとも苦労をしたことが無かったよ。 美味しくもないお薬なのに、毎日朝晩、鈴はいつでも素直にお口を開けてのんでくれたよね、ゲロゲロでお水だって一滴も飲めなくなっているのに、お薬の時はがんばって口をあけてくれたよね。これを飲めばお腹痛いのちょっとは治るからね、ってママが言ってたのがわかってたんだよね。 鈴は注射だって嫌がらなかったもんね。元気な時に打つ、年に一度の予防接種の時はキャン!って大げさに泣いてたのに、病気がわかってからの毎日のお注射は、4本も5本もあったのに一度も泣かなかったもんね。特に最後に打つ黄色いお注射は、獣医さんも「滲みるからね、ごめんね」って言ってくれるくらいなのに、お目目が涙でウルウルになることはあっても、鈴はずっと泣かないし暴れないしじーっと我慢してたもんね。看護師さんも毎日、エライねー、すごいねー、って褒めてくれたもんね。大きなワンコだって注射の時は暴れちゃうのに、鈴は小さい体ですごくよく我慢したよね、えらかったね。それを思うともう一度鈴の小さな頭をなでなでしたくてたまらなくなっちゃうよ。 お目目がグルグルになっちゃってからは、若松まで車に乗るだけだって辛かったよね。ただでさえグルグル目が回るのに、車だともっと揺れるんだものね。クッションや毛布をいっぱいひいてみたけど、全然だめだったね。鈴のためにおねーちゃんが何度も学校を休んでついてきて車で抱っこしててくれたけど、それでも揺れちゃったよね、ごめんね。 鈴はずっと震えてハァハァって息が辛かったよね。ママの車がもっと高級車だったらもう少し楽だったかな、ママの運転がもうちょっと上手だったら、鈴ももう少し楽だったのかな。 鈴がこんなに頑張ってくれてたのに、結局治してあげられなくって本当にごめんね。 毎日あんなに信じてついて来てくれたのに、元気にしてあげられなくって本当にごめんね。 でも何度考えても、何度思い出してもみても、あの時こうしていればこんなことにならなかったのに、っていうところが、どうしても見つかりません。 どうしてだろうね。 鈴はただ可愛かっただけだったのに、何も悪いことをしてないのに、ずっといい子だったのに、どうして神様は鈴にこんな難しい病気をくれちゃったのかな。 そこだけがとてもとても悔しいです。 明日は鈴の初七日だね。 また新しくお花が届くそうです。鈴のお友達のママからだよ。よかったね。みんな鈴のことが大好きでいてくれたんだね。 鈴のハウスは中型犬だって広々余裕の大きさなのに、その天井に作った祭壇にお花がのりきれなくなっちゃいそうだよ。 蝋燭もお線香も用意したけど、チーンって鳴らす鈴がない、ってパパがまたママに文句を言っているから、明日買ってくるね。 元気でね、って言うのもなんか変だけど、他に言葉が見つかりません。 病気でいっぱい痛かった鈴には、とにかく元気でいてほしい。どこも痛まないでいてほしい。そのことだけを毎日お祈りするからね。 そして、うちに来てくれて本当にありがとう。家族でいてくれて本当にありがとう。一杯の幸せな笑顔を、本当にありがとう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.06.17 11:06:19
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